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記事2008年2月13日 2090号 (2面) 
先行見えぬ小・中学高校等の第三者評価
評価の「目的」も委員間で相違
国の試行多かった優良校
 文部科学省の学校評価の推進に関する調査研究協力者会議(座長=天笠茂・千葉大学教育学部教授)は二月八日、第十九回会議を開き、第三者評価の試行結果等について報告を受けたほか、そのあり方などについて審議した。この日の会議で同会議の審議は二年目を終了、平成二十年度から三年目に入るが、第三者評価の目的だけをとっても、「全校を対象に実施し評価結果を学校選択の判断材料とする」「課題を抱えている学校等を対象に行い、文部科学省など行政が政策立案の参考資料とする」など、委員間の認識には相違があり、「国レベルの試行はナンセンス。全国展開は無理」などの意見が出され、さらに「来年度は三年目、何をやるのか、国の関与はどうするのか、しっかり示すべきだ」と述べる委員も見られた。
 同会議では、第三者評価の課題は多く、審議はあまり進展していない。これまで同会議とは別途に内閣直属の教育再生会議が学校評価について検討していたことも背景にある。
 同省は平成十九年度に同省の視学官や視学委員等を評価リーダーにして百十六校の公立小、中学校を対象に第三者評価の試行を行ったが、委員と同省の担当官からも「モデル校が(教育委員会に)選ばれている。問題を抱えた学校を回りたかった」「国の試行事業に上がってくるのはいい学校ばかり。範囲が偏っている」「いい学校が多かった。(試行事業の)対象校は多様化が必要」などの意見が聞かれた。
 同省の行った第三者評価の試行結果については、まだ公表はされていないが、口頭による報告では、評価者の評価の基準作りなどが課題で、日程的に制約が多い中で評価を決めていくこと(課程)に時間をかける必要性が指摘され、また評価対象となった学校は、評価者による指導までも期待しているが、「評価者は指導しない」という基本的スタンスに違いがあることなどが明らかになった。また評価者の計画的養成や、高校、特別支援学校の扱いなども課題だ。また公立学校の場合、教育委員会の裁量が大きく、現場の学校の裁量は小さいことから、教育委員会の評価が課題といえる。
 文部科学省は、来年度も引き続き第三者評価の試行を行うが、対象校数は十九年度の半分以下に減少させる方針だ。その分、対象校を多様化し、一校一校をていねいに見ていく、としている。
 このほか都道府県等が主体となって行う学校の第三者評価も平成十九年度、福島県や埼玉県、京都市など十二の地方自治体で試行され、合計五十三校が評価を受けた。
 また国、地方自治体に次ぐ第三のタイプとされる「研究機関等主体型」の学校の第三者評価に関する実践研究が、小松郁夫・国立教育政策研究所教育政策・評価研究部長から説明された。文科省や自治体の第三者評価とは異なる、専門的な第三者機関による全国的な外部評価の仕組みを含めた学校評価の充実方策を研究開発、また施行を通じて成果を蓄積、より適切な評価システムの構築を図るのが目的。国研が開発した自己評価シートによる自己評価、事前訪問による評価内容の重点化、学校訪問(授業観察、ヒアリング、文書資料等確認)、評価報告書に関する説明と事実確認のための事後評価とのプロセスを取っている。第三者評価のあり方の検討は、来年度本格化する見通しだが、行政機関だけではなく、民間機関による第三者評価の実施の可能性もある。
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