第11回質の高い教師確保特別部会を開催

令和4年度教員勤務実態調査確定値等報告

教職調整額の仕組み維持増額求める意見多数

中央教育審議会初等中等教育分科会質の高い教師の確保特別部会(部会長=貞広斎子・千葉大学教育学部教授)の第11回部会が4月4日、文部科学省でウェブを併用して開催された。会議の冒頭、令和4年度の教員勤務実態調査の確定値と分析結果が同省から報告された。平成28年度の前回調査と比較して、平日・土日とも全ての職種で在校等時間は減少していたが、依然として長時間勤務の教師は存在しており、1週間当たりの教諭の総在校等時間は中学校で55~60時間未満が20・3%で最多、小学校では50~55時間未満が30・3%で最多だった。教諭の在校等時間の学校平均値の分布は前回調査と比較すると学校間のばらつきが減少した。在校等時間が長い学校(10時間30分以上)も減少。在校等時間の学校平均値が少ない学校でも、在校等時間の長い教諭が一定割合存在していた。そのため学校への組織的なアプローチに加え在校等時間の長い教師への個別アプローチも必要、と指摘している。 

中学校の部活動顧問の勤務実態では、部活動の活動日数が週6日以上(部活動ガイドラインの基準超え)の教諭の割合は6・9%で、前回調査の約65%から大きく減少した。平日の部活動従事時間が長くなるほど、教科指導や生徒指導に従事する時間が短くなっていることも分かった。 

また教員業務支援員が配置されている学校は、配置されていない学校に比べて、1日当たりの事務などに従事する時間が、小学校で約6時間、中学校で約7・5時間短い。長期欠席者が1人以上いる学級の担任で、スクールカウンセラーが配置されている学校の教諭は、配置されていない学校の教諭よりも心理的ストレスが少なかったことも分かっている。

 特別部会では、続いてこれまでの審議を経て第11回から追加された論点についての説明が同省からあった。その中では、在校等時間と教育の成果の関係、時間外勤務手当を支給する場合、勤務命令を発することの是非、教師の職務の特殊性を踏まえた給与の仕組みの考え方、現行の教職調整額は適切か、一般公務員より優遇されている教師の給与の優遇分は適切な額か、政令で定められている超勤4項目(管理職が教職員に時間外勤務を命令できる4業務―実習、学校行事、職員会議、非常災害)の在り方、教育委員会が教師の健康・福祉を確保するための具体的な仕組みなどが挙げられている。 

これらの論点に対して委員からは、「時間外勤務手当の支払いではなく、現状の給特法による教職調整額の仕組みを維持し、その額を高くすべきだ」との意見が多数あり、その理由としては、「民間企業では残業は個々人が自分の判断で行い、それを追認する形で行っているが、教員の仕事では難しい」「生徒の多様性、地域の保護者の状況、教師の経験値、組織編成などにより教師の仕事は異なるので、時間の尺度で仕事は計れない」「管理職が時間外勤務を命じるのは難しく、教師と管理職の間に軋轢が生じる可能性がある。管理職が多くの教師の勤務時間を管理するのは困難」「現在はチーム学校と呼ばれるように、組織としての機能向上が求められている。一律に職務を切り分けることはなじまない。人材確保法で当初一般公務員より優遇されていた割合を担保しつつ、月給の4%を支給される現行の教職調整額の勤務実態に応じた引き上げを検討したい」などがあった。また、「教員勤務実態調査の分析によれば、在校等時間に影響を与えている業務に担任する児童生徒数が多いこと、主任業務があり、こうしたポストに適切な手当を支払うことが運用効率上、公正上、妥当だと思われる」という業務内容・ポストに応じて適正な手当を支払うべきとする意見も上がった。

 さらに「給特法を維持すれば、土日の部活指導は、交通費などは支給されているのに教師の自発的、自主的な活動で労働基準法の労働に当たらないとされる問題が置き去りにされる」、「教師は、休日でも授業で使えるものは何かないか考えてしまう年中無休のような仕事。負担軽減のために行政と連携して教師の定数改善も必要」「在校等時間だけを働き方改革の指標としてよいのか。ストレスややりがい、幸福感なども自治体レベルで指標として設定する必要がある」という教師の健康や福祉確保を考慮した改善を求める発言も多く聞かれた。