こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2003年10月13日号二ュース >> VIEW

記事2003年10月13日 1908号 (2面) 
中央教育審議会の審議動向 教育機会と家計負担でも検討
薬学教育と教員組織の検討委設置
  中央教育審議会は、ワーキンググループ等を次々新設、集中的討議で小回りのきいた改革論議を展開している。大学分科会では教員組織のあり方、薬学教育で新たな検討委の設置が了承され、初等中等教育分科会では栄養教諭のワーキンググループが始動している。


【大学分科会】

 中央教育審議会の大学分科会(分科会長=佐々木毅・東京大学学長)は十月二日、東京・霞が関の文部科学省分館で第二十六回部会を開いた。これまでに続き高等教育のグランドデザインについて検討したほか、薬学教育についてのワーキンググループと、大学教員組織についての検討委員会の設置を決めた。
 会議では(1)高等教育の全体規模に関する考え方(2)人材需給と地域配置に関する考え方(3)高等教育機会と家計負担との関係、の三点に絞って議論を進めた。このうち(2)については、設置審査の抑制方針の撤廃を受けた高等教育の地域配置についての配慮などを話し合った。
 委員からは「地方の中小規模の私立大学にとっては大きな問題だ。このままでは定員割れがさらにひどくなる。これまで地方分散政策をとっておいて、私学が共倒れになるのを放っておくのか。
地方の私学がこれ以上、混乱しない政策をお願いしたい」との意見があった。
 ほかに「学問分野の拠点を地方に分散させるのは国立の重要な役割で、私学や地域も活性化する」「雇用の機会が多いため、都心に進学して就職する流れがある。産学共同で、地方に働く場所を確保することが大切」などの発言があった。
 (3)の教育費の家計負担が高等教育の機会確保へ与える影響については、「奨学金制度を確立すべきだ。家計における教育費の増大は少子化の要因ともなる」「希望者が倍増し、既存の奨学金では補いきれない。国が学生に貸与する施策を考えてほしい」などと、奨学金の拡充を求める意見があった。一方、「高等教育の機会の確保と奨学金は連動しない。裕福な家庭ほど国立に進学するという調査結果もあり、むしろ私学助成とかかわる問題だ」とする意見があった。
 佐々木分科会長は「大学院の奨学金はどうするのか、何に焦点を合わせるか、家計負担の問題はきめ細かく議論する必要がある」とした。
 このほか席上「薬学教育の改善・充実に関するワーキンググループ」と「大学教員組織の在り方に関する検討委員会」の設置を了承した。委員の構成については、佐々木分科会長に一任する。
 薬学のワーキンググループは「薬学教育の改善・充実に関する調査研究協力者会議」の委員と、大学分科会委員でつくる。▽大学での薬学教育の修業年限延長▽薬学教育の修業年限延長に伴う大学院教育のあり方――などを検討する。
 教員組織については、学部と大学院共通であり各部会とは別の審議が適切なため、検討委員会を設置する。▽大学の自主性・自律性の確保の観点からの教員組織▽助教授、助手などの若手研究者が独立して研究を行うこともできる観点からの職――のあり方の見直しを主な検討項目とする。


栄養教諭のワーキンググループ始動
11月末にも科目内容決め報告

【教員養成部会】


 中央教育審議会の初等中等教育分科会教員養成部会に設置された「栄養教諭免許制度の在り方に関するワーキンググループ」の第一回会合が、十月六日、東京・虎ノ門の霞山会館で開かれ、栄養教諭免許状の内容及び取得方法、栄養教諭養成カリキュラムの在り方等の検討に着手した。また主査には平出彦仁・中部大学人文学部長、副主査には天笠茂・千葉大学教授が選出された。今後は全国都道府県教育長協議会や日本教職員組合、日本私立大学団体連合会、日本私立短期大学協会、全国学校栄養士協議会などから意見を聴取するなどし、十一月十日には教員養成部会に中間報告、十一月二十八日に最終報告する予定。
 この日は初会合のため栄養教諭創設を提言した九月十日の中間報告「食に関する指導体制の整備について」の概要や、提言の背景となっている子供たちの悪化する食環境、教員免許制度の概要、栄養教諭に最も近いとされる養護教諭制度の概要などが説明された。さらに検討を進めていくうえでの視点、栄養教諭の職務内容(イメージ)、一日の職務(イメージ)なども報告された。
 検討の視点には、(1)栄養教諭の養成の在り方として▽栄養に関する科目の内容と単位数(学校教育に関する内容の担保)▽「教職に関する科目」の内容と単位数▽「栄養教諭又は教職に関する科目」の内容と単位数等が、(2)栄養教諭免許の取得方策としては、▽免許状の種類▽上進制度の内容(在職年数と必要単位数、単位数逓減措置など)、管理栄養士、(2)栄養士免許の教員免許制度上の位置づけが、(3)学校栄養職員に対する措置としては▽教員免許を持たない学校栄養職員に対する措置(配慮)▽既存の教員免許を持つ学校栄養職員に対する措置▽食に関する指導を行った実務経験の取り扱い、などを挙げている。
 この日の討議では、「栄養教諭が一般の教員と比べても見劣りしないようにしてほしい」「栄養教諭を創設しないと生活習慣病は解決できない」などの意見のほか、「今でも忙しいのにまた教育を行わせるのか。病院栄養士の同じような時には給食の合理化を徹底してやった。給食の委託化がかなりしんどい話として出てくる」「(厳しいスケジュールの中で)食の管理をうまく解決できないと、指導もできない」「資格を創設する場合、固有の専門性がしっかりしていないとだめで、管理栄養士と教員の両方のつまみ食いではいけない」などの意見が聞かれた。
 こうした意見に文部科学省からは「ずっと以前から財務省に合理化を言われているが、栄養士については高度な業務で(合理化は)難しい。一方、調理員については可能性がある。合理化の限界の整理が必要だと考えている」とした。
記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞