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記事2016年11月13日 2391号 (1面) 
高等教育政策の構造的大転換の実現を
私立大学振興大会2016開く
補助割合9・9%に強い危機感 国私間格差是正を強く要求

日本私立大学団体連合会、日本私立短期大学協会、日本私立高等専門学校協会の3団体は、11月10日、東京・市ヶ谷の私学会館で「私立大学振興大会2016」を開催した。私立大学等の経常経費に対する国の補助割合が10%を切り9・9%となり、私立学校振興助成法の成立(昭和50年)以前の昭和46年度以来の補助割合となったことがこのほど判明、大会では、主催団体代表や出席の私立大学の理事長、学長等からは、高等教育の機会均等や教育研究の充実への強い懸念が表明され、国私間の不合理な公財政支出格差の早急な是正等を求める意見が相次いだ。


大会の冒頭、主催団体を代表して日本私立大学団体連合会の鎌田薫会長(早稲田大学総長)があいさつに立ち、私立学校振興助成法制定時の国会で「速やかに2分の1補助の実現を」との附帯決議が採択されたにもかかわらず、補助率は昭和55年の29・5%をピークに減少基調を続けていて、同法の精神を蔑ろ、形骸化していると指摘。私立大学が戦後の経済成長を支えた多くの有為な人材を輩出、わが国のぶ厚い中間層を形成してきた中で、補助金や奨学金等における大きな国私立大学間格差には何の合理性もないと指摘、私立大学等の自助努力は限界で、私大等の社会的な役割に対する理解が必要だとし、今大会を、危機意識を共有して大きな声をあげて要望実現への第一歩としたいと力説した。  来賓の河村建夫・元文部科学大臣(衆議院議員)は、私学助成の割合が落ちて来ていることについては忸怩たる思いがあるとし、教育費全体が危機だと語った。  その後、私大団体連の黒田壽二副会長、日短協の関口修会長、日本私立学校振興・共済事業団の河田悌一理事長が、「いま、再確認する私立学校振興助成法の意義新たな展望に向けて」を演題に基調発表を行った。  このうち黒田副会長は、私立学校振興助成法が経常経費の2分の1以内を補助することができるとしている点を取り上げ、「ゼロでも2分の1以内で、運動し続けなければ減額される。我々の行動にかかっている」とした上で、私大の経常経費の増額が新しい時代に向けた大きな投資によるもので、学生一人当たりの公財政支出に13倍(国立大218万円、私立大17万円)もの格差がある中で私学が頑張っているからこれだけの高等教育を支えていることを強調、文科省の私大関係概算要求の満額獲得に力を貸してほしいと全国の私大関係者や国会議員等に訴えかけた。  また日短協の関口会長は都市部への人口集中、都市部の大学での定員増の一方で地方の振興に欠くことのできない小規模な大学や短期大学が厳しい状況に追い込まれている状況を説明、地域間の格差是正のため、地方の小規模大学や短大については別に制度を設けなければ日本の社会は著しく歪になると指摘、短大が地方社会の発展に寄与できる体制を作ってほしいと訴えた。  私学事業団の河田理事長は、大学における中長期計画の策定が進んでいない点を取り上げ、大学に努力を求めたほか、優れた経営強化の実践例を参考に工夫改善に取り組んでほしいと要請。社会人の再教育のためのカリキュラム作りや職員が指導力を持っての改革の重要性等を強調した。  その後、松野博一・文部科学大臣が駆け付けて、大学教育の8割を占める私立大学等の予算確保に向けて全省を挙げて取り組んでいく決意を改めて明らかにしたが、大会に出席の私大関係者からは、国私間格差について「憲法26条にももとる現実。同じ納税者として看過できない」、「私学の衰退は国力の衰退」「耐震化を進めるため改築にもきちんとした補助を出してほしい」といった意見や、税制面では「受託研究に関して私大も国大と同じように原則非課税にしてほしい」など私大経営への危機感を感じさせる意見が相次いだ。  このほか学生や留学生の意見なども紹介され、最後に、(1)平成29年度私立大学関係政府予算概算要求の満額実現、学校法人関係税制の一層の改善、(2)私立大学における教育及び学術研究の質的転換の推進、(3)安全・安心な教育環境の実現並びに熊本地震・東日本大震災の復興、被災学生のための支援の継続・拡充、(4)高等教育政策の構造的大転換(パラダイムシフト)の実現の4点を柱とする決議を出席者全員で採択、文科省の村田善則・高等教育局私学部長に手渡し、各項目の実現を要請、出席者も各項目の実現に全力で取り組んでいくことを誓い合った。

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