第12回質の高い教師確保特別部会開催
審議まとめ素案を審議
教職調整額10%以上に引き上げ案に疑問も
中央教育審議会初等中等教育分科会に設けられている「質の高い教師の確保特別部会」(部会長=貞広斎子・千葉大学教育学部教授)は4月19日に第12回部会を対面とWEBの併用で開催した。初めに文科省から昨年6月から同特別部会が審議してきた内容を整理した審議まとめ「『令和の日本型学校教育』を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について」の素案が初めて示され、説明が行われた。
素案では、まず学校現場の現状に触れ、子供たちの抱える課題が複雑、困難になったことなどで、業務が積み上がり、慢性的な長時間勤務が続き、教師の取り巻く環境を改善しなければ教育の質の低下につながると危機感を強調。また近年では定年退職者が増えたことで若手教師の採用が増加し、それに伴い産休・育休取得者も増えたが、臨時講師の確保が難しい状況にあること、さらに精神疾患で休職した教師数が令和4年度に過去最多となり、メンタルヘルス対策も喫緊の課題となっていること、よりよい教育の実現のためには、教師の長時間勤務を是正し、健康を守り、ウェルビーイングの確保が必要であることを指摘。
環境整備には国、都道府県、市町村、各学校がその権限と責任に基づき主体的に取り組むことや保護者、地域住民、企業など社会全体で一丸となって対応することが必要だ、としている。
長時間勤務の改善のために、時間外在校等時間1カ月45時間以内とする上限指針の設定などの働き方改革が進められたが、さらに実効性を向上させるために、全ての服務監督教育委員会の取り組み状況を見える化し、それを通じたPDCAサイクルの構築が不可欠で、その中で客観的な時間外在校等時間の把握を一層推進することが重要と述べている。
具体的な取り組みとして、月80時間を超す時間外在校等時間の教師をゼロにすることを最優先の目標とし、その上で全教師が上限指針の月45時間以内の勤務を目標とし、将来的には月20時間程度に収まるようにする、としている。
保護者や地域住民からの過剰な苦情や不当な要求には教育委員会などが対応できる体制の構築や、スクールロイヤーによる法務相談体制の整備が必要だと指摘。
処遇改善策に関しては、時間外勤務手当を支給すべきとの指摘があるが、教師の業務はどこまでが職務か、そうでないか切り分けて考えることは困難なので、現状の教職調整額による支給は合理性があり、その率を職務の特殊性を考慮して少なくとも現行の4%から10%以上を目指すべき、としている。
また学校内外との連携・調整機能を充実させるために新たな職を創設し、教諭(2級)と主幹教諭(特2級)の間に給料表上の新たな級を提案している。保護者への連絡・相談対応などさまざまな業務を行う学級担任の処遇改善のためには、現在一律支給されている義務教育等教員特別手当に関して学級担任には手当額を加算する必要があると言及している。
文科省からの素案の説明に、委員から数多くの意見、提案があった。教職調整額の率を10%以上に引き上げる案に対して、「10%は妥当な数字なのか」「数字は根拠をもって示すべき。働き方改革とセットで行うものである」「10%があるべき姿と誤認される恐れがある。勤務時間の実態と乖離している」など、10%という数値の妥当性などに対する疑問が相次いだ。
また、「時間外在校等時間の定義を明確にする必要がある」との意見もあった。さらに「時間外在校等時間を20時間に抑える意思を示し、その実現のためのロードマップを示すべきだ」との提案も聞かれた。
担任手当の加算には、「チーム学校で運営を進めるとする現在の方向性に逆行する」「手当のない教師との間で確執が生じないか」といった懸念が出された。
最後に貞弘部会長が発言し、「社会の注目は教員の給与に集まりがちだが、素案のそれぞれの論点は相互に連動しているものである。実装できる条件整備のために提案のあったロードマップの作成は検討していきたい」と話した。