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記事2010年11月13日 2187号 (4面) 
低炭素社会実現に取り組む私学 F
青山学院大学
 地球温暖化防止のために大学等には先導的に取り組む役割が期待されている。また省エネ法の改正で対策の強化が求められている。今回は青山学院大学相模原キャンパスの取り組みを紹介する。

豊かな樹木やクール・ヒートトンネルなど
自然の力でエネルギー消費を削減

 正門を入ると、紅葉した大きなケヤキ並木のプロムナード。視界が開け、右手には美しい緑の芝生とチャペル。豊かな自然環境に包まれた青山学院大学(伊藤定良学長)相模原キャンパスは、人文・社会科学系と理工学系の学生が共に学ぶ文理融合型のキャンパスとして、二〇〇三年に開校した。
 基本コンセプトの一つは地球環境に負担をかけないエコキャンパス。省エネでも自然エネルギーを活用したことが特徴だ。
 計画当初から豊かな緑を生かす設計がなされた。既存の樹木も含め、約千七百本の高木のケヤキやヒマラヤスギなどをキャンパス内に再配置。プロムナードには樹冠の大きなケヤキを並木とし、これが夏には大きな緑陰を作り、日中の舗装面の表面温度を約一〇〜一五度も低下させる。
 直射日光のあたる各校舎前には落葉樹が植えられ夏の強い日差しを遮る。逆に冬には落葉するため十分な光と太陽の暖かさを取り込むことができる。これが夏冬の空調のエネルギー消費を抑える働きもする。
 また緑地を多く残したことで、降雨を大地に浸透させ、下水への放流量を抑制している。
 施設設備の省エネ対策のひとつは、地中の温度が年間を通して一定していることを利用したクール・ヒートトンネルである。建物の地中梁部分を利用してトンネルを設け、そこに取り入れた外気を通すことで、夏は冷やし冬は温めて空調機に送り、適温にして各教室等へ送り出す。これによって空調にかかるエネルギー消費量は大幅に低減される。教室棟(DEF棟)、メディアセンター棟、食堂棟、理工学部棟、アリーナ棟など、トンネルの総延長は約千三百六十bに及ぶ。
 一方、春秋の心地よい季節には空調を使わず、建物全体で自然換気ができる構造になっている。窓から入った空気は室内を通り抜け、階段室を上って、最上階部分から出て行く。換気の効果をさらに上げるために階段蹴上げ部分をスリット化した。
 建物の窓には夏の強い日差しを遮るための水平・垂直庇を方角に合わせて付けた。日射による無駄な熱を建物内に入れないためだ。一方で明るさを確保するため、外光を庇に反射させて室内奥まで取り入れる。これに合わせて、室内照明は自動的に調節され、照明エネルギーを削減する。もちろん窓のガラスは断熱効果の高いペアガラスを採用している。
 もうひとつ、空調などに使っているのが井戸水を利用した氷蓄熱システムだ。熱交換機でシャーベット状の氷を作って空気を冷やしそれを空調に利用する。その際に出る熱源も井戸水で冷やすことで余分な熱を大気中に出さない。さらに井戸水はトイレ用水や理工学部実験棟の冷却水等に再利用している。
 二つの食堂から出る生ゴミ対策には、バイオ消滅型コンポストを導入した。コンポストに生ゴミを投入すると半日から一日程度でCO2と水に変わり、この水も蒸発させるため廃棄物が全く出ないそうだ。
 これらの工夫で年間エネルギー使用量は、理工系学部を抱えるキャンパスであるにもかかわらず、文系の大規模大学キャンパスと同程度の千五百三十四MJ/uとのこと。
 自然環境を生かしながらそれを利用して消費エネルギーを削減する相模原キャンパスのシステムは、先人の知恵を現代に活かした取り組みといえそうだ。

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