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全私学新聞

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記事2017年12月3日 2427号 (0面) 
私学振興策の充実を要請
私学振興協議会を開催
経常費補助の拡充要望
寄附金促進へ税制改正も

鎌田薫・全私学連合代表(日本私立大学団体連合会長、早稲田大学総長)と河村建夫・元文部科学大臣(衆議院議員)が共同代表を務める「私学振興協議会」が11月28日、都内のホテル開かれた。同協議会は、幼稚園から大学までの私学団体代表と与党・自由民主党の現職の文部科学部会長、文部科学(文部)大臣経験者の国会議員、文部科学(文教)部会長経験者の国会議員が同じテーブルを囲み今後の私学振興の在り方等を協議する場。この日は、平成30年度政府予算案編成の大詰め段階を前に私学が抱える諸課題とその対応策等について意見交換した。


協議会は、伊吹文明・元文部科学大臣(衆議院議員)のあいさつで開始となり、冒頭、鎌田・全私学連合代表が、出席の国会議員に私学振興への日頃の支援に感謝、その上で「私学を取り巻く情勢は今まで以上に厳しくなっていると認識している。私学全体を取り巻く課題、幼稚園から大学までの各学校種に応じた課題についてご高見を伺い、私どもの要望をお聞き頂き、忌憚のないご意見、ご助言を賜りたい」とあいさつした。  その後、赤池誠章・文部科学部会長があいさつし、協議会の前日に自民党税制調査会の実質審議がスタートしたこと、学校法人への寄附に係る寄付金控除の年末調整対象化については真っ先に重点項目としてその実現を税調で要望したことを説明、経済団体の理解を頂く中で何とか要望を実現したいと語った。また来年度予算に関しては、閣議決定に向けて最後の最後までしっかり予算確保を頑張りたいと語った。  塩谷立・元文部科学大臣(衆議院議員)も私学予算確保に全力で取り組む考えを明らかにした。 その後、鎌田共同代表が進行役となって全私学連合を構成する各私学団体代表から当面する課題や要望等が説明された。  初めに鎌田代表が税制改正関係要望の中から、特に、私学財政が一層厳しい中で寄附金の促進が喫緊の課題だと指摘、学校法人への寄附に係る寄附金控除の年末調整対象化の実現を改めて国会議員に要請。また、個人から学校法人への寄附に係る税額控除の対象法人となるための、いわゆる「PST要件」の全面撤廃実現を要請した。  私立学校施設の耐震化等については、国公立学校の耐震化率を大きく下回っていることから、政府の平成29年度補正予算、平成30年度の予算で特段の配慮を要望した。  続いて大学関係の予算要望に関しては、経常費補助金が私学振興助成法の附帯決議で速やかに2分の1を目指すとされたのに、補助率は昭和55年の29・5%をピークに減少の一途を辿っており、平成29年度には9・8%に落ち込む見通しにあることを説明、さらに私立大学に対する教育研究装置整備に係る予算においても平成29年度は53億円ということで、この8年間で約3分の1にまで縮減したこと、教育研究の質向上に逆行しているだけでなく、10年近く前に購入した計測機器の買い替え時期に来ている中で、日常的な教育研究にも支障を来すような状況に陥っていると窮状を説明、予算獲得を訴えた。  また、何よりも危機感を抱いているものとして、学生1人当たりの公財政支出について、国立大学は約200万円なのに対して、私立は16万円に過ぎず、約13倍もの格差があること、これは納税者間格差だと考えていると説明、さらに学生数は今後増やしていくことは困難で、授業料も国立の3、4倍という中では上げられず、収入を増やしていくためには寄附金その他の外部資金の獲得が大変重要だとし、寄附促進策の実現を要請した。  加えて相対的に低所得層を抱える私立大学では独自の奨学金を年間900億円規模で設定しているものの、これに対する国の支援は約70億円、学生間の所得移転を起こすことで低所得者層の学修を支えるという側面もあると説明。教育の無償化の議論の中で是非私大生に対する支援を強化してほしいと訴えた。  設置形態別の支援の体制から、1人1人の能力と経済状況に応じたきめ細かい支援の実現を要請した。その上で大学として社会的な使命を果たす上での改善の努力を続けていく決意を表明した。 続いて日本私立短期大学協会の関口修会長(郡山女子大学短期大学部理事長・学長)は、女子学生が多く在籍する短期大学があることで地方が安定すること、短期大学の意味はコミュニティ・カレッジであり、教育研究の成果を地域に還元すること、地域社会が健全に安定的に推移することについては、短大が果たしてきた役割であり、これから果たさなければならない使命という観点で支援をお願いしたいと要望。  日本私立中学高等学校連合会の吉田晋会長(富士見丘中学高等学校理事長・校長)は、なにより経常費補助の拡充によってよりよい教育環境の教育を整えることが、より負担の少ない教育ができる要因だと考えていると指摘、教育費の負担軽減と同時に私立学校に対する経常費補助の重要性を力説した。また教育や入試が大きく変わろうとしている中で、ツールとしてのICTの必要性は大きく叫ばれているとした上で、ICT設備整備は国公私一体となっての重要性を強調した。耐震化に関しては、国の補助だけでは難しく、県単独の補助の拡充を訴え、高校等就学支援金については内容の改善充実を、私立小・中学生への支援金についても年収400万円以下の家庭でも私立小・中学校の教育を受けたいと考えている家庭があることを説明、支援充実を要望した。  日本私立小学校連合会の小泉清裕会長(昭和女子大学附属昭和小学校長)も経常経費の更なる充実を要望、また東北地区の私立小学校は東日本大震災以降、児童数の減少が止まらない中で、校舎の新築や改築に多額の費用が掛かっていること等を報告。さらに就学支援金の充実を要請。  教育内容に関しては、特別な教科「道徳」に関しては、宗教教育で代用できる枠の中に、建学の精神も加えてほしいこと、私立小学校で長い時間をかけて培ってきた外国語教育を公立学校にも広げていくチャンスをいただきたいと語った。  全日本私立幼稚園連合会の北條泰雅副会長(みなと幼稚園理事長・園長)は、幼児教育振興法の早期制定等を要望した。  最後に日本私立大学協会の佐藤東洋士副会長(桜美林大学理事長・総長)は、地方創生推進のための補助の継続等を要請した。

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