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記事2004年11月13日 1958号 (2面) 
中央教育審議会の審議動向
開放制教員養成に疑問の声
教員養成専門職大学院では大学院部会と連携

【教員養成部会】
 中央教育審議会の初等中等教育分科会教員養成部会(國分正明部会長=財団法人教職員生涯福祉財団理事長)は、十一月八日、都内で第二十五回会合を開き、先月、中山成彬・文部科学大臣から諮問のあった(1)教員養成における専門職大学院制度の活用(2)教員免許制度改革、特に教員免許更新制導入についての審議を開始した。一年後に答申する。専門職大学院に関しては、中教審大学分科会大学院部会との連携を考慮する。同部会では専門のワーキンググループの設置も検討する。
 このうち教員養成の専門職大学院は、高度な専門性と実践的指導力を身につけた教員の養成や現職教員の再教育機関として位置づけられるもの。
 この日の議論では専門職養成を目指して創立された新構想の兵庫教育大、鳴門教育大、上越教育大がある中で、専門職大学院を新たに設置する意味を問う意見も聞かれたが、養成の段階から校長や教頭に求められる学校のマネジメント能力やリーダーシップ養成など新機関への期待を語る委員もみられた。しかし従来の大学院とどう区分けするのか、専門職として何を想定するのかなど課題は少なくない。
 また教育実習の増加が理学部や外国学部といった教科の専門を深く学ぶ学生の教職志向を減少させ、全体として教員の教科に関する専門性の低下を引き起こしている、との指摘も聞かれた。
 教員免許制度・更新制に関しては、「制度改正を急ぎすぎている」「現場の教員は教員改革について『またか』と感じている」など、二年前に中教審が検討し更新制導入を見送る答申をまとめていることから、短期間のうちに再検討することへの疑問、更新制導入よりも研修の充実、日々の教員評価の実施などの必要性を指摘する意見が聞かれた。
 その一方で「教員がキャリアを考え、専門性を深めていく節目づくりとしてあってもいい」など更新制に新たな意味を与える意見、この間の社会の変化や現在の教育課題への対応の遅れなどを指摘する意見もあった。
 また更新制についてはどの時期に導入し、どのような方法で評価するのか、教員の質の向上に関連して、「(大学等で)簡単に教員免許状が取れる。専門職を育てているとは思えない」など現在の開放制教員養成(教員養成学部以外の学部でも免許が取得できる)に疑問を投げかける委員も見られた。このほか現在、評価という面に欠ける研修の抜本的見直しを求める意見も出された。

高等教育の将来像をめぐり
経済同友会などから意見聴取


【大学分科会】
 中央教育審議会の大学分科会は、十月二十二日に第四十一回、十一月四日に第四十二回の会合を開き、「我が国の高等教育の将来像(審議の概要)」について、団体や有識者から意見を聞いた。
 第四十一回の会合では、磯野可一千葉大学長と岩崎洋一筑波大学長が、国立大学協会として「高等教育機関の多様化・機能的分化、それを補完する質保証の必要性が指摘されているが、高水準の教育と研究の育成について明確に述べられていない」など、踏み込んだ議論が不足している個所が複数あると指摘した。意見発表のあとの討議では、単位累積加算制度につき「(他校種で取得した単位も含めて)百二十四単位で学士を与えるなら、大学とはなにかという問題になる。まずは学士を与える課程としての大学を明確にすべき」などの意見があった。
 十一月四日の会合では、日本経済団体連合会・教育問題委員会企画部会長の宇佐美聰会長(三菱電機常任顧問)が「高等教育機関とはどのような存在か」や「社会が求める人材の育成に向けた教育のあり方」を示すべきとの意見を述べたほか、企業へのアンケート結果から、思考力の訓練、実社会とのかかわりを意識させる教育が求められていると話した。
 経済同友会からは、教育の将来ビジョンを考える委員会の浦野光人委員長(ニチレイ社長)が、学校教育による人材育成に「どちらかといえば不満」と「非常に不満」と回答した企業は八五%を超えると示したうえで「洞察力、論理性、創造力などを基礎にした、多様・多彩な人材の輩出を期待する」と述べた。
 元読売新聞社論説委員の永井順國・女子美術大学教授は「教育など社会的規制の領域には、規制として残しておくべきもの、新たな規制の必要なものも厳然として存在する」とし、この十数年の緩和の流れを検証し、新たな政策が必要であれば検討すべきだと指摘した。
 大学設置・学校法人審議会の相澤益男会長(東京工業大学長)は日本の大学教育の四分の三を担う私立大学について「安定的・継続的経営を行うことは、高等教育の発展に大きな役割を果たす」と認め、学校法人の経営安定のため支援体制が必要との考えを示した。

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