第12期第1回法科大学院等特別委員会

来年の4月で20年、更に充実等検討 法学未修者教育も課題 法科大学院

文部科学省の中央教育審議会大学分科会法科大学院等特別委員会(座長=松下淳一・東京大学大学院法学政治学研究科教授)は6月23日、オンラインで第111回委員会を開催した。同回は、中教審が今年3月に第12期(任期2年)となって初の委員会。

平成16年に法科大学院が開設されて来年4月で20年を迎え、また令和元年度の法改正により、「大学3年で早期卒業+法科大学院既修者コースで2年学修」(いわゆる3プラス2)が始まって以降、今年7月にその既修者コースでの在学中の司法試験受験が始まるなど、法科大学院は、厳しい時代を経て定員充足率や司法試験合格率の改善など安定感を増し新しいステージの段階となったことから、この間の成果や残された課題を検証、より良い法科大学院制度や、前期(第11期)でも審議した、多様なバックグラウンド(社会人や法学部以外の卒業者など)を持つ法曹養成のための、法学未修者教育の在り方についても引き続き大きな課題としている。

6月23日の法科大学院等特別委員会では、初めに文科省から、この約20年の歴史を振り返りつつ法科大学院教育の動向が詳細に説明された。

法科大学院制度は平成13年、内閣に設置された司法制度改革審議会が、司法試験という「点」のみによる選抜ではなく、法科大学院を中核とした、法学教育、司法試験、司法修習を有機的に連携させた「プロセス」としての法曹養成制度を整備すべきだなどと提言(そのほか知的財産高等裁判所の設置などを提案)、その後、文科省の中教審での審議、法整備等を経て平成16年に法科大学院が開設された。

新しくできた制度や司法試験合格者数の増加への期待を背景に、当初、法科大学院が次々創設され、多くの志願者を集めたが、その後の合格率の低迷や公的支援の見直しなどにより入学定員充足率が59・6%(平成26年度)にまで低下、それ以降、法科大学院の廃止が増加、教育の改善等により司法試験の合格率が上昇。令和5年度の入学定員充足率は89・8%となり、平成30年度を境に志願者数の回復基調が令和5年度まで続いている。

このように法科大学院は混乱期を経て落ち着きを見せ始めているが、地方自治体の法曹ニーズの高まりやデジタルへの対応、企業の法務人材ニーズなど現在の社会的要請へのキャッチアップ、また法科大学院の教員・研究者養成、法学未修者教育に関しては例えば理工系など他の領域の知見を有する法曹養成などが課題とされている。

こうした状況の中で、第12期法科大学院等特別委員会では、これまでの歩みを俯瞰して、その成果や残された課題を整理した上で、法科大学院教育の更なる改善・充実に向けて必要となる方策を包括的に審議・提案していくこと、連携法曹基礎課程(法曹コース)、特別選抜の状況、令和5年から実施される在学中の司法試験受験等の把握・分析、法学未修者教育の充実、法科大学院教育を担う教員(研究者)の養成・確保、複数の法科大学院の連携、法科大学院や法曹コースの魅力発信、法科大学院教育と司法試験、司法修習との一層の有機的連携策等の検討を進める方針だ。また法曹コースを置く大学、特に法科大学院を設置していない大学の学部段階の教育にどのような影響が現れているか、また司法試験の在学中受験について選択する学生と選択しない学生が混在する中で教育課程や進路指導等にどのような工夫が行われているか、在学中受験の影響も分析、課題が見られる場合には改善策等を検討することにしている。

文科省からの一連の説明に対して、各委員からは、研究者養成の危機的な状況を訴える意見や、企業関係者からは企業の法務部は人材不足と報告する意見、法務省からは生成AIや外国人、ダイバーシティーなどこれまでにないニーズの変化に的確に鋭敏に対応する必要があることなどが指摘された。また松下座長からは「未修者教育のまだ隠れたグッドプラクティスがあるのではないか」との発言もあった。