中教審第177回大学分科会

特別部会審議状況を報告、審議

学校教育法改正案で意見交換

中央教育審議会大学分科会(分科会長=永田恭介・筑波大学長)は3月12日、対面とオンラインにより第177回会議を開催した。この日は議題が、経営情報ビジネス分野の専門職大学を評価する認証評価機関の認証(答申)など7項目あり盛りだくさんの会議となったが、最も意見が交わされたのは、同分科会の下に設置された特別部会を中心に審議が進められている、少子化が進む中での2040年以降の高等教育の質・アクセス・規模等をどうしていくかという問題。また専修学校と大学等との制度的整合性を高めることを目的に3月1日に国会に提出された「学校教育法の一部改正案」についての審議。さらに岸田総理が議長を務める教育未来創造会議が昨年4月に提言した留学生受け入れの質の向上を図るために必要な対価の徴収として国立大学等の授業料設定の柔軟化、海外分校における授業料設定の柔軟化策についてで、この中ではわが国の高等教育の授業料が諸外国と比べて極めて低く、教育の質向上のためには授業料の引き上げが急務といった意見が複数委員から聞かれた。

このうち2040年以降の高等教育の在り方に関する審議に関しては、特別部会の審議に加わっていない大学分科会の委員を中心に審議状況や中教審総会等での議論が同省や永田分科会長から解説され、質疑が行われた。委員からは、「特別部会で議論が盛り上がったことは何か」「高等教育の流動性確保は教員のほか学生も含めてのことか。定員管理の柔軟化についてはどう議論しているのか」「授業料が低すぎる。授業料が低くては海外から優秀な教員を呼べない」などの意見があり、永田分科会長は、「知の総和を上げることが必要だが、実現のための明確なアイデアが出ていない。まだ大学院進学者を増やすことくらいだ」「流動性確保は教員、学生両方のこと。定員流動化策は非常に難しい。パートタイム学生も定員に加えてといった意見があったくらい」「授業料は安いと思う。一方、高等教育の無償化ということもある」などと答えた。

また委員から「わが国にとって生産性を高めるのが基本的な問題。非正規雇用が全体の45%を占め、大学院進学率が低く、理系へのシフトが遅れたことが生産性を低くしている要因。大学教育は質が大事。授業料を上げていくべきで、授業料と志願率は関係していない」といった意見や、AIに関する基礎的な学修の遅れを指摘し、教育の大幅転換がなければ日本はだめになるといった意見もあった。永田分科会長は、「就学人口の減少は社会人学生や留学生では埋めきれない」「米国では文系の学生に教養課程で量子科学を教えている。日本の人文系学部で量子科学を教えているところはない」などと答えた。  このほか、「国公私立の設置者別役割分担の在り方についてはどうまとめるつもりか」との質問があったが、永田分科会長は、「今のところ(その問題は)はいったん外れている」と回答した。

一方、学校教育法の一部改正案に関しては、大学・短大関係の委員から専修学校の質の保証・向上に関する調査研究協力者会議の1月24日の提言から、2月8日の与党の法案了承、3月1日の法案の国会提出は、非常に拙速で関係する中教審大学院部会の意見も聞いていないこと、質の保証が重要で、大学・短大と専修学校のすみ分けの中で既に専門職大学も誕生していることなどを指摘する意見が聞かれた。

それに対して文科省からは、「道を閉ざしたままではよくないと考えていて、3年制の専門課程+1年の専攻科で大学院入学資格を付与したいと考えている」と回答。またこの専攻科には短大卒や大学卒者が入学する可能性もあると考えている。看護師資格を持っている人が専攻科修了で助産師・保健師の資格を得られることも想定している」と回答。また専修学校関係の委員からは、「今回の法案は段階を踏んで議論を深化させてきたもので、高等教育機関として質の向上・経営の健全化を目指していきたい」との意見が出された。 

また専修学校の外部評価(法案で努力義務化)に関して、文科省は職業実践専門課程で実績のある企業関係者に参加を得て教育等を評価してもらっていることを外部評価につなげたい意向を明らかにした。また永田分科会長からは「外部評価をもう少し早めに対応できるように考えてほしい」との発言があった。

教育未来創造会議の提言に関しては、留学生受け入れの質の向上を図るため、国立大学等の授業料その他の費用に関する省令を改正して令和6年度から施行することが説明され、了承されたが、留学生に関してはさまざまな受け入れ準備が必要なことから、授業料等の引き上げは合理的とする意見が数多く聞かれた。留学生の定員管理の弾力化に関して同省は、事務局案を詰めた上で大学分科会に提示し議論していただきたいと説明した。

こうした議論のほか、(1)経営情報ビジネス分野の専門職大学を評価する認証評価機関(特定非営利活動法人職業教育評価機構)を認証する答申を出すことが了承され、(2)経営ビジネス分野の専門職大学に関わる認証評価機関(一般社団法人専門職高等教育質保証機構)の認証についての諮問が行われた。(3)認証評価機関の評価内容を充実させる観点から、大学評価基準に定めるべき項目として大学の教育研究活動の状況に関する項目の追加に関わる省令案の検討、(4)大学設置基準の一部改正(諮問)について説明、意見交換等が行われた。これは地域医療連携推進法人に一定の要件下で個人立の病院等の参加が可能となったことを踏まえ大学設置基準の一部を改正するもの。一定の要件下とは病院の教育研究機能を担保できること。

このうち(1)に関しては中教審の大学分科会認証評価機関の認証に関する審査委員会(座長=前田早苗・千葉大学名誉教授)から、第三者性を担保した委員構成の検討、委員の選任状況のより明確化が求められ、改善した結果、認証が適当との結論となり、盛山文科大臣に認証は適当との答申がされることとなった。

(2)に関しては同日、中教審に諮問が行われ、今後、審査委員会に回される予定。