こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> 2016年7月3日号二ュース

記事2016年7月3日 2379号 (1面) 
社会に開かれた教育課程へ
学習指導要領改訂議論大詰め段階に 教育目標や指導内容を構造化
学習評価の在り方も改善充実

中央教育審議会での次期学習指導要領の在り方に関する議論が小、中、高校部会で終了、大詰めの段階を迎えている。今後、総則・評価特別部会や教育課程企画特別部会等を経て審議結果がまとめられ、その後、今年度中に文部科学省により学習指導要領の改訂が行われる予定。


議論をとりまとめる文言調整主査一任


プログラミング教育も議題に


小学校


中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会の小学校部会(主査=天笠茂・千葉大学教育学部教授)が6月23日、文部科学省内で第7回会合を開いた。事実上最後の会合で、文言の調整などを主査一任として議論を取りまとめた。同部会は次期学習指導要領についての議論を行う部会の一つで、議論のまとめは、総則・評価特別部会、中学校部会、高等学校部会と合わせた形で公表される。  これまでにほぼ議論が尽くされており、委員からは「家庭科を英語で教えるといった『内容言語統合型』学習の有効性を取り上げてはどうか」「短時間学習による『定着』という表現はあいまいだ」「指導要録に加えてキャリアリポートを導入、とあるがもう少し具体的に書くべきだ」「『地域とともにある学校への転換を図る』との部分について具体的な表現が欲しい」など、細部についてより具体的な書き方を求める意見が多く出された。これら意見のまとめへの反映は、同部会内で主査一任とされたほか、総則・評価特別部会にも伝えられて最終的な議論まとめとなる。  もう一つの議題として、小学校段階におけるプログラミング教育の在り方が取り上げられた。有識者会議が6月16日に公表した議論まとめは、プログラミング教育が必要な社会的背景を明らかにした上で、普遍的な「プログラミング的思考」の育成が目的であることを強調する。さらに、小学校段階ではどの教科にどうプログラミング教育を取り入れるかの実施例なども示している。この日の会合では委員から「ICT環境の整備は自治体ごとに大きな差があるのが現状だ。地域間格差が生じないようにしてほしい」「アナログ思考にどう反映されるかも明らかにした方がいい」「教員用の指導解説書は必須だろう」など、今後を見据えた意見が出された。


部活動の在り方に大きな関心


部会としては審議終える


中学校


次期学習指導要領が目指す「社会に開かれた教育課程」の趣旨を実現する上での中学校教育の課題を検討してきた中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会の中学校部会(主査=市川伸一・東京大学大学院教育学研究科教授)は7月1日、文部科学省内で4回目の会議を開き、「総則・評価特別部会、小学校部会、中学校部会、高校部会における議論の取りまとめ(案)」について議論し、中学校部会としての審議を終了した。  同取りまとめ案のうち、中学校に関する記述は約3ページ(そのほか小学校等との共通事項に関する記述もあり)。その中では教職員間や地域の意識を「カリキュラム・マネジメント」を軸に一本化していくことの重要性や学校段階間の接続、部活動が取り上げられているが、中学校部分の約半分が部活動に関する記述で、将来にわたる持続的な視野から在り方を検討し、活動内容や実施体制を検討していく必要性を指摘している。また部活動も学校教育活動の一環であることから生徒の「主体的・対話的で深い学び」を実現する視点が求められることを明確にする、などとしている。  こうした記述に委員からは、「新たな方向性を示すなら改善策を示すべきだ。公立では拠点校を中心に専門性を強化できるようにしてほしい。義務教育段階の部活動はオリンピックなどに直結していない。改善が必要」「部活動を縮小することが現実的なのか。部活動とは別にトップアスリートへの路線を作ることを考えてほしい」「分かりやすくこのままでは(部活動を)維持するのは難しい。その上で、スポーツの重要性からいい形に変えていく、と書いた方がいい。教員による指導では技術的限界があることも書いた方いい」などの意見が聞かれた。部活動の在り方に関しては、今後スポーツ庁でガイドライン作りは始まる予定。  この日はまた、さまざまな学校種に関わる部分として、業務効率化等の記述が取り上げられた。委員からは「学校を空けておく時間を決めた方がいい」といった意見や、英語教育に関して、「(英語、米語にこだわらず、)世界で使われている英語をはっきりと打ち出した方がいい。一方、アジアを中心に海外で日本語学習者が増えている。また、言語能力育成が重要なことや発達障害が増えていることなどから、主語のはっきりした日本語の指導が重要だ」といった意見が聞かれた。


構造的知識習得で生徒の負担に懸念


高校部会として審議を終了


高等学校


中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会の高等学校部会(主査=荒瀬克己・大谷大学文学部教授)は6月27日、文部科学省内で第5回会合を開き、検討を進めてきた「総則・評価特別部会、小学校部会、中学校部会、高等学校部会における議論の取りまとめ案」について審議し、委員がさまざまな意見を出した後、この日で審議を終了することを決めた。  小学校、中学校部会等と審議を重ねてきた約40ページ(参考資料を除き)の議論の取りまとめ案は、(1)「社会に開かれた教育課程」の実現と、総則を軸とした教育課程の総体的構造の可視化、(2)学校教育の改善・充実の好循環を生み出す「カリキュラム・マネジメント」の実現、(3)「何ができるようになるか」(教育目標と育成すべき資質・能力の明確化)、(4)何を学ぶか(各教科等を学ぶ意義と教科等横断的な視点を踏まえた教育課程の編成)、(5)どのように学ぶか(指導案の作成と実施、学習指導の改善・充実)、(6)何が身に付いたか(学習評価の充実)、(7)子供の発達をどのように支援するか(学習活動や学校生活の基盤作り、キャリア教育、特別な配慮を必要とする児童への指導等)、(8)実施するために何が必要か(家庭・地域との連携・協働、チーム学校等)、(9)小・中・高等学校それぞれにおける諸課題への対応からなっている。(8)までが総論部分、(9)が学校種別の各論という位置づけ。  この日、委員からは、議論の取りまとめ案の中で、生徒等が目指す「知識」は、例えば何年に歴史的出来事が起きただけではなく、なぜ起こったか、その出来事の当時の社会や現代への影響も含めた構造的な知識だとしていることについて、生徒の負担増を懸念する意見が出されたほか、新設科目となる「理数探求(仮称)」に関して、米国等で行われているSTEM教育と比べ、「情報」の学習が欠けていることを指摘する意見、議論の取りまとめの考え方の教育現場への周知の重要性を指摘する意見等が聞かれた。  また、議論の取りまとめ案にある、高校における指導や評価の充実が未来を創り出すものだということを教員が認識することは非常に大事だとする意見も聞かれた。


各部会等の進捗状況確認 条件整備の位置付け明確化を


教育課程企画特別部会


 


中央教育審議会初等中等教育分科会教育課程部会の教育課程企画特別部会(無藤隆主査=白梅学園大学教授)は6月28日、文部科学省内で17回目の会合を開き、昨年8月に策定した論点整理を踏まえて学校種別部会や各教科等別ワーキンググループでの審議の進捗状況の報告を事務局(文科省)から受け、その上で、意見交換を行った。初めに文科省から学習指導要領改訂の方向性案(ポンチ絵)や小学校〜高校までの学習指導要領・総則の改善のイメージ(改訂版)(たたき台案)、総則・評価特別部会、小学校部会、中学校部会、高等学校部会における議論の取りまとめ案が説明された。  そうした説明に委員からは、「改善を実現するための条件整備は全体の中にどう位置付けられるのか」、「対話的な学び、主体的な学びによって深い学びに繋がるのではないか。三つを並列で記載するのはおかしい」「目指すべき目標を小、中、高校の段階ごとに示し、全体が見えるようにすべきだ」「保護者や大学、企業に対する周知が重要」「学校の管理職はマネジメント論を学ぶ必要がある。校長のリーダーシップを引き上げていくことが重要」「主体的ということでは、生徒の内側に目を向けるべきだ。内発的意欲を引き出すことが重要」「教科と(目指すべき)資質・能力をもう少し近づけられないか。特定の教科が栄、特定の教科が衰退するようではだめ」などの意見が引かれた。この後、文部科学省から教科等別ワーキンググループ等の議論の取りまとめ案のうち、言語能力の向上、国語、外国語、社会・地理歴史・公民及び高校の地歴・公民科目の在り方、算数・数学、理科、高校の数学・理科にわたる探究的科目の在り方の検討状況が報告され、英語では「話すこと」(やりとり)をさらに強調してほしいといった意見が聞かれた。  芸術や産業教育などその他の教科等についての説明は行われなかった。



記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞