教師を取り巻く環境整備について緊急的に取り組むべき施策

中教審教師確保特別部会が提言

働き方改革等の実効性引き上げへ

中央教育審議会初等中等教育分科会の「質の高い教師の確保特別部会」(部会長=貞広斎子・千葉大学教育学部教授)は8月28日、文部科学省の講堂(WEB会議併用)で第3回特別部会を開き「教師を取り巻く環境整備について緊急的に取り組むべき施策~教師の専門性の向上と持続可能な教育環境の構築を目指して~」と題する提言をまとめ、貞広部会長がその場で永岡桂子・文部科学大臣(当時)に提出した。

この提言は、教育の質の向上のために学校での働き方改革等に関してできることから直ちに行うとの考え方から、国、都道府県、市町村、各学校が緊急的に取り組むべき施策をまとめたもので、A4判にして9ページと簡潔に整理された提言。柱は、(1)学校・教師が担う業務の適正化の一層の推進、(2)学校における働き方改革の実効性の向上等、(3)持続可能な勤務環境整備等の支援の充実。

提言で求めた具体策は、(1)に関しては、「学校・教師が担う業務に係る3分類」に関する好事例を、国、都道府県、市町村、各学校の主体ごとに横展開すること、また標準授業時数を大幅に上回っている学校については、見直すことを前提に点検を行い、指導体制に見合った計画に見直すこと、学校行事の精選・重点化、準備の簡素化・省力化、ICTの活用による校務の効率化の推進の実施を求めている。「学校・教師が担う業務に係る3分類」とは、学校の業務を「基本的には学校以外が担うべき業務」(登下校に関する対応など)、「学校の業務だが、必ずしも教師が担う必要のない業務」(部活動など)、「教師の業務だが、負担軽減が可能な業務」(授業準備、進路指導等)に分類したもの。

(2)に関しては、保護者等からの過剰な苦情等に対して教育委員会等の行政による支援体制を構築すること、令和元年の給特法改正を踏まえた勤務時間の上限等を定めた指針の実効性の向上、学校における取り組み状況の見える化に向けた基盤づくりを求め、(3)に関しては小学校高学年の教科担任制の強化、教員業務支援員の全小・中学校への配置をはじめ、副校長・教頭マネジメント支援員、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカー、学習指導員、部活動指導員などの配置充実、主任手当や管理職手当の額を速やかに改善すること、教育委員会と大学・民間企業との連携・協働による教職の魅力発信、大学と教育委員会による教員養成課程の見直しや地域枠の設定、奨学金の返還支援に係る速やかな検討を推進するよう求めている。

提言を受け取った永岡大臣は提言内容を令和6年度文科省予算概算要求に反映する考えを述べている。また8月29日には永岡文科大臣がメッセージを公表、国が先頭に立って改革を進める考えを強調、学校・教育委員会にはできることは直ちに着手するよう求め、保護者・地域住民には理解と支援を要請している。9月8日には同省の初等中等教育局長、総合教育政策局長の連名で各都道府県知事や各教育委員会の教育長に宛て提言を踏まえた取り組みの徹底等を要請する通知を発出している。基本的には公立学校を念頭に置いた施策。