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記事2020年4月23日 2508号 (1面) 
文部科学省、大学入試のあり方検討会議(第6回)開催
ウェブ会議方式で実施、配信
5月14日から団体等意見聴取


 これまでの大学入試センター試験に代わり来年1月から新しく実施される「大学入学共通テスト」で民間の資格・検定試験を活用して英語4技能を評価することや、「国語」「数学」での記述式問題の導入が見送りとなったのを受けて、文部科学省が今年1月に設置した、「大学入試のあり方に関する検討会議」(三島良直座長=東京工業大学名誉教授・前学長)の第6回会議が4月23日、ウェブ会議の形式で開かれ、ユーチューブを通じてライブ配信された。


 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため傍聴者や取材陣はもとより、会議委員や文科省事務方(説明者)も自宅や学校等から参加する形で、文科省内の会場には萩生田光一大臣と三島座長等が詰める程度。 


 第6回会議では、3人の委員による意見発表等が行われた。委員の意見発表は今回で全委員が終了。次回の第7回会議(5月14日開催)からは4、5回程度にわたって、外部有識者・団体からのヒアリングが行われる。 


 また、委員による意見発表等に先立って、文科省事務方から来年度大学入学者選抜における新型コロナウイルス感染症への対応状況や、外部有識者・団体からのヒアリング案、ヒアリング聴取項目案、大学入学者選抜における英語4技能評価および記述式問題の実態調査案について説明があり(※配信側の技術的な問題で一部音声が聞き取れない状態となった)、ヒアリングや実態調査が実施されることになった。 


 このうち外部有識者・団体からのヒアリングについては、第5回会議で委員から出された意見を考慮してヒアリング実施回数が3回程度から4〜5回に増加、また前回、数が多いため委員による意見聴取ではなく文科省事務方がヒアリングし結果を報告するとしていた、民間資格・検定試験実施団体、受験産業からの意見聴取については、恣意的な懸念が持たれるとの委員の意見を反映して、そうした方式はとらないことになった。


 さらに大学入学者選抜における英語4技能評価および記述式問題の実態調査については、通常の倍、2カ月間程度と余裕をもって調査すること、調査項目例としては、▽基本データ(入試形態、募集人員、志願者数、合格者数、入学者数等)、▽センター試験の活用(資格試験的利用の有無等)、▽個別学力検査(センター・個別学力検査の得点割合等)、▽英語資格・検定試験の活用(出願資格か否か、スコアの標準化方法等、成績の有効期限等)、▽記述式出題(全ての教科科目等を対象に、枝問数ベースで解答形式の分類ごとに出題状況を把握)などが示されたが、具体的な調査項目については一部委員も加わって三島座長、益戸正樹座長代理が中心となって作成することになった。


 実態調査に関して私大関係の委員から実態調査について最終的に匿名として自由に記載できる欄を設けてほしい、といった意見も聞かれた。


 この日、意見発表を行ったのは、清水美憲・筑波大学大学院教育研究科長・教授、益戸正樹・株式会社肥後銀行社外取締役、渡部良典・上智大学言語科学研究科教授の3人。このほか、同会議にオブザーバーとして参加している独立行政法人大学入試センターの山本廣基理事長がセンター試験と大学入試センターの役割や大学入学共通テストの作題方針等を改めて説明した。


 このうち清水氏は大学入学共通テスト・記述式問題(数学)の導入をめぐる諸課題:試行調査からみた制度設計上の限界と題して意見発表を行い、平成30年試行調査の結果を見る限り、採点システムおよび受験者の自己採点と実際の得点との一致度に課題が生じており、全体的な制度設計の変更(例えば入試時期、採点・検収期間の十分な確保、CBT)が伴わない現状では困難と思われる、などと指摘した。


 また益戸氏は、「社会との接続」を意識して高大接続を再定義する必要性を訴え、アカデミアだけの議論の危険性を訴えた。またさまざま制約から条件付きとなっている記述式問題に関する問題はすぐに解決することは困難で、大学の個別試験で出題することを促進することが現実的選択肢とした。渡部氏は、CEFRによる各テストの配列換算表は信頼性が低く、各英語資格・検定試験の得点はCan doで記載されている能力ができることを保証しないなどとし、民間試験はセンター試験・共通テストの替わりにはならないと結論付けた。英語の検定試験によって日本の英語力の順位は変わり、そもそも学校教育が理由で日本人は英語が話せないというエビデンスは存在するのか、との疑問を語った。


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