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記事2003年2月23日 1881号 (3面) 
2003年首都圏私立中学入試
受験率は毎年上昇 四都県全部で2ケタ台に乗る
私学教育の優秀さがしっかり浸透した年
  二〇〇三年は首都圏私立中学入試で私学の優秀さが母親にしっかりと認識され浸透した年だった。
 今春、東京、神奈川、千葉、埼玉の首都圏一都三県の私立・国立中学募集定員三万九〇九七人に対して、受験した者の実数(日能研推定)は四万二〇〇〇人、これは今春の小学校卒業生数二八万八〇四七人に対して一四・六%となり、前年の一三・九%からまた上昇した。このところ毎年上がり続けている。地域別では東京、神奈川の受験率は以前から高かったが、これまで比較的低かった千葉、埼玉が上昇してきて、千葉も初めて一〇%台に達し、ついに四都県全部で受験率が二ケタに乗った。
 地域別に見ると、埼玉では教育内容や大学合格実績のいい有力中高一貫校として浦和明の星女子の出現が影響している。一月十四日の一次試験は女子一〇〇人の定員に対して応募一四四七人(一四・七倍)と驚くべき数字である。
 全国トップレベルの実力に加えて、学校の場所が千葉県の新松戸や西船橋と結ぶ武蔵野線の東浦和駅から徒歩で行ける立地条件が目をつけられた。さらに東京、神奈川勢の腕試し組も参入してこの高倍率となった。

千葉・埼玉も本番の意気込み 難関校の倍率大幅伸び

 渋谷教育学園幕張は伝統的に公立高校信仰が強いとされてきた千葉県で二〇〇二年の東大合格者が県立千葉を抜いて名実ともに千葉県のトップ校に登りつめたことが私学の評価向上に影響した。東京・神奈川では女子で大きな動きがあった。東洋英和(東京)、日本女子大(神奈川)、東京女学館(東京)が〇三年から二次試験を新設したため、女子に受験チャンスが増えて応募者数が上昇した。
 早稲田実業は〇二年から共学化して国分寺へ移転したため、三多摩への移転は人気マイナス要因と懸念されていたが、逆に多摩地方での人気上昇を呼んだ。自主性の強いスクールカラーの早稲田大学にはこれまで女子の附属がなかったが、共学化によってそういう校風を好む女子にも道が開けたことが人気の一つとなっているようだ。
 今春入試の特徴の一つに昨年から午後入試が増えたため、午前中に他校を受けて午後は別の学校へ回るものが多くなっている。入試の回数は経済不況が続く中で増えている。そして二月四日以降の入試では直前の出願をオーケーとするところが多いため、保護者がインターネットで各校の倍率を見ながら三日に願書を出す傾向が強まった。四日以後の後期入試の倍率が伸びないのはこの様子見のためとみられる。
 入試科目数は難関校が四科目、中堅上位校が二科目と四科目の選択制、入りやすい学校が二科目制という傾向は定着してきた。二―四科目選択制入試校はまず最初に国語・算数の二科目だけの成績で定員の七〜八割程度をとり、残り二〜三割を四科目受験者の中から判定するのが通例となっている。これは四科目学習に力を入れたものがほしいけれども、二科目学習者のうちの力のあるものもほしいのでとられた制度であり、四科目学んだ者に有利な制度といえる。
 首都圏の中学入試は三つのブロックができている。一月中には千葉・埼玉が先行して入試を行い、二月一日から東京・神奈川で始まり、四日以後はだいたい後期入試となる。東京・神奈川の受験生はいきなり二月一日の本番入試に望むのが不安なので、昔は一月の千葉・埼玉入試を小手調べに受験した。入学をめざすより試験に慣れるためという意味がおおきかった。しかし、渋谷幕張のようなトップ校の出現によって、今では「いいところに合格したら入ろう」と千葉・埼玉も単なる小手調べ受験ではなくなった。

学校説明会が奏効 公立中学への不安が如実に

 難関校はやはり人気が高く、応募倍率の伸び方が大きい。男子校御三家の前年から今春への応募者数変動は、麻布八四九↓九一七、開成九一七↓九二五、武蔵四一四↓四七〇、女子校御三家は桜蔭五〇九↓五五三、女子学院六四三↓六九五、雙葉三七二↓三九二だった。だが、その一方で学校の銘柄ブランドにしばられない風潮も出ている。これは私学全体が学校説明会で自校の教育内容を分かりやすく説明することに力を入れるようになったことから起こった現象である。いわゆる御三家も説明会に力を入れはじめたが、それを聞けばやはり教育内容の良さに引かれる。しかし、自分の子どもに合った学校かどうかという物差しで見るから必ずしもブランドに引かれない人もいる。保護者の学校選択眼も鍛えられてきたわけである。藤嶺学園藤沢は中高一貫校としては出発して日も浅く、大学合格実績もまだ出していないのに、二四六↓二九六と増加したのは、学校説明会での訴えが親の心をとらえたようだ。
 日能研進学情報センターの井上修副所長はこれについて次のように話している。「〇二年は新学習指導要領によって母親が公立中学への不安をかき立てられた年でしたが、〇三年には多くの母親が中学校の教育内容をさらによく知ろうと私学の説明会に耳を傾けたところ、教育内容でも公立中学などとは比べ物にならないほど私学が立派なことが分かったためです。昔なら単純に大学合格実績がいい学校に進学するという風潮が強かったのですが、今では大学合格実績プラス人間形成教育の内容が充実しているかどうか、高等教育へ進み、さらに社会に出てからも活躍できる人間的な力をつけることができるか、そういう教育環境があるかどうかに目を向けるようになった結果といえます」。国立中学の動向は国立大学の独立行政法人化後に附属中学の運命がどうなるか測りかねるため、二極化している。筑波大学附属や筑波大学附属駒場は残ることが分かっているため応募率が上昇、東京学芸大学附属などは今後どうなるか分からないため低迷した。入学時手続金は昔は、合格発表後すぐ納入という方法をとる学校が多かったが、今春は一月入試の学校でも二月六日まで納入を待つところが多くなった。一月中に合格発表する学校は東京・神奈川を本命とする受験生に保険の意味で受験してもらうためにも、入学時手続金の納入を待つという考え方が広まった。中には納めたあとでも、他校の合格が決まったら返還するという目黒学院のような学校も出てきた。
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