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記事2016年11月23日 2392号 (1面) 
私立学校の耐震化推進急務
文科省が私学の耐震改修状況等公表
耐震化率80%台後半に なお国公立校とは大きな開き

文部科学省は11月16日、「平成28年度私立学校施設の耐震改修状況等の調査結果」を公表した。それによると今年4月1日現在、校舎等の耐震化率は私立大学等が前年度比1・2ポイント増の88・8%、私立幼稚園・高校等は、前年度比2・9ポイント増の86・4%となった。


しかし国等の集中的な予算投入もあって、今年4月1日現在、国立大学施設の耐震化率は既に97・9%、公立小・中学校では98・1%に達し、「おおむね耐震化は完了」という状況だ。  同省では今後、私立学校施設の耐震化の早期完了を目指して集中的な財政支援を行うとともに、高校等に関しては、都道府県との連携による耐震化の推進を、大学等に関しては、学校法人への個別指導による耐震化の推進を図る方針だ。私立学校施設の耐震化状況をさらに詳細に見ると  私立大学等の保有面積は4572万平方メートル、そのうち新耐震基準で建てられた建物が3291万平方メートル、旧耐震基準で建てられた建物は1280万平方メートルだった。旧耐震基準で建てられた建物を耐震診断した結果、「耐震性あり」の建物が770万平方メートルあったが、「耐震性なし」とされた建物が308万平方メートル、また耐震診断未実施の建物も202万平方メートルあり、耐震性なしの建物と合わせると510万平方メートル(全体の11・2%)に上る。  保有面積のうち、教室、研究室、図書館、体育施設、福利厚生施設等の教育研究施設だけを見ると、耐震化率は89・4%となり、わずかに上昇する。  こうした状況に文科省では、財政支援を進めると同時に、学校法人別の耐震化率分布を公表、学校法人自らによる耐震化率の公表を促進、個別の状況に応じた指導を進め、耐震化へ一歩踏み出す気運を醸成する考えだ。  一方、私立高校等の耐震化率を学校種別に見ると、幼稚園および幼保連携型認定こども園が86・6%、小学校が97・0%、中学校が94・6%、高等学校が84・4%、中等教育学校が98・1%、特別支援学校が100%という状況だった。  この中では学校数の多い高等学校が最も耐震化が遅れている状況で文科省では各都道府県における耐震関連補助制度の整備を促していくほか、同時に各都道府県における未耐震学校に対する指導・助言、指示等の強化を促進、各都道府県における未耐震学校への対応状況等の調査・公表を行う考えだ。  私立高等学校の耐震化には国の補助はもとより、所轄庁である都道府県の耐震化への積極的な取り組みが不可欠だ。しかし都道府県の私立学校に対する耐震化支援策にはかなりの格差があり、例えば「耐震診断補助」がない県が全国で16県あり、また「耐震補強補助」、「耐震改築補助」はそれぞれ14道県で補助がない。幼稚園等に関しては高校等とほぼ同様な状況だ。


都道府県間でも耐震化率に差


 


幼稚園等と私立高校等をまとめた耐震化率を都道府県別に見るとトップテンは、1位が静岡県(97・0%)で、2位が秋田県(96・1%)、3位が三重県(95・1%)、4位が東京都(94・8%)、5位が徳島県(94・0%)、6位が愛知県(92・6%)、7位が神奈川県(92・0%)、8位が大分県(91・4%)、9位が埼玉県(90・7%)、10位が島根県(90・7%)。  反対に耐震化率が最も低かったのは岡山県の67・3%で、次いで沖縄県、愛媛県、北海道、鳥取県などが続いている。  文部科学省は、幼稚園から大学までの私立学校施設の耐震化予算として、平成23年度に146億円(当初予算+補正予算)、翌24年度には210億円(同)、25年度には154億円(同)、26年度には404億円(同)、27年度には175億円(同)、今年度(28年度)には過去最高の補正予算額301億円を含めて346億円(同)を計上、29年度には当初予算として225億円の概算要求をしている。私立学校の耐震化の遅れは厳しい財政事情の中で国の耐震化予算が低調にとどまってきたということにも原因があり、平成29年度以降、充実した財政支援が必要となっている。私立学校が、国・公立学校の耐震化水準に追いつくためにはあと数年は必要とみられている。  耐震化がほぼ完了した公立学校は、目下、校舎の老朽化対策、非構造部材を含めた耐震対策、防災機能強化、トイレの改修、空調設置等の教育環境の改善等を進めつつある。今年4月1日現在で公立小・中学校のつり天井対策実施率は全国平均で95・0%、非構造部材(天井や照明器具等)の耐震点検実施率は94・4%、その耐震対策実施率は71・1%という状況。  一方、私立学校(幼稚園等、高校等)のつり天井対策の実施率は76・3%、つり天井を除く非構造部材の耐震点検実施率は67・3%、耐震対策実施率は58・0%。また私立大学等に関しては、つり天井対策の実施率が48・7%、それ以外の非構造部材の耐震点検実施率が71・8%、耐震対策実施率が65・2%となっている。

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