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記事2024年3月3日 2639号 (1面) 
第114回法科大学院等特別委員会開く
企業法務の現状など聴取
求められる法曹の人材像、法学未修者教育等議論

 中央教育審議会大学分科会の法科大学院等特別委員会(座長=松下淳一・東京大学大学院法学政治学研究科教授)は2月28日、WEB会議形式で第114回委員会を開催した=写真下=。この日の議題は、(1)求められる法曹の人材像と今後の法科大学院教育、(2)法学未修者教育、(3)令和5年度司法試験予備試験口述試験の結果等。


このうち、この日のメーン議題である(1)に関しては、1400社以上が加盟する日本最大の企業法務会員組織の経営法友会の高野雄市代表幹事(三井物産常務執行役員法務部長)から、「企業法務の役割と求められる人材」について実情を聴取、質疑応答を行ったほか、会議後半は文部科学省から同特別委員会が検討を続けている法学未修者教育の在り方に関して、論点案、法学未修者選抜に関する調査結果等が示され、本庄武・一橋大学法科大学院長から「一橋大学法科大学院未修者教育の現状と課題」に関する報告を受けた。


議題の(1)に関しては、経営法友会の高野代表幹事が、企業を取り巻く環境が変化・複雑化し、法務部に求められる機能が拡大、サステナビリティ観点でのリーガルリスク(気候変動・環境対応など)、地政学的リーガルリスク(経済安全保障関連法制など)、事業環境変化によるリーガルリスク(事業再建・再編、新たな収益の柱の検討など)、デジタル時代のリーガルリスク(サイバーリスク、データ管理など)などの分野に活動の場が広がり、三井物産の法務部では学部卒、法科大学院卒、司法修習後の新卒入社、弁護士・企業法務人材のキャリア入社などさまざま人が働き、女性比率も高く、子育て世代が家庭とのバランスを取りながら力を発揮できる環境を整えている、などと説明。その上で法科大学院修了者に関しては企業側の期待の高まりを受け、企業法務が活躍の場の有力な選択肢であることをもっと周知する必要性を指摘。また在学中に司法試験に合格し、法科大学院卒入社で働きながら入社後に司法修習を受ける、あるいは法科大学院卒で入社し企業で働きながら司法試験合格を目指す、法科大学院での知識をもって企業に進み、当面資格は取らない、といった選択肢も考えられることなどを紹介した。


こうした発表に委員からは、「企業法務で働く人のリカレント教育を法科大学院が担うことができる」「企業法務から弁護士事務所への道があってもいい」「経営法友会が企業法務関係者との連携の窓口となってほしい」などの意見が聞かれた。


議題の(2)の法学未修者教育に関する論点案では、法学未修者の入学者選抜の取り組みや工夫、課題、課題に対応するための方策、法学未修者で在学中受験を選択する者、しない者への対応、配慮等を列挙。このうち法学未修者の入学者選抜では法学知識・その運用能力を試験することなく選抜するため、法科大学院で教育を受ける上で求められる適性・能力を見極めるのが難しいと指摘した法科大学院が数多くあったことなどが調査結果で明らかになっている。


一橋大学法科大学院での未修者教育に関しては、特色ある授業(法律文書作成ゼミなど)、1年次の担任制度、独自の進級試験、学修アドバイザーゼミ、修了生による支援、再チャレンジ(再度司法試験に挑戦する)修了生の支援等で、平成17年度〜令和4年度の累計司法試験合格率が83・5%と高いことなどを報告した。特別委の委員からは「未修者教育に関してもっと大学間の協力で質を高めていくことが必要」などの意見が聞かれた。



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