文科省、生成AIでガイドライン

懸念やリスク指摘の一方で有効な活用例など例示

文部科学省は7月4日、初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドラインを策定したことを国公私立学校等に通知した。また7月13日には大学・高専における生成AIの教学面の取り扱いについて、国公私立大学等に事務連絡している。このうちガイドラインは、学校の夏休みを前に生成AIの特性や課題等を理解した上で活用することが重要なため、生成AIの概要、生成AIの教育利用の方向性(適切でないと考えられる例、活用が考えられる例)、長期休業中の課題等(文章作成に関わるもの)に対する考え、その他の重要な留意点などをまとめている。

今回のガイドラインは生成AIが飛躍的なスピードで進展しており、まだ社会に登場して間もない黎明期にあり、子供がAIの回答を鵜呑みにするなど懸念も指摘されていることから、児童生徒、教師に向け国として、現時点での考え方を示したもの。今年6月末日時点での知見を基に暫定的にまとめたもので、一律に禁止や義務付けを行う性格のものではない、としていて、今後、機動的に改訂を行うとも付け加えている。

この生成AIについては、膨大な量の情報から深層学習によって構築した大規模言語モデルに基づき、ある単語や文章の次に来る単語や文章を推測し、「統計的にそれらしい応答を」生成するもの。AIに自我はなく、人間が発明した道具であることを十分に認識する必要があるとしている。

その上で生成AIの活用に関しては、生成AI自体の性質やメリット・デメリットに関する学習を十分に行っていないなど、情報モラルを含む情報活用能力が十分育成されていない段階で自由に使わせること、各種コンクールの作品やリポート・小論文などについて、生成AIによる生成物をそのまま自己の成果物として応募・提出すること、教師の代わりに安易に生成AIから生徒に対し回答させること、定期考査や小テストなどで子供たちに使わせること、人間的な触れ合いの中で行うべき教育指導を実施せず安易に生成AIに相談させることなどは適切ではない例としている。

一方、活用例としては、教師が生成AIの生成する誤りを含む回答を教材として使用し、その性質や限界等を生徒に気付かせること、生徒同士で一定の議論やまとめをした上で、足りない視点を見つけ議論を深める目的で活用させること、英会話の相手として活用すること、発展的学習として生成AIを用いた高度なプログラミングを行わせることなどを挙げている。

また長期休業中の課題等(文章作成に関わるもの)に関しては、学習評価に反映する場合は、例えばクラス全体やグループ単位で口頭発表の機会を設け、まとめた内容を十分理解し自分のものにしているかを確認する等の工夫や、最終的な成果物についてAIとのやり取りの過程を参考資料として添付させることや、引用・参考文献などを明示させることも一案としている。AIを用いた際には生成ツールの名称、入力した指示文(プロンプト)や応答、日付などを明記させることが考えられるとしている。

また教員の校務での活用例としては教材のたたき台、練習問題やテスト問題のたたき台、報告書のたたき台、教員研修資料やHP等広報資料の構成等のたたき台、校外学習等の行程作成のたたき台、保護者に向けたお知らせ文書のたたき台、外国籍の保護者へのお知らせ文書の翻訳のたたき台などを挙げている。

このほか個人情報やプライバシーに関する情報の保護の観点等についても重要な留意点としている。個人情報やプライバシーに関する情報が生成AIの機械学習に利用されることがあり、生成AIから回答として出力されるリスクがある。

一方、大学・高専における生成AIの教学面の取り扱いについては、既に各大学で策定されている指針等の内容や有識者の見解等を踏まえ、想定される場面例や留意すべき観点等について取りまとめたもの。その中では生成AIを利活用することが有効と想定される場面としては、ブレインストーミング、論点の洗い出し、情報収集、文章校正、翻訳やプログラミング補助等の学生による主体的な学びの補助・支援などが考えられるとしている。また留意すべき観点については生成AIの出力をそのまま用いるなど学生自らの手によらずにリポート等の成果物を作成することは一般に不適切と考えられる、と指摘している。

このほか生成AIの技術的限界(生成物の内容に虚偽が含まれている可能性)、機密情報や個人情報の流出・漏洩等の可能性、著作権に関する留意点等を指摘している。