神戸女学院大学の取り組み

持続可能な社会構築に貢献できる人材育成

来年4月環境科学など柱に生命環境学部新設

神戸女学院大学(兵庫県西宮市)は2025年4月に生命環境学部(仮称・設置構想中)を新設する。同学部は現在の人間科学部環境・バイオサイエンス学科を改組・改称して発足するもので、「生命環境学科」(定員80人)を設置する。

理工系分野で次代を担う女子学生の比率が低い状況であることを受けて、関連機関で多様な取り組みが進められている中、同学部では持続可能な社会の構築に貢献できる人材の育成に向けて「環境科学」「生命科学」「情報科学」「サイエンスコミュニケーション」の4分野を柱とした学びを提供。全ての分野で役立てることができるデータサイエンスを身に付けた上で、優れたコミュニケーション能力を通じてウェルビーイングを実現するために力を発揮する、強くしなやかな女性を育てる。

同学部の受験は高校で文系、理系どちらを選択していても受験を可能にしており、文系科目での受験者には入学後、数学をはじめとする理系の基礎となる科目を学修できるカリキュラムを提供する。

同学部で提供する学びの4分野のうち、持続可能性科学や生態学、建築学などの環境科学では、自然環境の知識を身に付け、人と自然の理想的な在り方をフィールドワークや実験・実習を通して探る。

細胞生物学、食品科学、健康科学などの生命科学は、身体の構造や食と健康などの基礎を学び、身の回りの課題を細胞や遺伝子レベルで解明する。

データサイエンスやICT、プログラミングなどを学ぶ情報科学では、情報技術を活用し、データの収集・分析・解析力など、社会でも役立つ知識とスキルを身に付ける。

サイエンスコミュニケーションでは、理科の魅力を伝える理科教員など、科学的知識を基に他者に科学を分かりやすく伝え、科学と社会をつなぐ人材を育成していく。

また、専門分野以外にも他学科の400以上の授業を自由に選んで受講し、文系・理系の垣根を越えて学ぶことができる。

2月20日に同大学で開催された取材会には、環境・バイオサイエンス学科の学科長を務める高岡素子教授、同学科所属の高橋大輔教授、西靖特別客員教授、今年4月に着任予定の高木俊人氏、新設される建築分野のアドバイザーを務めている京都工芸繊維大学の笠原一人准教授が出席した。

高岡教授は「学生が身近な疑問に理系的なセンスで向き合う機会を与えて理系的な考え方を養っていく。小さな研究を積み重ね、社会や人々の幸せに貢献したい」と方針を語った。

データサイエンス担当の高木氏は「高度な情報技術について倫理面も含めて深く考え、自分で判断して情報を取捨選択し、正しく利用できるよう、実践的プログラムを展開していく」と説明した。

建築を担当する予定の笠原氏は、建築史・歴史的建築物の保存再生と、木造・木質建築に力点を置いたプログラムを展開するとし、「多くの校舎が重要文化財に指定されているキャンパスで学ぶのにふさわしい内容となっている」と話した。

環境学を担当する高橋教授は「800種もの動植物が生きる岡田山の身近な自然のフィールドで研究できるのは恵まれたことだ」とコメントした。

高岡教授は担当する生命科学について「身近な食べ物を切り口に、人間について深く学べる分野だ」と述べた。

コミュニケーション論を担当する西特別客員教授は「生命環境学部で学んだ知識を社会で役立たせてウェルビーイングを増進するためには、事実を正確に認識することも含めたコミュニケーション能力が欠かせない」と強調した。

学校法人神戸女学院では2025年の創立150周年に向けステートメント「Bridging Generations 未来を生きる人たちのために」を発表しており、今年4月に新設する国際学部、心理学部に続く、生命環境学部設置はその精神を具現化したもの。神戸女学院大学は変化の激しい時代の中で、高い共感性を力に未来を切り開く女性の育成を目標とし、教育の三つの柱である「キリスト教主義」「国際理解の精神」「リベラルアーツ教育」をさらに深化させていく考え。