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記事2005年4月23日 1975号 (5面) 
地域振興に貢献 (2) ―― 日本女子大学家政学部
大学や専門学校が地域と連携
地域再生の取り組み 「地域を育む地域力」
家族生活・地域社会・行政との協働
日本女子大学(後藤祥子学長、東京都文京区)の家政学部は「地域を育む地域力」をテーマに、昨年から今年にかけて連続五回にわたって公開講座を開講している。第一回公開講座では「家族の生活経営から市民社会と協働する家族生活へ」と題し、家族生活の質を高めるためにはなぜ地域再生が必要なのか、この場合、家族・地域社会・行政との協働がどのような意義を持つのかなど、実践的な視点から議論が行われた。

 公開講座では、『地域再生の経済学』(中公新書)の著者として知られている神野直彦・東京大学経済学部長が「ソーシャル・ガバナンスと地域再生」と題し、渡部章・山形県高畠町長が「高畠町行政と市民の協働プロジェクトとしての『まほろばの里づくり』」と題し、それぞれ講演を行い、そして、堀越栄子・同大学家政学部家政経済学科教授が「地域生活力の概念と生活の視点にたつ提案型研究」と題し問題提起を行った。
 同大学は明治三十四年、「女性を人間として教育する」を教育理念に掲げて創立された。この理念の下に、女性が一人の人間として自立し、豊かな感性と広い視野を持って、社会に貢献できる実力の涵(かん)養(よう)を目指している。この精神は現在、脈々と受け継がれているが、家政学部は児童、食物、住居、被服、家政経済の五学科を通して、人間生活そのものを科学的に研究し、まさに社会貢献できる分野だ。
 「地域再生の問題を家族にまで掘り下げて考えてみたいのです。公開講座では家族・地域社会・行政との協働を研究する第一歩としたい」と語るのは、住澤博紀・同大学家政学部家政経済学科教授だ。
 現在、同学部で「家族の生活経営から市民社会と協働する家族へ」を研究課題に、プロジェクトが進められている。このプロジェクトは、(1)一年目は「活気とつながりを生み出しているアクティブな地域」での「地域生活力」の現状をヒアリング調査する、(2)二年目は同地域での「地域生活力」と個別の家族生活の相互作用をアンケート調査によって、明らかにする、(3)三年目は「地域生活力」の概念を規定するとともに、「地域生活力」における生活ガバナンス(協治)の確立の可能性を探る――ことを目的にしている。
 山形県高畠町は地域産業、環境、福祉などの多くの領域で成果を挙げ、この「活気とつながりを生み出しているアクティブな地域」の一つになっている、最もよい例だ。
 「全国で成果を挙げている地域を探しています。本学の家政学部は介護、住居、教育、被服、育児などの総合的な研究を行っている分野なので、地域再生に向けて具体的に考えることができると思います」と住澤教授は意欲的だ。
 十七年度は(1)「行政主導型」(2)「経済組織主導型」(3)「コミュニティ(市民団体、地域組織など)主導型」――の三つのガバナンス(協治)と、(1)「伝統的なつながりを生かしたタイプ――農村地域」(2)「伝統的なつながりを生かしたタイプ――都市化された地域」(3)「新しいつながりを創造したタイプ――農村地域」(4)「新しいつながりを創造したタイプ――都市化された地域」――の四つのつながりのタイプにより「地域生活力」を把握する方針だ。
 第二回公開講座は「児童学の立場から子育て支援を考える」と題し、小川博久・同大学児童学科教授、山形県最上郡金山町めばえ幼稚園の井上亘園長、そして千葉県市川ファミリーサポートセンターの山崎悌子氏がそれぞれ報告を行った。井上氏は環境教育の理念に基づいて、地域に適合した堆肥作りなどを行っている幼児教育の実践や、廃油などを利用した有機エネルギーによる園バスの運転などについて報告。また、第三回講座は「地域資産を活かしたまちづくり」と題し開催された。
 「現在、公共政策の立案などを目的とする大学院ができていますが、家庭とか地域住民の生活がその研究対象に入ってこない場合が多いと思います。また、従来、家族生活を地域の問題を解決する主体ではなく、受益や支援の対象と位置づけられてきました。その点、このプロジェクトは本学の家政学部の持っている総合的な生活問題を研究するという特色を発揮できると思います」と住澤教授の、このプロジェクトにかける期待は大きい。



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