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記事2005年10月3日 1995号 (5面) 
地域振興に貢献 (3) ―― 千葉商科大学
大学や専門学校が地域と連携
商店街産学公連携で活性化
他大学との差別化を図る

 千葉商科大学(加藤寛学長、千葉県市川市)と江戸川区が江戸川区内商店街活性化のために連携して取り組む「えどがわ商店街産学公連携プロジェクト――小岩南口フラワー商店街活性化」が平成十六年度からスタートしている。この成果が商店街の振興のために一石を投じている。このプログラムは同大学のエクステンション委員会の年間活動として行われている。エクステンション委員会の活動は「大学の『知』を学外に、学外の『知』を学内にという循環プロセスから新たな『知』を創造して地域、大学に還元する」および「他大学との差別化を図る」という方針に基づいている。




 昨年六月二十八日、同大学、小岩駅前通り美観商店街(通称・フラワーロード商店街)、そして江戸川区役所の三者が連携して商店街活性化のために努力することで、調印が行われた。その後、五つのゼミ約百人の学生たちが商店を訪れ商店が抱える課題を聞いたり、商店街の会長や江戸川区役所の産業振興課の担当者がゼミ生を前に講演を行ったりして、産学公の交流が始まった。商店街の現状や問題点を把握できた学生たちからは「実際に商店街の人たちからいろいろな話が聞けて現状が分かった」という声があがった。
 今年三月二十八日、南小岩コミュニティ会館で学生たちはその成果を披露するプレゼンテーションに望んだ。ここでは四つのゼミがそれぞれ商店街の活性化のために提案。会場には加藤学長はじめ、多田正見・江戸川区長や商店街の人たち、行政関係者らが参加して、熱気に包まれた発表会となった。提案には、大賞、区長賞、学長賞、会長賞が贈られた。街全体の価値を高めるものとして、どの提案も評価が高かった。学生たちは「いい経験になった」「学んだ知識を生かせる場を与えてもらって勉強になった」と感想を話していた。商店街はこれらの提案を参考にどのように実行していくか、勉強会を行っている。発表された提案の中には「商店街活性化装置」の提案、また、あるものはハードの面では「屋内型多目的スペース」を、ソフトの面ではオリジナル商品の開発・地場産業見本市・宅配サービス・NP0との連携などを提案、学生らしい斬新なアイデアが見られた。
 同大学の創設者である遠藤隆吉氏が訴えた、目指す人材は「治道家」だ。「治道家」とは「大局に立ち、どんな時代でも世の中をリードしていく未来創造型の人材」だ。この伝統を受け継ぎ、実社会に役立つ学問である実学≠通して新時代の「治道家」を育てることが、同大学の使命となっている。産学公の連携による地域活性化のための取り組みは、まさにこの伝統の表れといえる。文部科学省の「現代的教育ニーズ取組支援プログラム」(現代GP)に採択されたテーマが「地域活性化への貢献」としているのも、創立以来の伝統である実学≠実践してきたことを物語っている。
 エクステンション委員会の平成十七年度の事業はそのほか、さまざまな事業を実施しているが、「えどがわ商店街産学公連携プログラム――小岩南口フラワーロード商店街活性化」プログラムについては、@一店逸品運動Aイベント「恋話物語発表会&ジャズの夕べ」の実施B朝市――を計画している。@については、商店街の中には独自の商品を売り出そうと計画中だ。Aについては、「小岩」と「恋話」をキーワードに、恋にまつわる俳句、川柳、詩を全国から募集し、この話題に満ち溢れた夢と希望とにぎわいのある小岩をアピールしようという試みだ。これらの作品(約九百点)の中から選考し、九月三日カルガモ広場で発表された。ちなみに俳句の部の優秀作品は「ケイタイを切って寄りそう星月夜」、川柳の部の優秀作品は「あと少し声聞きたくて長電話」。このほど七十四の優秀作品を集めた『恋話物語』が出来上がった。このイベントには学生たちが司会を行ったり、イベントを盛り上げたりした。Bについては、月に一度、商店街が行う朝市に学生が手伝おうというもの。「この場合、学生たちは単なる労働力の提供として参加するのではなく、あくまでも商店街の振興のためにアイデアを提案するという立場で参加します。学生、商店街、行政の役割分担ということが、今後の課題としてあります。こうした活動に参加することは、学生たちの就職にも役に立つのではないでしょうか」と、鈴木孝男・エクステンション委員会委員長(商経学部教授)は語る。
 同大学の地域連携に対する取り組みは、地域の問題を真摯(しんし)に捉えている。机上の理論だけでは得ることができない、実社会から得た生きた学び≠ェ学生たちの血肉となるに違いない。



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