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記事2004年2月23日 1925号 (4面) 
私大の教育・研究充実に関する研究会 短期大学の部
研修福祉会主催・事例・意見発表
社会に役立つ人材育成目指した短大教育
個性化への道 ― 子ども学科設置教育課程の改編

ソニー学園湘北短期大学理事長・学長 山田 敏之氏


目白大学短期大学部理事長・学長 佐藤 弘毅氏

 財団法人私学研修福祉会(P在幸安理事長=日本大学総長)は昨年十月二十三、二十四の両日、東京・市ヶ谷の私学会館で「第二十六回私立大学の教育・研究充実に関する研究会」(短期大学の部)(日本私立短期大学協会協力)を開催した。「私立短期大学の挑戦は続く――新しい個性化への挑戦――」を研究課題に、初日は講演や事例・意見発表、二日目は分科会やシンポジウムが行われた。
【ソニー学園湘北短期大学理事長・学長 山田 敏之氏】
学内・外併せインターンシップ実施
就職率上昇、高校志願者も増加


 本学の「特色ある」社会体験教育として、企業における学外インターンシップを平成五年から教科の一つとして取り組んでいます。もう一つ、十四年から学内で模擬的な会社をつくって行う学内インターンシップ、「SHOHO(ショーホー)」を開始しました。私どもはこの学外インターンシップと学内のインターンシップSHOHOを併せて、「湘北インターンシップ」と呼んでおり、これは本年度の「特色ある大学教育支援プログラム」に採択されました。
 五年からスタートした学外インターンシップは、事務系・販売系から始まり、十年から観光サービス系を加え、十一年には技術系(電子回路技術・ソフトウエア開発・研究補助など)を、十二年には三カ月留学先のオーストラリアでもホテルなどで開始しました。学外インターンシップは、企業が本来持っている「教育力」を活用させていただくということです。特に社会性というものは、社会に飛び込んでみないとなかなか身につかない。学生にとっても、インターンシップ先の企業の上司から褒められることは大きな喜びとなり、モチベーションになります。教員が企業と接することは教員にとっての良い刺激にもなりますし、企業ニーズをカリキュラムに反映しています。
 学内インターンシップのSHOHO(SHOhoku Hands―on Office)は、学生がチームをつくり、ある仕事をほかから引き受け、あたかも一つの会社であるかのごとく担当を決め、仕事を遂行するということをシミュレーションするものです。
 具体的には、学内外のお客さまから提示された要求業務に対して、数人から十人程度の有志学生が自発的にチームを作って、企画書をつくり、それを提出し、企画が通って発注を受けると、製作・納品して、対価の支払いを受けて完結し、チームは解散するというものです。これは期間限定のタスクフォース型組織であり、完了後は、報告書を作成し、報告会を行ってから解散するという、自己評価と反省を必ず行います。
 SHOHO活動を支えるシステムとして、「SHOHOコミュニティ」「SHOHO支援チーム」「SHOHO顧問」の三つを置いています。SHOHOコミュニティは学内ウェブを利用した仕組みで、活動に興味を持つ学生が自主的に学内ウェブ上でメンバー登録し、学内ウェブ上の新規テーマを見て気の合った友人同士でチームを結成し、学内ウェブを利用して情報交換を行います。SHOHO支援チームは、教職員による組織で、メンバーの公募、テーマの開拓や紹介、顧客との折衝支援、報告会開催などを行います。SHOHO顧問は、個々のSHOHOチームに置き、学生が困ったときに助ける働きをするもので、顧問は必ずしも支援チームのメンバーとは限りません。
 実例としては、十四年度には「厚木商店会連合会ホームページ制作」などを、十五年度には「校舎・キャンパス模型制作」「学内合同企業面接会ノベルティ製作」を行いました。このうちの「学内合同企業面接会ノベルティ製作」の例を挙げると、まず二月にメンバーを公募。学内プレゼンテーションによって企画書を承認。三月には試作・研究がされてミーティングが持たれ、四月にもう一度試作・研究が行われ、再度学内プレゼンテーションを実施。最終確認後、製作準備し、百五十セットを製作。これは企業の製品化プロセスと同じです。五月十四、十五日に完成品を企業の方に直接手渡し、最後に報告書を作り報告会を行いました。学生の満足度調査では、たいへん満足しているという学生がほとんどです。教育効果の測定では、勉学意欲や受講態度、マナーが顕著に向上し、インターンシップの効果であるかどうかは短絡的には言えませんが、就職希望者に対する内定率が今年の春は九九・一%でした。就職後の離職率も低下しているようです。
 また、ここ二、三年インターンシップがあるからという理由で本学を志望する高校生が目立つようになりました。
 私どもではこれを湘北短期大学の一つの大きな特色として推進して、新しい短期大学教育の一つとして定着させていきたいと思っています。
【目白大学短期大学部理事長・学長 佐藤 弘毅氏】
短大再生の闘い掲げ改革
大・短大貫く一体的、効率的運営を


 きょうは私の失敗、挫折、味わった屈辱感、そして立ち直りへの過程をお話しいたします。
 本学では平成三年に志願者数八千九百人となったのがピークで、九年には三千百六十人余に減少、わずか六年で四割にまで落ち込みました。問題は私どもの三つの学科、英語英文科、国語国文科、生活科学科でした。
 そういう状況の中で、八年、中期計画「西暦二〇〇〇年プロジェクト」を立ち上げました。私としては余力があるうちに改組に向けて早めに対応したいと考えていましたが、まだ教職員には危機感がない。そこでまず八年に将来構想検討委員会をつくり、一年半後には改組準備委員会を立ち上げ、十二年に英語英文科・国語国文科を言語表現学科に改組転換しました。また六年に四年制大学を設置していましたので、十二年、校名を短期大学部に変更しました。
 思い切って改組したつもりでしたが、志願者数は定員を割り込み、惨たんたる状況でした。なぜなのか。一口で言えば、中途半端な改革であったからです。しかも改組当時、学生の喫煙者が急増。学生食堂などは充満したたばこの煙で向こう側が見えないほどの状態でした。それ以上に私どもがうろたえたのは学生の風ぼうです。当時ガングロ、ヤマンバと呼ばれていた、あの子たちの心をどう理解したらいいのか、なすすべもない。さらに、風俗関係のアルバイトに勧誘する怪しげな男たちが通学路に立つようになりました。これは所轄の警察署と連携して、取り締まっていただくようにしましたが、まことに教育機関とは思えない状況が続きました。
 こういうことは良心的な学生への影響は甚大(じんだい)です。難関をくぐり抜け、希望の大学に入学してきた良心的な学生の落胆を思うと申し訳ないという気持ちでいっぱいでした。
 当然、立て直しをしなければならない。「短期大学再生の闘い」を掲げて取り組みを始めました。
 最初に学生指導の立て直しを図りました。まず、禁煙キャンペーンを実施。階段沿いには横断幕を張り、昼休みには放送で禁煙や喫煙マナーを呼びかける一方、たばこの害についてのビデオ上映や専門家のシンポジウムを行うなど、ダイナミックにキャンペーンを展開しました。学生生活改善キャンペーンも行い、髪形や化粧、通学時のマナーなどについて呼びかけました。学生会とも連携し、正門前での学生指導、通学路のたばこの吸殻拾いといった通学路クリーンアップキャンペーンをしました。たまりかねて保護者へ学長書簡を出したこともあります。二泊三日のフレッシュマンセミナー、あいさつ運動も展開しました。
 次に、十二年、校名を「目白学園短期大学」から「目白大学短期大学部」に変更しました。三番目は、学部・短大を貫く一体的運営、効率的な大学運営を実施。四番目は、現在取り組んでいる「続二〇〇〇年経営改革」です。この中の短大の再生では@新しい短大像の創造Aアドミッションポリシーの確立B生活指導進路指導の充実CFD(ファカルティ・デベロップメント)、教職員の指導力の強化――などを掲げています。なかでもアドミッションポリシーの制定が最も重要です。さらに入試の学力試験を廃止し、替わって本学独自のAO入試を導入しました。担任制度の改編、担任と触れ合いながら進めるステップアップセミナーの実施、基礎教育の改編、学長との対話などのキャンパスサミットも行っています。最近では、服装はたいへん落ちついてきましたし、大学のさまざまな行事をボランティアがサポートしています。かつて嫌われものだった学園祭も地元のさまざまな市民団体が参加してくれるようになりました。本学の立ち直りということも効果の出てきたような気がします。学科についてはわずか一年三カ月で言語表現学科を廃止しましたが、現在、基礎教育体系の刷新を図り、ユニークな自己表現科目を新たに設置し、学生主体の参加型授業を行っています。新たに「子ども学科・専攻科」を設置、これは実質三年課程の保育士養成コースとなっています。「生活科学科」もコースを再編しました。大切なことは、短大はなぜ必要なのだろうか、大学とどう違うのか、専門学校とどう違うのか、学生のニーズに対応しているか、新たな時代の役割と機能を果たしているかといったことを自問自答することです。そして新しい短大の多様な可能性を切り開くために、新市民教育、実務教育、編入のための教育など、さまざまな可能性の中から、短大が自ら進路を選ぶこと。一つ一つの短大がユニークで光り輝き、全体として極めて多様性にあふれていることが大切と思います。


研究会に先立ち、あいさつするP在理事長

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