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記事2019年5月23日 2477号 (1面) 
急速な社会変化に対応ができるよう学習指導要領の一部改訂を
教育再生実行会議が第11次提言
普通科など高校の学科見直しへ 
具体策は中教審で検討

安倍晋三総理が開催する政府の「教育再生実行会議」(鎌田薫座長=早稲田大学前総長)は5月17日、「技術の進展に応じた教育の革新、新時代に対応した高等学校改革について」と題する第11次提言をまとめた。同会議は、21世紀の日本にふさわしい教育体制を構築し、教育の再生を実行に移していくため、平成25年1月に設けられたもの。今回が11回目の提言。その中では技術の進展など社会の急速な変化に対応できるよう、およそ10年のサイクルで改訂してきた高校等の学習指導要領を一部改訂の実施などにより教育課程の不断の見直しを進め、教科書についても一部訂正制度の積極的活用で弾力的見直しを可能とすることの検討を求めている。一方、現在、高校生の約7割が在籍する普通科については、生徒の意欲と関心を喚起し、能力を最大限引き出せるよう、国に対して高校が教育理念に基づいて選択できる類型の枠組みを示すよう提言している。これらの提言内容は文部科学大臣の諮問機関である中央教育審議会等で具体策の検討が進められる。


教育再生実行会議の第11次提言は、参考資料を除いてA4判で約30ページ。「技術の進展に応じた教育の革新」と「新時代に対応した高等学校改革」が二本柱。このうち「技術の進展に応じた教育の革新」では、「学校のICT環境は脆弱。教育への先端技術の導入が遅れ、学校と社会が乖離してしまうことはわが国の教育の発展にとって危機的な状況」などと強い危機感を述べ、国、地方公共団体、民間企業、学校関係者が積極的にスピード感をもって「技術の進展に応じた教育の革新」を加速度的に進めるよう求めている。その上で、(1)Society5・0で求められる力と教育の在り方、(2)教師の在り方や外部人材の活用、(3)新たな学びとそれに対応した教材の充実、(4)学校における働き方改革、(5)AI時代を担う人材育成としての高等教育の在り方、(6)特別な配慮が必要な児童生徒の状況に応じた支援の充実、(7)新たな学びの基盤となる環境整備、EBPMの推進、(8)生涯を通じた学びの機会の整備の推進、(9)教育現場と企業等の連携・協働―の九つの分野に関して57項目の提言を挙げている。
 その中では、国に対してSTEAM教育の事例の構築や収集、モデルプランの提示や全国展開、産学連携STEAM教育コンテンツのオンライン・ライブラリーの構築、校内研修等にも活用が可能なポータルサイトや動画配信等を用いて全国の教師が自主的にICTを活用した教育方法等について学ぶことができるよう支援すること、技術や情報の免許状所有者の採用を促進、技術と情報など複数免許の取得が促進されるような仕組みの検討、世界最速級の学術通信ネットワーク「SINET」を希望する全ての初等中等教育機関が利用できるよう活用モデルの検討・提示など地方公共団体や学校等への支援を行うことを求めている。
 一方、「新時代に対応した高等学校改革」では、(1)学科の在り方、(2)高等学校の教育内容、教科書の在り方、(3)定時制・通信制課程の在り方、(4)教師の養成・研修・免許の在り方、(5)地域や大学等との連携の在り方、(6)中高・高大の接続、(7)特別な配慮が必要な生徒への対応、(8)少子化への対応―の八つ分野に関して54の提言をしている。このうち学科の在り方、高校の普通科に関しては、生徒の能力や興味・関心等を踏まえた学びの提供という観点で課題がある場合があり、一斉的・画一的な学びは生徒の学習意欲に悪影響を及ぼすと指摘、国に対して普通科が選択できる類型を提示すること、また類型の選択状況や実施状況等の把握に努めることなど政策的誘導を求めている。
 具体的な類型については、キャリアデザイン力の育成重視、リーダーとしての素養育成重視、イノベーター等としての素養育成重視、地域課題の解決等を通じて体験と実践を伴った探求的な学びを例示。また専門学科に関しては専門の免許を有する教師の確保が課題のため専門性の高い社会人等を教師等として学校教育に参画させることを求めている。実践的職業資格の取得等に資する教育を行う高校専攻科については実態を踏まえた支援の在り方の検討を提言している。定時制・通信制課程の在り方では、「高校生のための学びの基礎診断」の活用促進などによる質の確保・向上、特に広域通信制高校に関しては第三者評価の在り方の実証的研究結果等を踏まえたさらなる質の確保・向上の取り組みを推進するよう求めている。
 中高・高大の接続では、学部・学科の特性を踏まえつつ、文系・理系に偏った入試からの脱却を目指して、入学者選抜の在り方を見直すこと、高校卒業時の就職に際して、「1人1社制」(1人の生徒が一定期間に応募できる企業を1社とする)の再検討も求めている。


 


高校普通科の類型化には懸念も


政府のさまざまな審議会等が時を同じくして高校普通科について類型化など抜本的な見直しの必要性を打ち上げているが、日本私立中学高等学校連合会(吉田晋会長=富士見丘中学高校理事長・校長)は2月21日の教育再生実行会議の中でこの問題の見解を表明した。
 その中では、「グローバル化社会、Society5・0といわれる未来社会は、先の見えない、見通せない時代。だからこそ汎用的な資質・能力に基づいた教育が必要であり、それを推進しようということで、新学習指導要領が公示され、高校でもやっと幅広い資質・能力ベースの教育が始まろうとしている。普通科のカリキュラムの細分化とか専門の方向性は、ベクトルが逆方法ではないか」とし、「むしろ学習指導要領における教育課程の大綱化などを図り、教科横断的な学びができるようにすることが必要ではないか」と訴えた。
 また同日、意見を述べた藤田晃之・筑波大学教授も高校教育を類型化することについては、「AIやIoTが進展する中で特定の狭い職業分野を特化して身に付けて卒業し、その後、その職業技能がどれだけ持ちこたえるのか」と疑問を呈し、「極めて強く、大きく、速い社会の状況変化の中では、そういった変化に対応する力を育成していくことが高校・大学教育の中では求められる」との考えを明らかにしている。普通科の中でコースを設け専門的教育を行っている例もあり、私学では建学の精神等が色濃く特色を打ち出している学校も少なくない。普通科と一口に言っても中身は多様だ。


 

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