武蔵野大学の取り組み
ピッチイベントに生徒・学生9人が登壇
世界の幸せと自身の価値観に向き合う
武蔵野大学アントレプレナーシップ研究所(東京都西東京市)は昨年12月3日、同大学武蔵野キャンパス5号館で生徒・学生を対象にしたピッチイベント「EMC pitch2023―世界の幸せを叫ぶ―」(EMCはEvolution、Motivation、Communicationの頭文字)を開催した。
今回で2回目となる同イベントでは、中学生、高校生、高専生、大学生の総勢9人の登壇者が各自の思い描く「世界の幸せをカタチにするためのアクション」について発表した。今回は初の試みとして大賞を選出し、ドルトン東京学園中等部1年生の太田嶋亮成さんが大賞に選ばれた。
同イベントは世界の幸せと自身の価値観について真摯(しんし)に向き合い、発表することを通して参加者が成長できる機会を提供することを目的としている。今年度は、「世界の幸せをカタチにする」ために各人が抱えている課題感を基にして自分が目指すアクションを宣言する「マインド編」と、「世界の幸せをカタチにする」ための具体的なビジネスプランを発表する「ビジネス編」の2部門で登壇者を募集した。
登壇者の選考は同大学アントレプレナーシップ学部の実務家教員等が行い、応募者が3分間の動画に込めた同イベントに対する熱意と意気込みを評価した。
大賞を受賞した太田嶋さんは、軽度な知的障害のある妹との暮らしの中から、障害者や、知能指数が70から85の「境界知能(グレーゾーン)」と言われる人たちが安心して働くことができる雇用促進の必要性を感じ、「ビジネス編」で事業案を発表した。
太田嶋さんはスタートアップスタジオ「Musashino Valley」から起業支援を受け、今後も活動を継続する。Musashino Valleyは昨年6月1日、同学部の教員が中心となって、東京都三鷹市に開設され、次のステップに向かいたい人が集まるコミュニティーを形成し、踏み出すためのサポート(イノベーションや新規事業、起業、コラボレーション、キャリア開発等)を行っている。
太田嶋さんは「アイデアはあったものの、起業しようという決心はついていなかった。このピッチに参加して、大賞を受賞したことで、大きな自信につながった。今後も起業などの活動を行っていく」と意欲を示した。
同イベントの実行委員長で、同研究所の所長兼同学部の学部長を務める伊藤羊一氏は「一人一人のピッチが心を打つものだった。しがらみや序列、邪念、忖度といった余計なものがなく、この課題を解決したいとストレートに訴えるものばかりだったからだと思う。ここで発表したことを追求してほしい」と話した。
同イベントにコメンテーターとして参加した同学部の平石郁生教授は「今年の登壇者は、とてもピュアで、社会に対する問題意識が明確だった。特に、中学生の3人は、自身の原体験に基づいており、リアリティーを感じた。身近な人たちの問題を解決したいという思いが伝わってきて、心を動かされた。我々も協力を惜しまない。是非、形にしていってほしい」とコメントした。
同大学では、同イベントが参加者にとって世界の幸せについて真剣に考え、自分自身と深く向き合い、世界の幸せが何なのかを考える機会となっていることから、今後も継続的に開催し、共に世界の幸せについて考え、向き合い、伝える機会を提供していく考え。