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記事2003年10月13日 1908号 (6面) 
新世紀をリードする 吉祥女子中学・高等学校
創立65周年迎え新たな躍進


中高六カ年一貫教育
社会に貢献する自立した女性育成

 学校法人守屋教育学園吉祥女子中学・高等学校(東京都武蔵野市吉祥寺東町四―一二―二〇)は、昭和十三(一九三八)年、淀橋(現新宿)区百人町に帝国第一高等女学校として設立され、戦後は戦災により武蔵野市に移転、吉祥女子中学・高等学校として新たに発足してことしで創立六十五周年を迎えた。
 この間、五カ年計画を立案して教育・施設の充実を目指してきたが、完成した新校舎は、その有終の美を飾るものである。ユニークな校風、豊かなバランスのとれた感性と、自主自立の精神を大切にはぐくむ教育とともに進学校としての実績をつみ重ねている。資質にめぐまれた生徒たちが生き生きと学校生活をおくっている背景には、きわめて協力的な保護者と熱意ある教師の活動が見逃せない。
 本校は中学生七百人、高校生七百三十人が在学し六カ年の一貫教育により「社会に貢献する自立した明るい女性」の育成を目指した教育を展開している。山梨県富士吉田の校外施設では林間学校をはじめゼミナール、八王子総合グラウンドでは合宿等、共同生活による心身の鍛練など活動が行われている。
 高校卒業後の進路は四年制大学への進学がほぼ百パーセントに達している。こうした実態に対応する教育課程は、コース制を基本として選択授業を導入するなど細かな工夫がこらされ、また自由化、多様化、個性化、国際化という教育改革がすすむなかで、教職員、生徒の海外研修や交流を進め、特色ある私学としての在り方を鮮明に打ち出す努力が続けられている。

個性の発見と伸張 英会話、理科実験を重視

 教育の個性化、国際化、情報化がいわれて久しい。同校の教育活動全般にわたって「個性の伸長」の精神が貫かれている。中学校課程は共通のカリキュラムで、ネイティブの教員による英会話授業も全員が共通に学ぶ。理科は実験を重視した授業が組まれている。音楽、美術の授業も、音楽ではバイオリン演奏に取り組ませたり、美術でもレベルの高い創作活動に取り組ませている。他教科でもさまざまに工夫された授業が展開され「個性の発見」が目指される。
 学校行事や放課後の部・クラブ活動も活発で、特に中学校では読書週間、校外学習、百人一首大会、弁論大会、合唱コンクール、朗読鑑賞会など独自の学校行事が多様に展開され、生徒の主体的な取り組みの場が設けられており、このような場をとおしての「個性の発見」が目指される。
 高校課程は一九六九年から芸術コースが設置され長い伝統を持っており、音楽、美術分野で活躍する卒業生も多い。普通コースは現在、進路希望に合わせて、二年次より国立文系、私立文系、理系に分かれるカリキュラムとなっている。こうして授業の上でも「個性の伸長」が目指される。近年、理系希望の生徒が増える傾向にある。中学時からの実験重視の授業が理系への興味・関心を引き出しているものと考えられる。卒業後の進路は百パーセントが進学希望で、難関大学へ挑戦する者が多く、たくましさを感じさせる。
 全校的な学校行事としては一学期末夏休み直前のクラス対抗による球技大会、夏休み明け九月末の吉祥祭(文化祭)、それに続いて同校校外施設である八王子キャンパスの大グラウンドで、中・高合同の運動会がある。いずれも生徒の実行委員会が組織され、生徒の主体的な取り組みがなされる。
 また、高校一年生と中学二年生には同校校外施設である富士寮を利用しての林間学校が設けられており、特に高校一年生は富士五合目から富士山頂を目指す登山が盛り込まれている。富士山頂登山にいどんだ者はこの四十三年間ですでに一万一千人に達している。体力はもとより、精神的なたくましさもこのような体験が支えているともいえよう。
 放課後の部・クラブ活動は中・高一緒に活動しているものが多く、部活動では吹奏楽部、出版部、クラブでは弓道、テニスなどをはじめ実に多彩な部・クラブがある。
 また、生徒の自主的な運営がなされている部・クラブ活動だけではなく、華道、茶道、日本舞踊、着付け、中国語、クラシックバレエなど専門の指導者による課外授業も設置されている。こうして学校行事をはじめ、多彩で活発な部・クラブ活動、専門の指導者による課外授業などを通しても「個性の伸長」を目指している。

学校としての使命 『良き市民の育成』を目指す
学校法人守屋教育学園理事長 清水 八郎氏


 この国の将来像をいま占うことのできる人は、まずいないであろう。敗戦後五十八年、廃墟から始まる新たな復興、再建の道程を経て高度経済成長、その揚げ句に狂乱的なバブル経済に突入する。いまや、その崩壊をみてすでに十数年が経過している。果敢な構造改革をすすめるべく甲論乙駁の論議のなか立て直しを図りつつある最中にある。
 本校は元帝国書院社主・守屋荒美雄先生によって昭和十三年、東京・新宿(旧淀橋区)に創立されたが、時浅くして昭和二十年四月、米機による東京大空襲で全校舎焼失、二十二年吉祥寺に移転、バラック校舎からの再出発を余儀なくされた。校名も帝国第一高等女学校から吉祥女子中学・高等学校と変更、戦後の物資、資金不足のなか、諸先達の献身的努力の結果、基盤が着々と整備され、その後の発展・充実期を迎えることができた。その過程はこの国のたどった軌跡と無関係ではない。
 ところで、教育は百年の大計といわれながらも、経済破綻とともに現今の人心の荒廃は極に達している感がある。対症療法的方策ではどうにもならぬところに来ているといわざるを得ない。敗戦直後にいわば国づくりの基本として指向された“文化国家の建設”の理念はどこへいってしまったのか。物質的欲望のために“人間と文化”を忘れたとき、目的を手段のために犠牲にしてきたと言えるのではないか。あの無謀な戦争をし、塗炭の苦しみを味わった貴重な体験の上に、またもや現在みるような社会状況を招来した責任はどこにあるのか、太平洋戦争にみる無責任とバブル崩壊にみる無責任とは同根のように思えてならない。まさか今更、戦争直後に喧伝された「一億総懺(ざん)悔(げ)」というわけにはいくまい。大切なことは一貫した洞察力、思想性をもって尊い代償を払って得た価値、理念の追求を怠らないことであろう。
 私は「良き市民とは良きポリスの一員である」といったアリストテレスに倣うのではないが、「学校」は果たすべき役割の基本に、市民社会の良き形成者としての自覚を涵養するプログラムを是非、導入すべきであると考える。半世紀あまり前の“文化国家指向”の理念は決して反故紙(ほごし)やお蔵入りになったものとは思わないからである。本校の目指すところは、そこから離れたものではないということをこの際しっかりと自覚したい。

学園の未来を象徴する
最新の設備をそなえた 本館校舎が完成


 創立六十五周年を迎え、新時代に即応する教育の一層の充実発展を期して本館校舎が完成した。新校舎は、旧校舎の三棟を解体した跡地に、既存校舎との連結を考慮した鉄筋コンクリート・一部鉄骨造りで、外壁は茶色系のせっき質タイルが貼られている。正面には校章を配したシンボルタワーが聳(そび)え、中庭には噴水、プロムナード、屋上には庭園が配置された。その規模は地上四階建て、延べ床面積九、三〇七平方メートル、高さ一六・八メートル、その意匠は欧風の建物を想起させる。既存校舎とよく融和し、女子校にふさわしいユニークなキャンパスを生み出している。
 各教室にはビデオ装置、モニターテレビ等を設置し、廊下をはさんでロッカー室、その他小ホール(映画、講演、音楽会等多機能)、図書館と隣接したコンピュータールーム、構内LAN、全室空調完備等、生徒の教育環境に最大限の配慮がなされている。
 生徒たちは、「デザインが素晴らしいし、明るい教室や多目的室は自主的に勉強が出来る。広い玄関ホールや廊下はいろいろの交流がしやすく、緑の中のベンチで食事ができるのも楽しい」と、活気が校内に満ちあふれている。

情報化社会へ対応 問題意識、判断力を育成

 情報化社会の進展とともに、的確な情報獲得方法の取得や正確な情報を見究める判断力などが重要となってきた。
 同校でも新本館校舎建築を機に図書館、パソコンルームの拡充がはかられた。情報化社会への対応として最も重要であるのはハードを使いこなすことではなく、現実の自然・社会に対する疑問や問題意識の育成、情報に対する判断力であるとの見地から、特に各教科の学習で課題学習、発表学習、討論などが積極的に取り入れられている。

65周年を機にブレザータイプの新制服

 制服は約半世紀の間変わらなかったが、この創立六十五周年を機に改定される。新制服はブレザータイプで、高校生はストライプネクタイ、中学生はストライプリボンをつける。オプションで淡いブルーのブラウス、チェック地のスカート、ズボンなどを組み合わせて着用することができる。
 また校章は「なでしこの花」を型どったもので、清く、美しく、強く、正しく伸び育つことを願っている。

米国、中国など各国と交流 国際化教育を重視

 同校は一九七六年にアメリカ、ボストン郊外にあるウォールナットヒルスクールと姉妹校関係を結んで以来、オーストラリアのニューイングランドガールズスクール、カナダのクウィーンマーガレットスクール、中国の北京師範大学付属実験中学、韓国のソウル藝術高等学校と姉妹校・友好校関係にある。
 アメリカ、オーストラリア、カナダの姉妹校へは毎年数人、一年留学をする生徒がいる。中国の姉妹校へは春休みを利用しての中国研修ツアーの一環として姉妹校訪問を行っている。
 また、カナダの姉妹校へは中学三年生が毎年十月末姉妹校訪問をし、交流をはかっている。このカナダ語学体験ツアーでは、一年生からの英会話授業の総まとめとして三泊四日のホームステイ体験を組み入れている。英語科の教員であるかいなかにかかわらず、引率する担任も、それぞれホームステイをして生徒と同じ体験をすることが伝統となっており、ここにも同校の国際化教育の底の厚さが表われている。


WHAT IS ABUNDANT HERE IS THE TRUTH
HAPPINESS CAN BE YOURS
IF YOU CHERISH THE TRUTH
AND MAKE USE OF IT FOR ALL
溢れいずるものこそが真実である。それを大切にし、
人のために生かせばあなたは幸せとなろう

 上に掲げた英文は、本校のモットーの一つ「立派な社会人になりましょう」を説明したものである。なお各建物にはモットーや教育目標がラテン語で壁面に刻まれている。
SEVERVS TIBI ALIIS FACILIS ESTO・MMIII 「人に優しく自分に厳しく・2003」
OFFICIVM PRAESTA・MCMXXX[ 「責任を果たせ・1938」
VERITAS 「真理」(本館)
INGENIUM VESTRUM EXCOLITE 「個性を十分に伸ばしましょう」(7号館)
TE TE IPSAM EXERCE 「すすんで、自らを鍛えよ」(富士寮 祥林館)
FLAGRA COR IUVENIS 「燃えよ若者の命」(富士寮 祥友会館)


最近三カ年の進学実績
東京大三人 京都大三人 東京外語大八人 一橋大六人 東京工業大三人 東京芸術大三人 慶應義塾大七四人 早稲田大一二四人 上智大五一人 国際基督教大一六人 中央大八五人 法政大六五人 明治大一〇四人 立教大一一五人 東京理科大五九人 北里大三〇人 東京薬科大一九人 明治薬科大一七人 東京慈恵会医科大五人 武蔵野美術大六七人 多摩美術大二五人 東京造形大二八人 桐朋学園大五人 東京音楽大一三人 国立音楽大一三人

新校舎のシンボルタワー


屋上庭園で昼の憩い


中学1年の技術家庭で木材加工


玄関ロビーから中庭を望む

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