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記事2010年8月13日 2179号 (2面) 
ボローニャ・プロセスの進展とオランダ地域の取り組み
大学評価・学位授与機構がセミナー
労働市場等に合わせて国際的能力を育成
課題は学生の海外留学活発化等
 大学評価・学位授与機構(平野眞一機構長)は「質を伴った大学間国際連携の推進にむけて 日本・欧州質保証セミナー〜ボローニャ・プロセスの進展とオランダ地域の取組〜」を六月十七日、東京・千代田区の学士会館で開催した。講演やシンポジウムが行われたが、このうち講演の概要を紹介する。
 エラスムス・ムンドゥス(EM)は、高等教育機関が連携して大学院レベルの共同プログラムを実施し学生・研究者の交流を促進するための計画。基調講演「国際的な質の保証〜エラスムス・ムンドゥスの経験から〜」で、EMのアドミストレーターを務めるウィリアム・アイチソン氏が次のように話した。
 EMコースは、EUの三カ国以上の大学によるコンソーシアムで開発・実施している卓越したプログラムである。昨年からはEU域外の大学もパートナーとして参加。日本の大学が参加しているコースは三つある。二〇〇四年に始まって以来、五百以上の大学がこのコースに参加し、百十六のジョイントマスターコースが行われた。学生は約八千人、学者は二千人ほどが参加している。
 評価では、そのプログラムがどのように進化したか、どのような問題に直面しどのようにそれを克服してきたのかを取り上げている。参加している大学・学生に、コースの目的、成果の情報、開発できる能力、ヨーロッパの学位を取るために必要なことやスキルを伝えることが重要だ。EMのコースの八五%は英語で授業が行われているが、伊独仏語で提供されているコースもある。大切なのは失敗から学ぶことだ。学生に意見を聞く必要がある。共同学位を認めていないところがあるが、その場合は複数の学位を出すというやり方をしている、などとアイチソン氏は話した。
 続いて、NVAO(オランダ・フランダース・アクレディテーション機構)チェアマンのカール・ディットリヒ氏が「高等教育の国際化―欧州の展望とオランダ及びベルギー・フランダース地方の取組」と題して講演した。
 ヨーロッパは二つの戦争の悲惨を繰り返さないために、域内の国々の協力が不可欠と考え、それはEC(欧州共同体)となり、EU(欧州連合)へと発展した。ボローニャ・プロセスもこの文脈で進められている。欧州高等教育圏の目標は、ヨーロッパの高等教育を単一の制度として、最終的には欧州労働市場を創設、促進することだ。
 質の保証において傘のような役割を果たしている組織が二〇〇〇年に設立されたENQA(欧州質保証機構ネットワーク)である。二〇〇三年には、欧州アクレディテーションコンソーシアム(ECA:エーカ)を設立。来年六月には合同プログラム・合同学位の認証決定の相互承認に関する単一の合意が成立する見込みである。ECAでは、認証手続きの簡素化のためのプロジェクトを開始した。また、機関別評価のための国際専門家の訓練のプロジェクトも開始し、これによってヨーロッパのベンチマークを作りたいと考えている。オランダやフランダースが国際的枠組みで活発に動いているのは、国際化が不可欠だからだ。オランダ、ベルギーの両国は貿易など輸出産業に依存しており、外国語を話し国際的視野を持つ必要に迫られていること。もう一つ、二十世紀に集まってきた外国人労働者が定住し、既に両国は多文化社会へと変貌しているからだ。労働市場や政府・国民が国際的能力を必要としているのであれば、教育を通して、できるだけ早い時期からそれを育成しなければならない、などとディットリヒ氏は話した。
 「高等教育の国際化〜Nufficの視点と取組〜」と題して講演した、Nuffic(オランダ高等教育国際協力機構)ゼネラルディレクターを務めるサンデル・バン・デン・エインデン氏は次のように話した。
 ヨーロッパはナレッジベースのダイナミックな経済を作っていくことになった。国際協力で進めていく理由は、一つは、若い人たちに、国際化が進む世界で働き勉強してほしいこと、コミュニティーの歴史・文化・言語を含めて理解し勉強してほしいからだ。
 Nufficは、高等教育における国際協力の組織で、モットーは世界の知識を結び付けることである。国際協力を進めるために、モビリティープログラムの運用、機関の発展、プログラムの展開を実施している。国際的な資格の評価・認定も行う。また、大学の自己評価のツール、ベンチマークを作り、オンラインで提供している。
 今後の課題は二つ。一つはオランダ学生の海外留学を増やすこと。二つ目は透明性の確保である。これが国際化のカギになる、などとエインデン氏は話した。
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