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記事2019年5月3日 2476号 (1面) 
新しい時代の学校の在り方特別部会設置
中教審初等中等教育分科会開く
教員養成部会等と横断的に議論
初中分科会長は荒瀬克己氏

第10期中央教育審議会の初等中等教育分科会(分科会長=荒瀬克己・大谷大学文学部教授、以下、初中分科会と表記)は5月8日、文部科学省内で第122回会議を開き、(1)学校における働き方改革の取り組み状況と、(2)新しい時代の初等中等教育の在り方について審議した。その中では4月17日の中教審総会で柴山文科大臣から諮問された「新しい時代の初等中等教育の在り方」に関して、新たに「新しい時代の学校の在り方特別部会」を初中分科会の下に設置(同特別部会の下に高校改革ワーキンググループも設置)し、中心となって審議することを決めた。諮問で検討を求められた事項には高校の普通科改革やSTEAM教育の推進など教育内容にかかわる事項、また、これからの時代の教師の在り方があることから、同特別部会の審議状況を初中分科会に報告、同分科会の審議を経て常設の「教育課程部会」、「教員養成部会」に専門的審議を要請し、その審議結果を再び初中分科会を経由して同特別部会に戻すなど、横断的な議論を行うことも決めた。


諮問された「新しい時代の初等中等教育の在り方」に関しては、基本的に2020(令和2)年末までに審議結果を取りまとめる予定だが、審議の進んだ事項に関してはそれ以前に取りまとめること、また事項によっては2020年末を越えて取りまとめることも了承された。第10期の初中分科会は2月20日に第121回会議を非公開で開き、荒瀬克己委員を分科会長に選任、分科会長代理には天笠茂委員(千葉大学特任教授)と加治佐哲也委員(兵庫教育大学長)が荒瀬分科会長により指名された。  この日は、新たに任命された臨時委員が参加しての初の分科会。そのため委員12人、臨時委員23人、計35人の委員が紹介された。  はじめに、合田哲雄財務課長が学校における働き方改革の取り組み状況として、文科省としては何が学校や教師の役割か明確にメッセージを発出、また学校に新たに業務を求める場合、スクラップ・アンド・ビルドの徹底を図り、教育委員会にもそうした仕分けを行い、校長にも自らの権限と責任で本来は家庭や地域社会が担うべき業務を大胆に削減することを求めていること、また働き方改革の進展状況を市町村ごとに把握・公表することで取り組みを促し、教員勤務実態調査(平成28年度)と比較できる形で3年後を目途に勤務実態調査を行う方針などを報告。  さらに現行の教職調整額4%については、在校時間縮減の施策の総合的な実施をまず優先し、必要に応じて中長期的な課題として検討すること、教師の労働環境については、給特法や教育公務員特例法、地方行政の組織及び運営に関する法律といった制度的な枠組みを含め、必要に応じて中長期的に検討する、としている。  新しい時代の初等中等教育の在り方に関しては、柴山大臣から審議を求められた広範多岐にわたる事項や、諮問に至った理由(時代の変化、働き方改革、児童・生徒の減少、小学校教員の採用選考試験の倍率の低下、外国人児童生徒の急増等)等が説明された。  その後、委員による意見交換が行われ、働き方改革に関しては、今年1月に文科省が策定した「公立学校の教師の勤務時間の上限に関するガイドライン」の私立学校での取り扱いを尋ねる質問があったが、文科省は「ガイドラインは公立学校に向けたもの。私立学校には労働基準法がストレートに適用され、基本的法制的な位置付けが公立学校と違う」と説明した。  関連して吉田晋委員(日本私立中学高等学校連合会長)は「基本的な法制度は公立と私立は異なるが、実質、学校として基本的には同じ状況で私立学校の多くが公立学校に準じた対応を取っている。しかし子供を中心に考えたとき、公立の働き方改革をそのまま移すことはできない。部活動の試合等は全く変わっていない。総合的な変化がなければできない部分はある。総合的に判断していただきたい」と語った。  そのほか委員からは、「借りられる力はどんどん借り、脱・自前主義が大事」、「勤務時間の時短ばかりが成果目標となる中で若手教員には専門性を身に付けるためには時間が問題ではないという気持ちもある。仕事の持ち帰りを許容することも考えてほしい」といった意見が聞かれた。  一方、新しい時代の初等中等教育の在り方に関しては、「人口減少が進む中で地域を担っていける人材の育成は重要。そうした意味で高校教育をしっかり議論してほしい」、「高校教育の在り方は大学入試に規定されることが大きい。大学入試の見直しについても避けずに議論してほしい」、「高校の普通科改革で細分化することは違うと思う。生徒は自分のやりたいことを見つけられずにいる。多様なプログラム作りが大事だ」などの意見が出された。


5月8日の中教審初等中等教育分科会

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