日私中高連 日私学保連 私学振興全国大会を開催
約1700人の中高校長、保護者ら参集
与党・自由民主党議員等に私学振興予算拡充要望
日本私立中学高等学校連合会(会長=吉田晋・富士見丘中学高等学校理事長・校長)と日本私立小学校中学校高等学校保護者会連合会(門傳英慈会長)が共催する「令和5年度私学振興全国大会」が11月1日、東京・文京区の文京シビックホール「大ホール」で開催された。全国から私立中学高等学校の理事長・校長や生徒の保護者ら約1700人が出席した。私学振興全国大会は例年12月下旬に閣議決定される来年度政府予算案における私学振興予算の拡充等を文部科学省の政務三役や与党・自由民主党の文教関係議員に要望するため、毎年11月に開いている大会。今年の大会には文科省から公務のため欠席となった盛山正仁大臣の名代として青山周平副大臣が、加えて今枝宗一郎副大臣も出席、自民党からは萩生田光一・政務調査会長ら衆参両院議員本人24人、議員秘書25人(他にメッセージ1人)が出席した。
大会の冒頭、中高連の山中幸平副会長による開会の辞に続いて、主催者としてあいさつした吉田・中高連会長は、「緊迫する世界情勢の中で物価が高騰し、急速に進行する少子高齢化、それに伴う人口減少が社会経済に与える影響は甚大で、日本社会はさまざまな課題解決に迫られている。こうした厳しい状況の中で私立中学高等学校は、わが国の将来を担う子供たちの育成のため、建学の精神の下、常に、新しい時代に対応した特色ある質の高い教育を展開し、社会性をしっかりと身に付けた有為な人材の育成に取り組んでいる。自由民主党の先達の先生方により議員立法で制定された私立学校振興助成法の目的は、私立学校の教育条件の維持及び向上、私立学校に在学する生徒等に係る修学上の経済的負担の軽減、私立学校の経営の健全性を高め、もって私立学校の健全な発達に資すること。保護者の負担軽減も重要だが、私立学校は授業料等と経常費助成で運営している。経常費助成が減れば教育力は低下する。私たち私立中学高等学校は、自主性・独自性を堅持しながら、これからも生徒、保護者の皆さんの期待に応えられるよう、子供たちの教育の更なる充実発展のため邁進していくことを約束する」と語った。
続いて日私学保連の門傳会長が主催者の一人としてあいさつに立ち、「わが国の公教育は国公私立学校により支えられ、それぞれが果たす役割を十分に発揮してこそ多様で健全な学校教育が維持され、発展するものと信じている。しかし国公立と比べ私立学校に対する公的支援はまだ低い水準で、就学支援金制度の拡充など公私間の教育費負担の格差是正が図られつつあるが、私立中学高等学校における更なる教育費の負担軽減に向けた公的支援の拡充が求められている。特に大切なのは私学の教育の自由度で、私学の教育の自由を奪うような公的支援は認められない」と語り、令和6年度政府予算案編成で私学関係予算の拡充等を出席の国会議員等に要請した。
文科省を代表して 青山副大臣が出席
自民党を代表して 萩生田政調会長があいさつ
この後、来賓あいさつが行われ、初めに文科省を代表して青山周平副大臣が「文科省としては子供たち一人一人が自ら個性を磨き創造性を伸ばし国際社会で活躍できる心豊かな国民に成長できるよう教育振興、教育投資の充実に努める。なかでも私学教育の役割はわが国の学校教育の発展に極めて重要であるとの認識の下、教育条件の維持向上、児童生徒の修学上の経済的負担の軽減、私学の経営の健全化を高めるために、私学助成の充実や税制上の優遇措置を始めとした私立学校振興方策の推進に取り組んでいるところ。今後もご出席の先生方のお力を得つつ私立学校の発展のために精いっぱい取り組みたい」と語った。
続いて自由民主党を代表して萩生田光一政調会長(衆議院議員)があいさつし、「政府と一体となって私立学校のICT環境の充実のため、(今後は)補助率を2分の1以内から3分の2以内に引き上げ、壊れる場合も想定して、15%余分に措置すること、大学で理系の教育を増やしていくに当たって高校時代からデジタルなどに馴染んでもらうために、全国で公私立1000校への100億円を計上してデジタル環境を一気に整備することもさせて頂く予定」などと語った。
続いて下村博文・衆議院議員(元文科大臣)があいさつし、大阪府が進める私立高校の無償化政策に触れ、「私立高校に対して授業料規制(キャップ制)を設けていることは、私立学校の公立化につながりかねない。私立学校には平均的な教育ではなく、建学の精神を生かしたプラスアルファーの教育をして頂いて、父母に対しては国が別の形で負担軽減を考えることが重要」とし、また「憲法89条の見直しも進めていきたい」と語った。
また松本剛明・衆議院議員(前総務大臣)は「私立学校を運営する皆様、子供たちを通わせている保護者の皆様にも安心して教育に取り組んでいただけるような環境づくりに党を挙げて取り組みたい」などと語った。
続いて山谷えり子・参議院議員が、「難しい時代だからこそ、変化の急な時代だからこそ、教育、教育、教育で、皆が充実した良き私学教育が受けられるよう、これからもしっかりと頑張っていきたい」と述べた。
また柴山昌彦・衆議院議員(元文科大臣)は「しっかりと予算の裏付けをもって皆さんの期待に応えていきたい」と語った。
義家弘介・衆議院議員(元文科副大臣)は「16歳の時、公立の器からこぼれ落ち路頭に迷っていた私に手を差し伸べてくれたのは小さな私立学校だった。これからも責任を持って恩返しをしていきたい」と語った。
石原宏高・衆議院議員(内閣総理大臣補佐官)は「防衛関係の研究も一生懸命やるような学生さんを育てて頂きたい」とし、赤池誠章・参議院議員(元内閣府副大臣)は「歩く公私間格差是正ということで飛び回っている。今後とも頑張りたい」と述べた。
そのほか田中英之・衆議院議員、田野瀬太道・衆議院議員、今井絵理子・参議院議員、勝目康・衆議院議員、鈴木英敬・衆議院議員、中村裕之・衆議院議員、宮内秀樹・衆議院議員がそれぞれ改めて私学振興への決意表明などを行った。
近藤副会長が助成法制定に感謝して「要請」行う
来賓のあいさつに続いて近藤彰郎・中高連副会長が要請を行った。その中ではまず、自由民主党の先達の議員が議員立法で私立学校振興助成法を制定し、学校を創った人たちの思いを受け継ぐことが出来ていることに感謝の思いを出席の議員に伝え、また私立学校のガバナンス改革(私立学校法の改正)でも私立学校の現実に沿った形で法改正が行われたことにも感謝を述べた。さらに大阪府での高校授業料無償化政策については大阪府の中にとどめた形で行うべきだと語った。
この後、全国の保護者を代表して兵庫県私立中学高等学校保護者会連合会の吉村美緒さんが、「保護者の願い」として、教育のデジタル化の基盤となる一人一台パソコンの配備や学校の施設設備の整備をはじめとする教育環境の一層の充実と保護者の経済的負担の軽減を目指して出席の国会議員に格別な理解と支援を要請、同文書を山谷えり子議員に手渡した。
続いて日私学保連の東原相次郎副会長によって、▽私立中学高等学校の教育全般の充実発展のため、経常費助成費等補助の大幅な拡充を図ること、▽私立中学高等学校の保護者の教育費負担を軽減し、公私間や都道府県間の格差を是正するため、国による就学支援金制度や授業料減免支援の大幅な拡充を図ること、▽私立中学高等学校のICT環境の整備、施設の耐震化、高機能化の早期実現のため、所要の補助の大幅な拡充を図ること―の3項目の実現を求めた決議案が読み上げられ、出席者により満場一致で採択され、大会「決議」として東原氏から義家議員に手渡された。
最後に中高連の小山康直副会長が閉会の辞を述べ大会を締め括った。