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記事2004年10月3日 1951号 (7面) 
トップインタビュー 「教育はこれでよいのか」  初の問題解決型WIN
特定非営利活動法人ウェアラブル環境情報ネット推進機構理事長 板生 清 氏
大学や企業からの多様な人材で
諸問題解決に産学社学連携を推進


 板生清理事長が特定非営利活動法人ウェアラブル環境情報ネット推進機構(WIN=Wearable Environmental Information Network)を立ち上げたのは、平成十二年八月、東京大学工学部教授のときだった。
 「社会のニーズに対応した、ニッチ(隙間)の分野を見つけて、IT(情報技術)を駆使して、問題解決型の研究開発をしていこうというのが基本姿勢です」と、板生理事長はWIN設立の目的を語る。
 この日本初の問題解決型NPO法人WINは、二十一世紀が直面する社会の諸問題を解決するために、大学や企業などから多様な人材が集まり、「産学連携」・「社学連携」を推進しようというものだ。
 「いろいろな方々に解決したい問題を持ち寄って訪ねていただき、それに対応してともに考え、技術によってできることを探り、提案を行っていくのです」
 WINの活動はあらゆる分野の専門家による検討・実験を行い、最終的には身につけることができる(ウェアラブル)の超小型の情報端末を使用し、実用的なシステムを開発している。
 「基本的な原理は、人間や動物などが発するいろいろな情報を、微小なセンサーで集めて、これをデジタル信号に変えるのです。この変換は判断を行うための基準を作るためです。センサーで集めた情報をデーターベース化し、これによってさまざまなサービスを実現しようというものです」
 ウェアラブルの技術はさまざまな産業分野で活用されている。
 例えば、物流の分野では輸送用パレット(荷台)の追跡システム。パレットにPHSの端末を付けて、どこに荷物が移動しているのか、その場所をリアルタイムで把握できるようにした。仮にパレットが行方不明になってもこれによって、自動的に場所を知ることができる。また、どのような経路・環境で運搬されているかも知ることができる。このシステムはWINへの参加企業によってすでに事業化されている。
 また、ウェアラブルの技術は医療の分野でも革命をもたらしている。これがバイタルケアネットシステムだ。このシステムは「ウェアラブルを用いて、人に意識させずに生体情報を常時モニタリングし、体調の変化を本人自身または医療機関などにいち早く知らせるシステムだ。
 「体に身につけた指輪型のセンサーが、脈拍、血圧、血液中の酸素濃度などの情報(バイタル)を常に測定し、これを二十四時間無線で医療機関に送信すれば、異常があった場合には、医師や本人に連絡が行き、適切な処置ができるのです」
 そのほか、ITと衣服を一体化したウェアラブルファッションや電子冷暖房服も研究中だ。
 WTNでは、現在では産業の分野だけではなく社会への奉仕を目指す、特に人間の健康・福祉の向上と環境の保全など十六のプロジェクトが活動している。会員は法人八十団体、個人約二百八十人(平成十四年十月)で、団体は国内外の企業、研究所が加入している。
 また、同機構の一機関として「環境プランニング学会」が設立されている。同学会では環境プランナーの養成講座を開講、環境プランナーとは組織の環境会計、環境設計など企業の環境対策を中心に、環境保全を推進していく専門家をいう。
 これらのWTNの活動成果は隔月誌『ネイチャーインタフェイス』に発表されている。
 WINは今後もウェアラブルの技術を社会に還元し、人間を含めたすべての生き物にとって住みやすい環境の実現を目指す。
 板生理事長は現在、東京大学名誉教授で東京理科大学専門職大学院総合科学技術経営研究科長、精密工学会会長、『ネイチャーインタフェイス』総監修を兼ねる。

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