こちらから紙面PDFをご覧いただけます。



全私学新聞

TOP >> バックナンバー一覧 >> 2018年10月3日号二ュース >> VIEW

記事2018年10月3日 2455号 (1面) 
学修者本位の教育へ転換
「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」検討
学生の学修成果を可視化
国公私の役割分担にも言及

中央教育審議会の大学分科会(永田恭介分科会長=筑波大学長)と将来構想部会(永田恭介部会長)は9月26日、文部科学省内で合同会議を開き、(1)将来構想部会の下で各高等教育機関の機能強化に向け制度面から早急に取り組むべき方策や、変化への対応・価値創造を実現するための学修の質向上に向けた制度等の在り方について検討してきた制度・教育改革ワーキンググループの「審議のまとめ案」と、(2)中教審として今秋公表予定の答申案「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」について討議した。審議のまとめ案や答申案に関しては、リカレント教育に関する記述の弱さや大学等の評価指標を検討する場の必要性などさまざまな意見が出されたが、現段階の案文として了承することを決めた。今後、10月5日の中教審総会で議論し、パブリックコメント、大学関係団体等からの意見聴取等を経て、11月末の中教審総会で答申として取りまとめる予定。


今回の答申案「2040年に向けた高等教育のグランドデザイン」は昨年3月の文部科学大臣の諮問に応えたもので、今年生まれの子供が大学学部を卒業する22年後(2040年)に必要とされる人材と高等教育の目指す姿を示したもの。  また、個々の教員の教育手法や研究を中心にシステムを構築する従来の教育から脱却し、学修者本位の教育への転換を打ち出したのが特徴。  何を学び、身に付けることができたのか、個々人の学修成果の可視化が必要。さらに高等教育を多様な価値観を持つ多様な人が集まることにより新たな価値が創造される場と定義、多様な学生ではリカレント教育や留学生交流、国際展開の充実、多様な教員では実務家、若手、女性、多国籍な人材が活躍できる環境や仕組みを求めている。  多様で柔軟な教育プログラムの必要性も指摘しており、その多様性を受け止める柔軟なガバナンス(強みを活かす連携・統合の仕組み整備、学外理事の登用等)を打ち出している。  また学んでいる学生が成長しているのか等を確認する質保証システムへの転換、そのため設置基準の見直し、認証評価制度の充実(法令違反等に対する厳格な対応)、教学マネジメントの確立、情報公開のさらなる充実、学生の満足度調査の実施も必要としている。  高等教育機関の規模や地域配置、国公私立の役割分担に関しては、必ずしも具体的な方針を打ち出してはいないが、高等教育機関進学者は2040年には現在の約80%の規模となるとした上で、社会人や留学生の規模の拡大が鍵を握り、その上で私立大学の役割については、教育研究の多様性によって国民の知的水準を底上げする役割があると指摘、国公私立大学の複合システムを活かして、我が国の高等教育の発展に国公私立全体で取り組んでいく必要があるとしている。  そうした上で今後の検討課題については、設置基準等の質保証システム全体の見直し、教学マネジメント指針の策定、「地域連携プラットホーム(仮称)」で議論すべき事項についてのガイドライン、「大学連携推進法人制度(仮称)」について基準内容、国立大学の規模・役割等を挙げている。  制度・教育改革WGの審議まとめ案は本紙前号1面で一部報告した通り、学位の国際通用性や学位プログラムを中心とした大学制度、大学間の連携による教育プログラム等の多様化、教育の質保証システムなど11項目に関して、制度改正の方向性を示しており、このうち教育の質保証システムに関しては、定員管理、教育手法、施設整備等について、学生/教員比率の設定や、教育課程を踏まえた教員組織の在り方、情報通信技術を活用した授業を行う際の施設設備の在り方を含め設置基準の抜本的な検討に着手するとしている。

記事の著作権はすべて一般社団法人全私学新聞に帰属します。
無断での記事の転載、転用を禁じます。
一般社団法人全私学新聞 〒102-0074 東京都千代田区九段南 2-4-9 第三早川屋ビル4階/TEL 03-3265-7551
Copyright(C) 一般社団法人全私学新聞