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記事2003年2月23日 1881号 (1面) 
株式会社の教育参入問題で協会長会議開催
相次いで混乱懸念する意見“現状の不公平な競争こそ問題”も
中高連
  日本私立中学高等学校連合会(堀越克明会長=堀越高校長)は、二月十七日、各都道府県の私立中学高校協会等の代表者らを集め「協会長会議」を、翌十八日には「常任理事会」を、いずれも東京・市ケ谷の私学会館で開き、構造改革の一環として政府で検討が進められている「株式会社による学校の設置・運営」問題を討議した。
 この問題は、大学や高校といった、いわゆる一条校(学校教育法第一条に規定された学校)を設置できるのは国、地方自治体のほか公益性が高く継続性が担保される仕組みとなっている学校法人(=私立学校)に限るとしている同第二条の規定に関し、経済活性化のために新設する構造改革特区では株式会社にも学校の設置・運営を認めようというもの。
 株式会社は利益を第一と考えるため、利益が生じた場合、教育研究に十分再投資せず、株主配当を優先させるのではないか、収益が上がらなくなった場合、学校事業から撤退するのではないかなどの懸念から教育関係者の多くが、また所管庁である文部科学省も反対の意向を表明していた。
 二月十七日に開かれた同連合会の協会長会議では、「企業との結び付きが深い専門職大学院は株式会社(立)で良い面もあるが、高校等に関して株式会社ではうまくいかない」「改革には反対ではないが、株式会社のなじまない分野にまで(学校設置運営の自由を)広げるのはどうか」「株式会社等が設置するサポート校(通信制高校に通う生徒の学習を支援する施設)の一部ではすでに問題が生じているなどの現実を突きつけていくべきで、歯止めは必要だ」などの意見が相次いだ。
 この問題について反対の姿勢を続けていた文部科学省は二月初めに小泉首相の強い意向などもあり、特区において特別なニーズがある場合には株式会社を設置主体とする特例措置を講じるとの方針を表明している。二月末には正式決定となるが、特区で認める学校設置をどの校種にまで広げるのか、利潤が上がらないとして学校経営からの撤退なども予想されるため、そうした事態が起こらないようどういったセーフティーネットを構築するのか、国と地方、設置主体がどう責任を分担するのかなど、なお解決すべき課題は少なくない。また株式会社立の学校に対する私学助成創設なども課題になっており、同省では私学助成については引き続き「対象外となる」と回答し、認めていない。しかし協会長会議では、同省がどこまで構造改革を求める圧力に抗し切れるのか、今後の対応を不安視する声も聞かれた。協会長会議ではこのほか、「反対するのはいいが、私学の声を世間は理解してくれるのか。今度の機会を(公私立学校間で)フェアな競争になっていないことをあぶりだす機会にしてはどうか」「同じ条件でないのなら競争原理を働かすべきではない」といった意見も聞かれた。

多くの課題残し“見切り発車”に

 一方、常任理事会では「特区では大学から幼稚園までを分けて考えてほしい」「既設の学校を(規制で)縛る一方で、株式会社立の学校には自由を与えては自由競争にならない」「株式会社立の学校が入学者選抜の解禁日などを無視したら大混乱になる」との声もあった。
 政府による構造改革は、反論する時間を与えないようにしているのか、これまでには考えられないスピードで審議や改革が進展しており、多くの課題を残したまま“見切り発車”するケースが目立っている。
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