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記事2004年2月23日 1925号 (3面) 
新世紀拓く教育 (16) ―― 昭和女子大学附属昭和中学・高校
五修生が初のドクターに
16年度から教育・制度改革
 五修生とは、昭和女子大学附属昭和中学校・高等学校(人見楷子理事長、渡辺満利子校長、東京・世田谷区)の中高一貫教育により、教科間や学年間の学習内容の重複を避けることによって六年の学習課程を五年間で無理なく修了し、高校三年次に科目等履修生として昭和女子大学で学ぶ生徒のことである。
 五修生制度が始まったのは昭和五十八年から。きっかけは、昭和五十二年に文部省(現文部科学省)から中高一貫教育研究開発学校の指定を受けたことだった。その後、その成果を生かし、共通学習五年プラス自由学習一年というほかにはないカリキュラムを組み、五修生制度を設けて希望する生徒に大学の授業を受講させてきた。近年の高大連携や飛び級などに先駆ける、中高大一貫教育制度である。
 すでに五修生制度は二十一年という長い実績を積み上げており、同校の特色ある教育制度の一つとなっている。
 五修生は一年早く大学で学びはじめるため、大学に実質五年間在籍することになる。このため、卒業までに自分の専門分野を広く深く学ぶことができるだけでなく、希望すれば専門以外の講義も受講する余裕があり、学識を一層深めることができる。またさまざまな資格を取得する学生も多い。こうした学生は、卒業後、就職先からの評価も高いという。
 さらに、五修生が昭和女子大学から同大学院に進学する場合は、大学を四年で卒業し、やはり一年早く大学院に入ることができる。昭和女子大学大学院は、平成元年、文学研究科・生活機構研究科に博士課程が設置された。最近では、五修生が大学院に進むケースも増えているという。
 その一人が、同大学院の博士課程で学んだ五修生としては初めて博士となった黒ア瑠美子さんである。学位論文のタイトルは「MTPTの投与によって作成したパーキンソン病モデルマウスに対するACEインヒビター」。本研究は、加齢に伴う神経疾患の治療に有益な情報を提供するものである。
 ドクター・黒アさんは今年三月、同大学院博士課程を修了する。黒アさんが大学院生となって書いた論文の数は十三にも及ぶ。その論文の一つ一つが膨大な量である。研究し、考察し、論文にまとめる力は中学・高校時代の、一年間にわたって自由研究を行う「私の研究」やグループ研究「昭和祭研究」で培われたものだ。
 渡辺校長は「こうした総合的な学習の時間が生徒の創造性を養い、また、努力精進することを評価する同校の全人教育が支えになっている」と言う。
 平成十五年度も六十人ほどの生徒が五修生としてすでに昭和女子大学で学んでいる。彼女たちもこの四月から正式な大学生となる。
 その平成十六年四月、昭和女子大学附属昭和中学校・高等学校は、次代を見据えた改革に取り組む。社会が大きく変化し、国や文化を越えた交流が盛んとなり、女性が活躍する場も広がっている。これからの時代を生き抜く人材を育てるために、建学の精神「世の光となろう」のもと、「確かな学力」「健やかな心身」「豊かな心」をはぐくむことを改革のねらいとして、四月からは主に次の四点について変更する。
 一つは授業時間を従来の四十五分から五十分とすることである。これは授業内容をさらに充実させるだけでなく、最後の五分間で授業をしっかりとまとめ、学んだことが身につくよう、授業方法も工夫する。また月・水・木・金曜日は六時限とし、火曜日は新たに七時限目を設置する。
 二つめは学校週六日制へ移行すること。
 従来、隔週水曜日は「自宅学習日」としてきたが、生徒たちの環境の変化に配慮しながら確かな基礎学力を築くために、授業時数を増やすこととし、学校週六日制(授業五日プラス土曜行事・補充授業・特別授業・水泳教室等)をとり、水曜日も通常の授業を行う。また土曜日は全員必修ではなく、将来の進路や目標に合わせて選択できる特別授業を設けるなど、多彩な授業を行う予定だ。
 三つめはコミュニケーション能力の向上のために国語科と連携して英語指導を充実させる。英語で自己表現できる人間を育てるのが目標だ。全学年の授業を見直し、四年次には英語プロジェクト(必修)を用意する。このプロジェクトクラスでは楽しみながら会話や表現法が身につけられるよう「時事問題研究」や「映画制作」といったテーマを設け、その中から興味のあるものを選んで授業を受けることができる。授業はネイティブの教師と日本人教師がペアで担当する。
 このほかイングリッシュルームも充実させ、放課後、外国人教師から個人指導を受けることもできるようになる。
 四つめは、従来「学校庶務」制度として校内の仕事を生徒たちが交代で担当し社会人体験を行っていたが、これを発展させ、社会人としてのマナーや責任を体験するインターンシップ制度とする。実際には、夏季休暇などを利用して、社会人を招いた講座を開設したり、企業などで体験学習を行う、などである。
 こうした中学高校改革への取り組みは、平成十五年十一月、前原金一・立命館大学客員教授(住友生命総合研究所会長)らをメンバーとするアドバイザリー・ボードを立ち上げた時に始まった。立ち上げて半年での素早い導入は、子供たちの環境の大きな変化に対応し、早急に教育力を強化するためだという。渡辺校長は、「今後もカリキュラムや制度を検証しつつ、さまざまな改革を実行していきたい。学校法人昭和女子大学は幼稚園から大学院までを擁し、海外にもボストン校を持つなど、知的資産に恵まれている。これを生かしながら生徒の個性や能力を伸ばしていく。改革は始まったばかりです」と話す。


昭和女子大学で大学生にまじって授業を受ける五修生

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