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記事2001年10月13日 26号 (2面) 
世界の頂点目指し挑戦
スポーツ医・科学サポートでシンポジウム
スポーツコーチサミット
 「世界の頂点を目指した新たな挑戦」をテーマに、文部科学省は九月十七、十八の両日、東京・北区西が丘の国立スポーツ科学センターで平成十三年度スポーツコーチサミットを開いた。日本体育協会、日本オリンピック委員会などと共催。全国の中高・大学の教員やスポーツ団体の関係者、各都道府県のスポーツ行政担当者ら約五百七十人が参加した。
 初日には「競技者が世界で活躍するために必要となるスポーツ医・科学サポートの在り方」と題するシンポジウムが行われた。講師は岐阜県イベント・スポーツ振興事業団スポーツ科学トレーニングセンターの山崎一彦氏、日本水泳連盟理事の金子正子氏、国立科学スポーツ科学センター研究員の高松潤二氏。
 山崎氏は陸上競技の選手として、バルセロナ、アトランタ、シドニーと、過去三回、オリンピック大会に出場した経験も踏まえて、競技者への医科学サポートの問題点として、選手、コーチ、研究者の三者の連動が見られないことを指摘。一流選手はいわば自然発生的に出没し、その超感覚的な経験や勘を頼りにメダルを獲得しているのが実態で、彼らへの医科学的サポートは行われていないに等しいと述べた。問題点の二点目として、日本独自の現場主義的コーチの選手育成によるコーチと選手との主従関係を挙げ、コーチが教師でもある学校現場では、教師と生徒との主従関係ともなってしまい、学校教育における競技者の一貫教育は困難なのではないかとの考えを示した。問題点の三点目としては、コーチが科学的サポートへの理解に乏しいこと、コーチは科学者がコーチの領域まで入ってしまうのを恐れていることを指摘した。山崎氏は従来の研究のほとんどが既に結果の出たケースを検証するもので、一流選手をサポートするものとはなっていないとし、現場の感覚を生かした測定など、競技者の創造力へのサポートが必要だと述べた。
 金子氏はシンクロナイズドスイミングのコーチとして多くの国際大会、オリンピックのメダリストを育ててきた。長年にわたるコーチとしての経験や判断力をしても選手個々の潜在能力や体内に潜む障害の芽、栄養状熊を的確に判断することは難しいとして、医科学サポートが必要不可欠だと指摘。しかし、現状では科学者と現場のコーチの協調体制に問題があるとして、科学者とコーチとの役割分担の明確化が必要と述べた。
 高松氏は国際的な舞台で活躍する競技者に対して、科学的研究成果を生かすには、(1)競技者・コーチが戦いやすい環境・状況の整備(2)国際ルールの変更に備えたバックデータの蓄積(3)競技パフォーマンスにかかわる状態をモニタリングする機能の充実(4)科学的データの総合解釈とフィードフォワードが必要だと提言。特に四点目に関して、データの総合的解釈の容易化は、コーチ的科学者や科学的コーチの育成につながる、とした。
 また、国立スポーツ科学センターの事業についても紹介した。同センターは日本体育・学校健康センターの一部門で、トップレベル競技者を支援するスポーツ科学・医学・情報の拠点として誕生。(1)トータルスポーツクリニック事業(2)スポーツ医・科学研究事業(3)スポーツ診療事業(4)スポーツ情報サービス事業(5)スポーツアカデミー支援事業(6)トレーニングキャンプ事業(7)サービス事業の七つが主な事業である、とした。

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