第7回義務教育在り方WGを開催
義務教育の境界線など議論
2人の学識経験者から意見聴取
中央教育審議会初等中等教育分科会の個別最適な学びと協働的な学びの一体的な充実に向けた学校教育の在り方に関する特別部会の下に設置されている「義務教育の在り方ワーキンググループ」(以下、WGと表記)は7月18日、対面とオンラインを併用して第7回WGを開催した。今回は第12期中教審が発足して以降、初のWG。冒頭、文部科学省から前期に続いて奈須正裕・上智大学総合人間科学部教授が主査を務めることが報告され、また今年3月に同WGがまとめた「論点整理」で第1の論点の「義務教育の意義」の中から「子供たちに必要な資質・能力と学校の果たす役割」に関して2人の有識者から意見を聴取した。
意見発表したのは、1人目が木村元・青山学院大学特任教授・一橋大学名誉教授。「日本の学校の展開と義務教育」の演題で、わが国の義務教育の位置付けの変遷等を説明した。もう一人は伏木久始・信州大学教授で1年間のフィンランドでの研究生活を経て、「日本の教育を国際的視野から問い直す―フィンランドの教育に着目して―」の演題で発表した。
このうち木村教授は義務教育を学校の制度的枠組みを固く保つことで教育を受ける権利を保証するシステムの調整という側面から、公教育への教育産業の乗り入れ、福祉領域との交錯、教育課程の柔軟性(不登校特例校など)、私立広域通信制高校(サポート校)、夜間中学など中核の学校の境界線の拡大や学校の周辺・周縁の活性化などがもたらされていること、政府内でも経済産業省等は個人個人に力点を置いた政策を提唱しているが、義務教育の枠組みの議論をもう少し真剣にした方がいいこと、その際、修得の視点が重要なこと、個人個人の教育を進めていくと格差が拡大していくが、学校教育は格差を縮める調整役を果たしているとし、義務教育の境界線をしっかりと捉える重要性を指摘した。また無限定にすると、教員はもともと境界線を越えて教育を行っているので、教育はどんどん膨らんでいくとも語った。
一方、伏木教授は教員に広く裁量権が認められたフィンランドの教育の状況を説明した上で、国際比較から思うわが国の学校教育の課題について、進学や就職先への選抜装置として機能し過ぎていること、教育の勤務時間の短縮と心理的安定性の確保、教員の個性的な教育実践に対する寛容さと教員の裁量拡大、未来への対応よりも過去の伝統を重視する風土の問い直しなどの必要性を指摘、子供の選択の重要性を強調した。また日本でも生かされるフィンランドの教育として、「わかる人は?」ではなく「あなたはどう思うの?」と問う教師、どんなに幼くても社会の一員として扱うことなどを挙げた。