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記事2003年11月3日 1913号 (11面) 
新時代の私学教育 埼玉私学教育研究大会
“国民教育は私学で”
村井実氏 「教育の理想」の講演で力説
埼玉私中高協

松ア会長

第八回の埼玉私学教育研究大会がこのほど、「新時代の私学教育」をテーマに大宮市の出雲会館と大宮開成高等学校で開催された。


 大会では村井実・慶應義塾大学名誉教授の講演や分科会が行われた。
 大会開会式冒頭で、松ア洋右・埼玉県私立中学高等学校協会会長(大宮開成高等学校長)は「教師の意識改革、様変わりしつつある保護者の教育観、学校に対する評価、生徒の減少対策、学校財政の問題等が今厳しく問われている。埼玉の私学が健全に存続し、発展していくためには、各学校が抱えている問題を明確にして、すべての教職員が問題意識を共有して取り組んで行く必要がある」とあいさつした。
 生徒募集についても「教職員が自分の学校に高い誇りを持ちながら、心を込めてその内容、特色を訴え、一人ひとりが責任者だという意識を持って事に当たれば必ず良い成果が得られる」と述べた。
 川端幹雄・埼玉私学教育研究所長は生徒募集状況について「埼玉県は本年度、私学全体で定員をほぼ満たし、前年度比はマイナス四人。しかし、個別の学校では二十二校が定員を割り込んでしまった。生徒募集には特効薬はないが、教職員が勉強することが最も大切で、新しい時代を先取りし考え方を整理し改革し共通項を教職員全体で共有し、方向性をまとめることが必要だ。この意識改革とスキルアップを統合した研修の繰り返しと仕事を通じて本当の意味での効き目のある研修が結果として生徒募集に表れる。生徒がまず感動し、親が分かり、その親が後輩を呼ぶ。こういう生徒募集のサイクルをつくり上げなければならない。平成十七年から埼玉県では公立の推薦入試はなくなる。これは私学も同じことで、私学は倍の努力をしなくてはならない」と強調した。
 開会式の後、記念講演が行われ、午後からは、出雲会館と大宮開成高等学校で分科会が開催された。
 記念講演は、村井実・慶應義塾大学名誉教授が「教育の理想を語る」と題し、進められたがその中で、教育本来のあり方にメスを入れ、国民の教育は私学で運営することが理想だと強調した。
 村井教授によれば「配給制教育というのは政府・文部科学省のもので、公立学校は国家の学校である。日本は民主主義であるから、教育はすべて国民一人ひとりのものだと考えられる。ですから全国の公立学校にかかっているお金も根本的に国民にみんな返すべきである。全部が国民の財産になる。それで私学をつくり、小・中・高・大学すべてを国民が私学として運営するということにしたらどうか。これが理想である。現実はまるで違う。我々の理想からほど遠い現在の教育は明治の初めに始まった」と述べ改善をうながした。
 また、「本当に民主主義の社会なら基本的に人間主義の社会になる。人間が大事にされる社会、それが理想で、学校中心に上から配給されるような社会だったら、結局は功利主義に、競争社会にならざるを得ない」とした。
 さらに当時の教育を回顧して、「外国人がうらやむほどの教育が明治維新前の日本にはあった。国民の一人ひとりが、金儲けではなくて、養生だとか、修養だとかを中心にしながら生きていた。それを取り返せばいい。明治維新の開国は、他の国と貿易をするようになっただけのことで、日本人の精神、ものの考え方を開く開国はできなかった。それを改めて、第二の開国を今やらなくてはならない。私の理想は全部を私学にすることである。そういう理想を是非考えて、これからの教師としての生き方を決めていただきたいと思う」と理想の教育像を語った。
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