近畿地区の私立中高校保護者団体が文科相に意見提出
大阪府知事の授業料無償化制度案に疑問
“学校選ぶ自由失われる”
大阪府(吉村洋文知事)が今年5月に打ち出した高等学校等授業料無償化制度の素案が、キャップ(標準授業料:現在は60万円、上限額)を超えて授業料を徴収する私立高校については学校に負担を求めるとしていることなどに関して、近畿地区私立中学高等学校保護者会連合会連絡協議会の松井次郎会長と大阪私立中学校高等学校保護者会連合会の岸本圭司会長は、大阪私立中学校高等学校連合会の平岡宏一、草島葉子、深川博之各副会長らと共に、7月27日、文部科学省に永岡桂子大臣を訪ね、「令和6年度以降の『高等学校の授業料完全無償化』に対する大阪私立中学校高等学校保護者会連合会の意見書」を手渡し、保護者や私立学校の置かれている厳しい情勢への理解等を要請した。
この日、文科大臣に提出した意見書では、今回の素案では大阪府が標準授業料という名のキャップを被せて、一方的に授業料を“値切る”ことで今まで通り特色ある教育(例えば熱心な進学指導、親身な就職支援、クラブ活動等)を受けることができなくなる、などと訴えた上で、(1)特色ある教育が損なわれることなく自由に選ぶことが出来るよう、学校が必要な経費を十分に確保できる制度とする。(2)なぜ60万円が上限なのか。公立の教育経費は生徒一人当たり兵庫県で117万円、大阪では108万円。公立は情報端末を公費で整備しているが、私学では保護者が購入あるいはリースするなどしている。
このように必要な経費でも授業料に含まれないものもあり、単純に授業料の平均とすることは納得できない。(3)大阪府の私立学校を助成する経常費助成はなぜ全国46位なのか。大阪府は授業料支援と経常費助成を足して全国2位としているが、両者は全く違うもので合算は理解できない。他府県の子供たちの教育環境と同じになるよう、同等の補助を願いたい―などを大阪府に進言したことへの文科大臣の理解を要請している。
その後、大阪中高連は7月31日に大阪府の山口信彦副知事と懇談。
8月2日には吉村知事が定例記者会見の中で、記者の「大阪維新の会大阪府議会議員団がさきほど、高校授業料無償化制度に関する緊急要望を提出したことへの受け止めを聞かせてほしい」との質問に、「与党会派として正式に私学団体の皆さんと面談された上での要望だと思っているので重く受け止めている。要望の趣旨は重要なものと受け止めて8月中に成案化していきたい。教育の質を下げないようにする、今の制度よりも私学の負担が増えないようにする、といった制度案を作っていきたい。府としてはこれまで私学の皆さんと協議は続けている。期日は決まっていないが、私学団体の代表の皆さんと会って話をしたいと思っている」などと答えている。大阪府議団の要望事項は以下の2点。(1)所得制限のない完全無償化を早期に実現するため、制度の具体化にあたっては、各私立高校等の意見をよく聴いた上で、教育の質の低下を来さないことはもとより、さらに向上できるよう特段の配慮を行うこと(2)現在、就学支援推進校となっている学校が、引き続き府の無償化制度に参加できるように努めること。