今後の医学教育の在り方に関する検討会が中間とりまとめ公表

大学病院の医学研究・教育充実強化策など検討

教員(医師)の適切な処遇改善

文部科学省の「今後の医学教育の在り方に関する検討会」(座長=永井良三・自治医科大学学長)は9月11日、第5回会議を対面とオンラインのハイブリッド形式で開き、審議の中間取りまとめ案について審議し基本的に了承した。9月29日には「中間取りまとめ」として同省から公表された。

同検討会は、2024年4月より医師の働き方改革の一環として時間外労働規制が始まるのに合わせて、大学等教員の中で保険分野(特に医学教育)の医師の研究・教育時間がますます減少する恐れがあるため、診療時間等の効率化や研究・教育支援体制の強化、博士号の魅力向上、大学病院に勤務する教員(医師)の適切な処遇により地域医療提供体制を確保しつつ、わが国の医学・医療の発展を支える大学病院の医学研究・教育の充実・強化策の検討を今年5月26日の初会合以来続けてきた。

5回の審議を経て策定された「中間取りまとめ」は、参考資料を除いて全体で19ページ。(1)大学病院改革、(大学病院の役割と機能、大学病院の現状と課題、大学病院改革に向けた方策)、(2)医学部及び大学院における教育・研究の充実(医学部及び大学院における教育・研究の現状と課題、医学部及び大学院における教育・研究の充実に向けた方策)、(3)引き続き検討すべき事項、という構成。

このうち(1)の大学病院の役割と機能については、臨床教育や卒後の臨床・専門研修等により専門性の高い医師を養成、研究分野では難治性疾患の原因究明、新しい診断・治療法、新薬の開発など質の高い臨床研究や治験でわが国の医学研究を牽引し、診療では高度で専門的な医療の提供や医師派遣など地域の医療体制を維持する上で欠かせない中核的医療機関となっていることを指摘。そうした役割・機能がある一方、診療規模の拡大や経常利益率の低減のため増収減益の傾向が顕著となっており、若手医師を中心に教育・研究に十分な時間を確保できない中で、医師の時間外・休日労働の上限規制の適用が2024年度からスタートすること、働き方改革と共に勤務環境や設備等を整備しなければ大学病院は医師不足となり、地域医療も基盤を失うことが懸念されている、と記述。

こうした状況の中で、大学病院に関しては、地域の医療機関との役割分担・機能分化、民間企業を含めた診療材料等の共同交渉等による支出削減、医療DXの推進等による業務効率化、医師以外の医療関係職種との連携等による実習指導体制の整備、看護師等の医療関係職種が専門性を発揮できるようなタスク・シフト/シェアの推進(特定行為研修の一部を看護学生が修得する仕組みの検討)、組織としての研究支援、老朽化した医療機器の更新、分野横断的な研究を推進できる環境整備などを提言している。

また医学部・大学院における教育・研究の充実に関しては、教員の指導実績を適切に評価するため、「臨床実習指導医(仮)」の称号の付与の検討、専門研修と両立する博士課程のプログラムの充実、研究者となる医師養成を目的とする研究医枠の教育プログラムが充実するような制度改善(キャリアパス支援、留学機会の提供等)、医学分野以外の研究者が医師とともに分野横断的な研究を推進できる環境の整備、各大学における研究活性化のための取り組みの支援(研究エフォートの確保、基金造成等による研究費支援等を提言している。

第5回検討会の中では、小川彰委員(日本私立医科大学協会会長、岩手医科大学理事長)が、国立大学と私立大学を取り巻く環境の違いを指摘した上で、「違いを認識した上で将来の検討を進めていくべきではないか」と発言。それに対して永井座長は「大学設置基準における大学病院は、学部学生の教育と研究のためであるとされていることが問題で、これは全ての大学に適用される。この法的位置付けをしっかり見直さないといけないということは国公私立全部に共通する問題」などと返答した。同検討会は来年1月頃に検討を再開、同年春頃に最終取りまとめを行う予定。