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記事2003年7月3日 1895号 (4面) 
私学教育花開かせた 私立学校振興助成法
【私立高校等への経常費補助】

念願の1千億円ようやく到達
国庫補助廃止の方針浮上
特色教育等に大きな成果
なお残る公費の公私格差

 昭和五十年に議員立法で制定された「私立学校振興助成法」が今年の七月三日で満二十八年を迎えた。人間でいったら立派な成人だ。この約三十年間に私学助成は前年度に比べて二五%も削減されるなどたびたび厳しい局面に立たされた。
 それでも私学関係者や私学教育は我が国の教育にとって欠くことのできない存在と考える人たちの応援などから、浮き沈みはあったものの、増額傾向をたどり、平成十五年度政府予算では私学関係者の長年の念願だった一千億円台(一千一億五千万円)を実現した。もちろん過去最高額だ。
 紆余曲折があったものの、政府や国会関係者の、私学振興は我が国の発展にとって重要との姿勢が支えとなって、この三十年間に私立学校に多様な特色ある教育を花開かせる結果をもたらした。教育を評価する際、大学進学実績が引き合いに出されることが多いが、私学の魅力はそれだけではない。スポーツ、文化活動、奉仕活動、国際交流、人間教育など様々な分野で私立学校の生徒らの活躍が目立ち、私学出身者が世界の舞台で活躍を続けている。建学の精神に裏打ちされた学園全体を貫く教育方針が生徒たちの実力を本当のものに育てているのだ。
 しかしそうした状況でも私学関係者は晴れ晴れした表情ではない。それは長引く不況で公私間の授業料の格差、それはとりもなおさず公費支出額の格差なのだが、それが教育費の面で私学進学を諦めさせ、受験生から学校選択の自由を奪う状況となっている。
 初年度の学納金は、高校の場合、公私間で約六倍もの違いとなっている。またやっとの思いで私立学校に入学しても倒産やリストラによって、やむなく私学を退学あるいは、授業料を滞納せざるを得ない生徒が増えている。さらに最近では国庫補助負担金を廃止縮減して地方に税源を移譲するといった小泉内閣のいわゆる「三位一体の改革」が私学教育の先行きをより不透明なものにしている。
 各都道府県が支出している私学助成の中核的財源措置となる国庫補助金がなくなってしまえば、使途に制約のない地方交付税措置だけとなり、かつて私立学校振興助成法が制定される以前のように都道府県間で私学助成額に大きな格差が生じることは明らかだ。私学関係者はこうした方針にもちろん反対の姿勢だ。同じように一般財源化を検討することになっている義務教育費国庫負担金に関しては文部科学大臣の諮問機関である中央教育審議会で検討が進められているが、国の私立高校等に対する財政支出のあり方も、公教育に占める私学の位置づけとともに、改めてじっくり議論すべき時期といえる。

【私立大学等への経常費補助】 

3218億円で過去最高額
補助率は法制定以前水準
国公私通じた競争原理へ
共通の土俵づくり課題に


 一方、大学等に関しては、高校等が昭和四十五年度から地方交付税措置によって各都道府県の私学助成に対する財政措置が設けられていたのと時を同じくして、昭和四十五年度から補助措置が始まっている。初年度の額は百三十二億円だった。その後昭和五十年に私立学校振興助成法が制定され、同年度には補助額が一千七億円と初めて一千億円台に到達、その後は高校等と同じように何度か減額措置を受けたが、最近では補助額の増額傾向が続いている。平成十五年度の政府予算では私立大学等経常費補助金は三千二百十七億五千万円に達した。これは過去最高額だが、私立大学等の経常的経費に占める補助金の割合をみると私立学校振興助成法が目標としている二分の一補助には遠く及ばず、現在の補助率は一〇%程度といった状況だ。かつては補助率が三〇%近い時期もあったが、いまは私立学校振興助成法が制定される以前の補助率を低迷している。これは国の高等教育に対する財政措置が大きく国立大学にシフトしているからで、私立大学は我が国の大学全体の約八割を占めているにもかかわらず、その経常費補助金の総額は、東京大学一校の予算措置と同じと言われている。そうした財政措置を受けていた国立大学も採算性を取り入れた国立大学法人に移行することが決定し、私立大学の運営形態に近づきつつある。更に一歩進めて国立大学の学校法人化を提唱する意見もあり、両者間の垣根が低くなればなるほど、財政措置の見直しを求める声も高まっている。私立大学関係者からは両者間の競争条件を同じにしてほしいとの要望が強く出されている。この「イコールフッティング」という考え方は、政府の審議会等でも意見として出されており、財務省の財政制度等審議会も「高等教育に対する公的支援については、国立大学に対する財政措置や私学助成等の既存の支援策を見直し、国公私を通じた競争原理に基づく支援にシフトさせる必要がある」とし、また国立大学の法人化に当たっては、「学生納付金については、学部別授業料を含め各大学の自主的な判断に基づく設定を可能とすべきであり、運営費交付金の算定の基礎となる学生納付金の水準に関しては、受益者負担の徹底、自己収入確保の努力を踏まえて設定する必要がある」とし、国私立大学間の垣根を下げる方向を提言している。今後こうした傾向は続くものと見られる。
 大学の場合、学納金に関しては国立大学も適宜引き上げを行い、受益者負担の方針を維持してきたことで、国私立大学間の授業料の格差は高校のようには大きくなく、二倍弱といった状況。
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