全審連が文科大臣等に要望書を提出

広域通信制高校問題改善等を求めて

定通振興法の見直しなど要望

各都道府県の私立学校審議会(知事の諮問機関)の委員で組織する全国私立学校審議会連合会(近藤彰郎会長、東京都私立学校審議会会長・八雲学園中学高等学校理事長・校長)は3月27日付で、文部科学省の盛山正仁大臣をはじめ政務三役や初等中等教育局長、高等教育局私学部長等に対して、広域通信制高等学校に関する問題の改善等を求める要望書を提出した。

高等学校の通信制課程は、当時、社会的要請が高かった勤労青年に対する高等学校教育の機会提供を目的に昭和23年に制度化された。  

その後、昭和63年に修業年限や必要な教員数に関して弾力的な運用が可能とされたことなどから、以降、全日制・定時制課程の生徒数が減少する中にあって、私立の広域通信制課程を置く高等学校・生徒数は増加を続けている。  

平成26年度から令和5年度の直近10年間を見ても、私立・株立通信制課程の学校数は154校から211校に、生徒数は約11万人から約21万人に増加している。なかには1校で1万5千人近くの生徒数を抱える日本最大の広域通信制高校も誕生している。  

その一方で広域通信制高校の日常的な教育活動は当該所轄庁の圏域外に設置されている通信教育連携協力施設(サテライト施設)を主体に行われ、生徒や保護者がその実態を把握できないまま、一部の不適切な学校運営や教育活動で不利益を被るケースが後を絶たない。  

文科省の調査結果でもそうした実態が明らかになっているが、今回の要望書では、本来の趣旨とは異なる目的で制度が利用され、今なお問題が放置されている現状はわが国の学校教育制度の在り方を根底から覆す脅威となるもので、私立学校全体として到底看過することはできないとし、抜本的な改善策を求めている。  

要望事項は次の通り。  

(1)定通振興法の改正及び広域通信制高等学校の在り方の見直し。高等学校教育の目的は、生徒の学力に加えて社会性を育むことであり、このことは各課程間で異なるものではない。これを踏まえて、広域通信制高等学校での教育が、真に公教育機関として相応しいか否かの観点から検証するとともに、現行の定通振興法を改正し、通信制課程のみに適用されている特例措置を見直すこと、特に株式会社立の広域通信制高等学校については制度の廃止を含めた見直しを要請している。  

(2)設置認可基準等の策定。文科省により通信制課程に係る私立高等学校の認可基準(標準例)が策定され、昨年11月20日付で各都道府県私立高等学校事務担当課等に事務連絡された中で、通信教育連携協力施設を他の都道府県に設ける場合には、当該都道府県知事が定める高等学校通信制課程の設置認可基準を参酌して確認を行うこと、認可時だけではなく通信教育連携協力施設を設けた後も、引き続き当該基準を参酌することとし、同省は所轄庁に対して設置基準を見直す等により、通信制課程に係る私立高等学校の適正な認可に努めるよう求めている。  

一方で、同連合会の調査では、27県で広域通信制課程に関する県独自の設置認可基準を策定しておらず、策定している自治体でも質的な基準は設けられていない状況で、さらに通信教育連携協力施設に係る設置・審査等の基準は28県で策定されていないことも明らかになっており、文科省に対して、所轄庁をフォローアップし、支援体制を構築するなど、より主体的・実務的な立場に立っての問題解決を要請している。  

(3)広域通信制高等学校による生徒募集等の是正。一部の広域通信制高等学校において実施校だけでなく、他の都道府県に設置された通信教育連携協力施設においても生徒募集や入学者選抜が当該都道府県に先駆けて行われており、各都道府県では入試日程に混乱が生じていることから、文科省に対して広域通信制高等学校の所轄庁に対する指導等を要請。また中学校段階のフリースクールがあたかも学校教育法上の中学校と誤解されかねない広告・表示の事例も見受けられるとして、同省に適正な広告・表示の在り方を示し、不適切な広告・表示に対しては学校法人への指導を要請している。このほか通信制課程の質確保・向上のため収容定員の上限規定の新設を要望している。

(4)全日制高等学校の教育課程の在り方の検討。全日制高等学校が社会の多様化や高度化に柔軟に対応した教育ができるよう、教育課程の在り方を含め、教育制度全体を現在の教育を巡る状況に合わせて見直すとともに、教育の自由度を高める方策の検討についても求めている。その際、国公私立学校の役割分担についても議論を進めてほしいと要望している。