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記事2003年7月3日 1895号 (1面) 
高校生の留学 量的に拡充
中央教育審議会留学生部会 新留学生政策を討議
大学含めて数値目標策定示唆
  中央教育審議会の留学生部会(部会長=木村孟・大学評価・学位授与機構長)は六月三十日、東京・三田共用会議所で第九回部会を開き、「高校生留学の推進」「新たな留学生政策のあり方」について自由討議した。

 高校生留学の現状について文部科学省は、安全で有意義な留学の推進のため「全国高校生留学・交流団体連絡協議会」の活動を支援、「高校生交換留学プログラム要覧」の作成・配布等を行っていること、留学情報の提供充実のため、日本国際教育協会留学情報センターによる留学相談を行っていることなどを説明。今年度高校生留学関係予算に新規に高校生派遣事業補助として五千万円が盛り込まれたことなどを報告。あわせて、大学生レベルの留学に比べ高校生留学の規模は受け入れ・派遣ともに小さく、今後も交流人数の拡充を図る必要があるとし、そのためには、(1)教員・保護者・生徒等の理解の向上(2)受け入れ体制の整備(3)ホームステイ先の確保(4)サポート体制の充実(5)地域社会との協力・交流の推進、などが今後の課題であるとした。
 これについて委員からは様々な意見が出され、教員の理解については「生徒が希望しても校長に最終判断が求められており、そこでダメというケースがある」との意見に対し、「仲介業者が増え、なかには劣悪なものもあるため、よく判断してからでないと推薦できないのが現状」との意見があった。サポート体制については、生徒に留学の意味をきちんと理解してもらうため、オリエンテーションが重要との意見があった。また、ホームステイ先の確保については、「信頼できる学校との関係をどうやって安定的に築けるかが問題」との指摘があった。
 「新たな留学生政策のあり方」については、十万人計画が達成された現在、今後の留学生交流の目標について(1)留学生数を政策目標として設定するか(2)留学生数について、政策立案の前提の想定値として設定するか、などが課題であるとの文科省に対し、「数を増やすというのも重要だが、質の高い留学生を育てるのも必要」「十万人計画が達成されても何が変わったのか分析できていない」「留学生が増えるのはいいが、受け入れ体制には大学自体の質の向上も必要で、学校職員の研修が不可欠となるため政策的支援も必要」「大学への第三者評価が来年度から始まることで、留学生受け入れが急激に抑止される可能性がある」などの意見があった。これに対し文科省は、「人材問題は、量的な目標等がなければ見えてこない部分もある。数の設定がなければ実行に移せない」との考えを示した。
 このほか参考資料として、日本私立大学団体連合会の「新たな留学生政策の確立に向けて」とする意見書が示され、このなかで、国家戦略としての新たな留学生政策の視点として、「資源の乏しいわが国においては、人材育成が非常に重要であり、留学を通して多くの知日派の人材を育成することが戦略的にも求められている」とし、また、「留学生が出身国のマンパワーになるとの側面に十分留意しつつも、留学生に国内で就職する機会を拡大することが必要」としている。
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