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記事2003年11月3日 1913号 (2面) 
中央教育審議会の審議動向 高等教育の質的保証検討
企業と連携した取り組み
就職活動時期などの弊害も指摘
【大学分科会】
 中央教育審議会の大学分科会(分科会長=佐々木毅・東京大学長)は十月十五日、東京・霞が関の文部科学省別館で第二十七回の部会を開いた。これまでに続いて高等教育の将来構想(グランドデザイン)を議題に、論点整理の中から「高等教育の質的保証・向上」を取り上げて検討した。
 高等教育の質的保証・向上については▽企業からの卒業生の質についての指摘▽企業と連携した取り組み▽設置認可や多元的な評価システムの効果的な運用、などを検討の項目とした。具体的には▽基礎学力の不足や創造性の欠如など、企業からの指摘、発想の柔軟性や行動力への期待▽卒業生を受け入れる企業の側に求める取り組み−−などを検討した。
 委員からは「企業から学生を見ると遅れている知識も多く、海外の大学を卒業した学生の半分の技術しかない」と、実践力を求める意見があった。専門知識以外にも「学生は問題を抽象化し、概念としてとらえる能力が低い」「問題解決型の能力が大切だ」「大学院で専門教育、学部では教養教育を充実させることが大切だ」など教養や創造性なども求められた。インターンシップに参加した企業から意見を聞くことや、卒業生の追跡調査など、企業と連携した取り組みの報告もあった。
 教育の問題として「就職活動の時期が年々、早まっている。落ち着いて勉強する期間を保証しないと改善は難しい」「『入ることは難しく、出るのは簡単』と言われるが、就職の決まった学生を落とす勇気のある大学は少ない」などと、企業の採用の仕方に疑問を投げかける意見もあった。平成十四年の民間機関による調査では、就職セミナーは三年の二月には始まり、四月には最初の内々定が出ている。
 このほか、大学の質の保証システムとしては設置認可や自己点検評価、認証評価、情報公開などを話し合った。設置認可については「質の保証はできない場合もある」、認証評価には「七年間で全大学を評価することは可能なのか。自己点検評価を前提とするが、これから基準を決めて評価員の研修をしなければならず、日程的に難しい」とする意見もあった。
 また、多くの高校生が大学の選択に偏差値を参考としていることについて「大学の評価と偏差値との関係について議論されていない。偏差値の弊害などをどう考えるのか」とする意見もあった。
 ほかに、学校法人制度の改善方策などについての説明もあった。


12月中間報告
新タイプの学校運営 管理運営の在り方でも協議

【教育行財政部会】
 中央教育審議会の教育財政部会は十月二十一日、東京・千代田区の虎ノ門パストラルで第九回会合を開き、学校の管理運営の在り方のうち「地域が参画する新しいタイプの学校運営の在り方」を中心に検討した。
 これに先立ち、学校の管理運営の在り方の見直しの課題として併せて検討している▽学校の設置主体の在り方▽外部資源の活用の在り方▽公立学校の民間委託▽についても政府の方針で結論の期限が切られていることから、これら四項目については、今年十二月を目途に審議内容の中間的な取りまとめを行い、来年三月末までに答申をまとめることを確認した。
 この日の審議は、事務局(文部科学省)が提示した「学校の管理運営の在り方についての検討の基本的な視点について(これまでの審議における主な論点の整理)」と「地域が参画する新しいタイプの学校運営の在り方について(検討メモ)」に沿って進められた。
 そのうち「論点整理」は、検討の背景、学校教育の役割、検討の基本的方向をごく簡単にまとめたものだが、基本的方向については、「現行制度下で可能な事項と新たに制度化が必要な事項とを明確化した上で、現行でも実施可能な事項については積極的な活用を促進するための方策を講じる必要があること、地域が参画する新しいタイプの学校運営の在り方や、公立学校の管理運営の民間への委託など新たな制度化が必要な事項については、具体的に検討を進める必要がある」等と記載されていたため、委員からは「踏み込みすぎではないか」といった意見が出されたほか、財政面を含めた条件整備の必要性が委員から指摘された。
 一方、「検討メモ」は、▽新たな制度の導入の意義・目的▽「コミュニティ・スクール」導入に当たって検討すべき事項▽「コミュニティ・スクール」における教育の中立性、公正性の確保から留意すべき事項▽「運営協議会」にはどのような権限が必要か▽「コミュニティ・スクール」効果的な運営のために、当該校長にはどのような権限が必要か▽「コミュニティ・スクール」の設置者と教職員の任命権者との関係をどう考えるか、といった内容。委員からは文部科学省によるモデル校での実験的取り組みがすでに一定成果をあげていることもあり、運用改善の積み上げで制度を変えていくべきだとする意見が多く聞かれた。ただし人事は県単位で行われているため、校長に人事の裁量を移譲することは難しいとの意見が多く聞かれた。その中でどう校長の意向を尊重するのか、また権限移譲には責任が伴うため、評価をどうするか、一歩踏み出した形にすることの検討も課題として指摘された。


経産省等から生涯学習関連施策の報告
女性のキャリア支援で討議も


【生涯学習分科会】
 中央教育審議会の生涯学習分科会(分科会長=山本恒夫・大学評価・学位授与機構研究部教授)は十月十四日、東京・霞が関の文部科学省分館で第二十三回の部会を開いた。経済産業省や厚生労働省による生涯学習関連施策の説明や、女性のキャリア支援についての報告があり、質疑応答を行った。このうち、経済産業省は「若者自立・挑戦プラン」について、実務・教育連結型人材育成システム(日本版デュアルシステム)などを導入し、若年層の離職率の低下を図るとした。委員からは「各省庁の管轄を超えて、地域の図書館や学校、公民館なども若者のキャリア教育に活用してほしい」という提案や、「バブルがはじけて、子どもたちは価値体系が見えなくなっている。日本をどのような国にするのかが問われている」などの意見があった。「女性の多様なキャリアを支援するための懇談会」については第二次報告「多様なキャリアが社会を変える女性のキャリアと生涯学習の関わりから」が説明された。委員からは、家庭生活や地域活動、学習など経済的価値と結びつきにくい女性の活動を「見えない価値」としてキャリアととらえた点を評価する意見などがあった。
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