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記事2020年4月23日 2508号 (1面) 
文部科学省、大学入試のあり方検討会議(第5回)開催
4人の委員が意見発表
現高3生の救済求める声も

 文部科学省の「大学入試のあり方に関する検討会議」(座長=三島良直・東京工業大学名誉教授・前学長)は4月14日、第5回会議をウェブ会議方式で開催した。文科省会議室の萩生田光一大臣、三島座長等と、学校や自宅から会議に参加した委員を、ネットワークをつないで意見発表や意見交換が行われた。この日の会議では4人の委員が意見発表を行い、第7回会議から開始する外部有識者・団体からのヒアリングの進め方について話し合った。

 この日、意見発表したのは島田康行・筑波大学人文社会系教授、荒瀬克己・関西国際大学基盤教育機構教授、斎木尚子・東京大学公共政策大学院客員教授、末富芳・日本大学文理学部教授。このうち島田委員は大学で広く行われている初年次教育には高校で学ぶ内容が組み込まれているものが多く、論じる力の育成は高校・大学双方で行うべきであること、国立大学の大部分で80字以上の記述式問題が課されており、国語や小論文、総合問題だけに限定されるものではないこと、記述式問題の採点でミスをゼロにすることは困難で、ミスが起きた際の救済がはっきりしなかったことなど共通テスト「国語」での記述式問題については課題があったことを指摘。また荒瀬委員は高大接続改革の議論が次々と会議が開かれ、時間がない中で会議体のミッションが本質的なものではなく、具体的なものとなり、合教科的な問題や共通テストの複数回実施など改革案が消え、最後に英語の外部検定、国語・数学の記述式問題が残ったこと、2020年度から共通テストを行うということで十分な議論を行えなかった悔しさを口にした。

 斎木委員は高校や高校生の多様化を踏まえた議論や、学年が進むにつれて大学入試をにらんで高校で英語で英語を教える授業や理科実験の授業が減少しているという、大学入試の高校教育への影響を無視してはいけないなどとし、英語民間検定のスコアを全受験生に求めるような制度設計や記述式問題の共通テストへの導入には課題があると訴えた。

 末富委員は今回と同様の混乱を繰り返さないための原理・原則の再構築(大学入試における公平・公正の確保、透明性の向上)が不可欠で諸外国と比べあまりに貧弱なエビデンスやリサーチ、専門家関与の体制の改善が必要などと訴えた。  こうした委員の意見発表にそのほかの委員からは、「2024年度からの新しいテストに完全に移行するまでは現状のまま行って、それまでに大学入試センターで英語の4技能試験ができるのか、できないのか。記述式問題の採点についてもセンターがしっかりできるのか検証すればいい」「(荒瀬委員の意見発表で)入試に力を持たせ高校教育に影響を与えることを前提に議論が進められたことは健全ではない」などの意見が出された。

 第7回会議から始まる外部有識者・団体からのヒアリングに関しては、文科省事務局からヒアリング対象者を選定するための10の視点(大学入試政策、テスト理論、英語4技能の育成・評価、海外の大学入試、地方行政、高校生・大学生の意見、民間資格・検定試験実施団体、受験産業の意見等)や、5月中旬より3回程度に分けて実施、具体的な聴取項目を対象に提示すること、民間資格・検定試験実施団体、受験産業については数が多いことから、事務局ヒアリングを行い、結果を報告することなどが提案された。

 ヒアリング聴取項目案も同時に示され、共通項目として、大学入試と高校教育や大学教育との役割分担(社会との接続も念頭に)、大学入試が高校教育に与えている影響、大学入学共通テストと各大学の個別入試との役割分担など6項目をあげている。

 また個別項目として民間英語資格・検定試験の活用の在り方、個別入試への国の支援の在り方、思考力・判断力・表現力の育成・評価、障害者への配慮、諸外国で参考となる事例等を挙げている。

 こうしたヒアリングの進め方については、委員から地方の高校に勤務する教員の意見を聞いてみたい」「受験産業等の意見を文科省事務局が意見をまとめることについては恣意的な印象を受けざるを得ない」などの意見が聞かれた。

 また「現在の新型コロナで学校での勉強やその他の行事や大会がなくなっている。この子たちを大学入試でどう救済するのか、文科省の見解を出してほしい」といった切実な要請もあった。
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