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記事2016年10月3日 2387号 (1面) 
広域通信制高校の質確保・向上会議開く
ガイドラインを取りまとめ
本格的実地調査等実施へ

株式会社立のウィッツ青山学園高等学校での高校等就学支援金詐欺事件や不適切な管理運営・教育の実態等を受けて、広域通信制高校制度の抜本的見直しを進めている文部科学省の「広域通信制高等学校の質の確保・向上に関する調査研究協力者会議」(荒瀬克己座長=大谷大学文学部教授)は、9月27日、同省内で第4回会合を開き、前回に続き「高等学校通信制教育の質の確保・向上のためのガイドライン(案)」について審議、ほぼ原案通り取りまとめることを決めた。細かな文言の修正は座長一任とし、近く同省から公表の予定。  今後は、ガイドラインを踏まえて、国・所轄庁等による点検チームの立ち入り調査等が、法令等に基づききちんと教育を行っている高校もあるが、全105校(学校法人立85校、株式会社立19校、公立1校)を対象に実施される。調査は学校ではない民間の教育施設(サポート校)も対象とする。  特に構造改革特区制度を活用して設立された株式会社立の広域通信制高校19校については、認定自治体が市町村で高校教育の知見を持つ職員がいないなど管理指導体制が脆弱なことから、文科省では同省の職員に加え、都道府県教育委員会の高校教育担当指導主事や全国高等学校通信制教育研究会(全通研)等の協力も得てチームを組んで基本的には全校を対象に実地点検に当たる方針。  文科省は今年3月30日には「広域通信制高校に関する集中改革プログラム」を策定、平成28〜30年度までの3年間に集中点検を行いながら、通信制高校に係る制度の見直し、第三者機関による評価の仕組みの検討、所轄庁相互の緊密な情報共有等の連携協力体制の整備等を進めることを決めている。  同ガイドラインは、(1)学校の管理運営に関する事項、(2)教育課程等に関する事項、(3)施設及び設備に関する事項で構成されており、このうち(1)での学校の管理運営では、教員配置の充実、連携施設との適切な協力・連携、学校評価等を取り上げており、その学校評価に関しては自己評価の実施・公表、学校関係者評価の実施努力、必要に応じての第三者評価を実施する方針。  (2)の教育課程等ではサポート校の職員に添削指導等を行わせないことはもとより、協力校についても実施校の校長の監督権が及ばない協力校の教職員に実施校の教職員に代わって面接指導及び試験等を実施させることはできないとし、技能教育施設の職員についても技能連携措置の対象となる教科・科目以外の教科・科目に関する添削指導等を実施させることができない、などとしている。  この日、同調査研究協力者会議の委員からは、「(実地点検では)学校が選んだ生徒ではなく、こちらが選んだ生徒に話を聞くことが大事」「教員全員の教員免許を揃える(提示してもらう)くらいのことをしないと生徒は安心して学べないし、広域通信制は変わらない」「今年3月まで国立高専機構の監事をしていた。2、3日で(学校の実情が)分かるものではないが、それは前提があってのこと。しかし(広域通信制高校では)前提に疑義がある。それを忘れてはならない」「(広域通信制高校の教育とは別に)連携施設が独自に行うオプション、オリジナルコースは生徒のモチベーションにもなるが、(通信制高校の教育と)判別しにくい。区別ははっきりしてほしい」等の意見が聞かれた。  同会議に終了時まで出席した文科省の義家弘介副大臣(衆議院議員)は今回の問題に積極的に関わっているが、ウィッツ青山学園高校を本来履修すべき単位を取らずに卒業させられた過年度卒業生の回復措置の授業に、自ら教員免許を更新して当たったこと、その折、ゲームをしながら遅刻して教室に入ってきた生徒に授業を始めることを伝えると、「あと15分待って、今ゲーム始めたところだから」と全く悪びれず言われた経験を報告して、「その子は現実の社会の中でそれはならぬと言われずにその年齢になったのだろう。大変強い危機感を持った。通信制高校はしっかり手をかけることが行き届かない側面もあるからこそ、面接指導の時に(生徒と)どう向き合うかが重要」と語り、(通信制の)良さを伸ばしながら弱点も克服して、(彼ら若者が)飛び立てる土台となれるようにしていきたい」と会議を締め括った。

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