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記事2005年11月3日 号 (6面) 
企業トップインタビュー 「教育はこれでよいのか」
有徳の精神と基礎学力
三井住友海上火災保険株式会社相談役 松方 康氏
世界のリーダー育成を
学校と企業の交流精力的に



 「私は、体系的な教育論を持ち合わせておらず、その意味で『教育オンチ』を自認していますが、一方で、教育ほど重要なことはないと思っています。ですから、私たちは、子供たちがさまざまなことを学び立派に育っていくように、指導性を発揮する義務を負っています」
 こう切り出したのは、三井住友海上火災保険株式会社の松方康相談役だ。中学・高校という多感な時代、生徒は何を育〓ルビはぐく〓み、また学校はどのような教育をするべきか。
 中学時代は人生の基礎をつくる時期という基本的な認識に立ち、家庭教育と相まって「一番重要なことが『有徳の精神』を身につけること」と明快。有徳の精神とは、道義心、忍耐力、包容力、つまり「思いやりの心」である。
 「有徳の精神を持たない者は、どんなに頭が良くても、周囲の理解や協力を得られず、自分の力を十分に発揮できない。社会に出ても大きな成果は出せない」
 また、人生の基礎をつくるもう一つの重要な要素は、基礎学力の養成だ。「基礎学力として、特に近代史を含めた歴史、コミュニケーションの手段としての語学、そしてIT(情報技術)などコンピューターについての知識と考えています」
 また高校時代は自分を見直し、自ら進むべき進路の見当をつけるという意味で重要だと指摘する。
 「大人になってから仕方なく、あるいはつまらなく人生を送っている、こういう人がいます。人生の選び方を間違ったのではないでしょうか。人間にはだれにも特技や持ち味、または特に好きな趣味を持っています。これらを活〓ルビい〓かした職業に就けば、人生は楽しくなるはずです。人生は、自ら楽しみながら人の世につくすことが一番だと思います。高校時代は自分の人生の適性を探り当てるという時期です」
 画一的な教育を行わないこと、先ほど挙げた心の教育と基礎学力の育成、そして、子供一人ひとりを見てその長所を活かした進路指導が大切と、学校への期待も大きい。
 これから必要とされる人材像は、@徳を備えることを基本とし、A自分の志、考えを自ら明確にする自主性Bひたむきに志を貫き通す執着力C世界、特に近隣のアジア諸国から敬愛されるほどの国際性――を挙げる。
 「つまり、リーダーとしての資質を備えた人材ということです。リーダー育成として考えられる具体的な方策として、中学・高校の六年間一貫教育、教員と生徒が共に生活をする寄宿制、男女共学、そして自由度の大きい教育体系などが考えられます。つまり、社会の縮図を体験することです」
 松方相談役は、リーダーの不在を指摘し、リーダー育成教育の必要性を挙げる。
 「今、求められているのは、日本のリーダーではなく、世界のリーダーとなり得る人材。一人でも多く輩出することが、我々の責務」
 現在、経済同友会で「活力ある二十一世紀の日本社会を支えていく人材の育成・教育」のために、企業経営者が行っている具体的な活動の一つとして、学校と企業・経営者の交流活動がある。具体的には、中学・高校を中心に学校への「出張授業」や、教師やPTAの人々との懇談など。松方相談役はこの活動を精力的に行っている。
 松方相談役は、経済同友会が出張授業を始めたメンバーの一人だ。それ以来、中学・高校へ出張授業を続けている。今年五月九日には淑徳巣鴨中学・高等学校(東京都豊島区)の高校一年生を対象に「高校時代への期待〜高校時代に何をするべきか〜」と題し授業を行った。松方相談役自身の紹介、高校時代に何をするべきかを含めてどんな人間が必要とされるかなどについて、興味深い話をした。松方相談役は、「子供たちにさまざまなことを学んでもらう」との自ら課した責務を着実に履行している。

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