日短協 春季定期総会を対面で開催 

麻生隆史(山口短期大学理事長・学長)新会長を選出

協会内に特別委設け、振興施策など議論 

日本私立短期大学協会(会長=関口修・郡山女子大学短期大学部理事長・学長)は令和6年度春季定期総会を4月25日、私学会館で開催した。総会に先立ち文部科学省から、短期大学をめぐる課題と令和6年度私学関係予算について説明が行われた。総会では令和5年度収支決算報告及び令和6年度事業計画・収支予算案等を承認したほか、任期満了に伴う役員改選が行われ、新会長に麻生隆史・山口短期大学理事長・学長が選出された。また大学・短期大学基準協会からは認証評価等の報告が行われた。    

開会挨拶で関口会長は「短期大学が抱える諸課題について結論に到達することはなかなか困難であるが、各短期大学の特色が大いに発揮できるよう進めていきたい」などと述べた。

来賓挨拶では池田貴城・文部科学省高等教育局長が、「昨年9月、中央教育審議会に諮問があり、少子化を見据えた新たな高等教育の在り方について審議を始めている。来年年明けには最終的な答申をまとめたい。その中で学校種別・機関別の在り方の議論も深めていく。短期大学は地域を支える上で大変重要な役割を担っている。一方で厳しい状況も認識している。制度的なことも含めてご意見・ご要望を受けながら施策の充実に努めたい」などと述べた。   

文部科学省説明Ⅰは「短期大学をめぐる諸課題について」と題して、大学教育・入試課の古田和之課長がグランドデザイン答申以降の取り組みについて説明した後、次のように話した。   

人口減少が予想以上に進んでいることから中央教育審議会に、「急速な少子化の進行を踏まえた今後の高等教育の在り方」について諮問が行われ、大学分科会に高等教育の在り方に関する特別部会が設置された。主な検討事項は、○地域における質の高い高等教育へのアクセス機会の確保の在り方、○国公私の設置者別の役割分担の在り方、○今後の高等教育全体の適正な規模等についてであり、既に議論が始まっている。短期大学の目前の課題は経営難や学生募集であることは理解している。同特別部会や大学分科会の議論に、今後の短期大学の在り方を組み込んでいく必要があるため、短期大学全体として提案してほしい。短期大学が果たしている役割を、さらに伸ばすような形で、われわれも解決できるものがあれば取り組んでいきたい。   

説明Ⅱは「令和6年度私立短期大学関係予算について」と題して、私学助成課の菅谷匠課長補佐が概要を説明した。   

私立大学等経常費補助のうち、特別補助を増額し、自らの特色を生かして改革に取り組む大学等を重点的に支援していく。特に、「時代と社会の変化を乗り越えるレジリエントな私立大学等への転換支援パッケージ」を大きく打ち出した。18歳人口が10年後から急減するため、まずはこの5年間を構造転換を図る対応期間としてほしい。そのための方向性としては、(1)チャレンジ、(2)連携・統合、(3)定員規模適正化である。支援パッケージは五つで「1.少子化時代を支える新たな私立大学等の経営改革支援」(新規)のメニュー1「少子化時代をキラリと光る教育力で乗り越える、私立大学等戦略的経営改革支援」は、教育研究面の構造的な転換、資源の集中による機能強化などの経営強化に支援する。メニュー2「複数大学等の連携による機能の共同化・高度化を通じた経営改革支援」は、5グループで1グループにつき3500万円程度を予定している。   

「2.『私学経営DX』の推進」(新規)では、私学事業団とのアウトリーチ型の支援を行う。「3.成長分野等への組織転換促進のための支援」(新規)では、理工農学部等の設置計画履行期間中に必要な経常的経費について支援する。「4.定員規模適正化に係る経営判断を支えるための支援」(新規)では、一定要件のもと、学生募集停止を行った学部等の継続的な教育研究活動を支援する。「5.私立大学改革総合支援事業」は継続事業である。  

総会では、任期満了に伴う会長選任が行われ、新会長に麻生隆史・山口短期大学理事長・学長が選出された。麻生新会長は就任挨拶で「地域・地方は大変厳しいが、短期大学の振興・発展のために努力していきたい」などと述べた。同協会の令和6年度事業計画については、私立短期大学を取り巻く環境は一段と厳しい状況にあることから、地域における高等教育及び高度な生涯学習の拠点として、私立短期大学の特色を発揮し、その存在意義について効果的な情報発信を行う。また、文部科学大臣の諮問に基づき中央教育審議会において、設置者別や機関別の役割・機能の在り方の審議が行われている。これらの状況を踏まえ、短期大学の有為性や存在意義などの特性に応じた振興方策の実現に向け、制度改正や公的助成の拡充等の施策に組み込むべく国や地方公共団体に要望していく。自然災害に対しては、復旧・復興に向けた活動を各団体と協調して行うとしている。   

主要事業目標は、(1)私立短期大学の教育研究条件の充実向上、(2)私立短期大学の経営の安定強化、(3)大学・短期大学基準協会との連携とし、私立大学等経常費補助金等の公的助成の拡充、学校法人関係税制の拡大等、私学などの関係団体との連携・協力を行う。

研修会については、今年度は就職担当者研修会を8月30日に、経理事務等研修会を11月6日に、学生生活指導担当者研修会を12月12日に、いずれもオンラインで開催する。秋季定期総会は11月25日に私学会館で開催する予定。各種調査は、令和5年度私立短大卒業生の卒業後の状況調査、令和6年度私立短期大学教務関係調査を実施する。私立短期大学の広報サイト「短大クエスチョン」については、月間約1万件のアクセスがあり、会員校の広報に活用されたい旨が報告された。   

中央教育審議会等の審議状況報告では、大学分科会の議論について麻生隆史委員(山口短期大学理事長・学長)より、グランドデザイン答申の時より様々な事態が起きており、3月12日開催の大学分科会では、学校教育法の一部を改正する法律案が提示された。内容は専修学校の専門課程について、(1)入学資格を大学の入学資格と同様の規定とし、在籍者の呼称を学生に改める、(2)学習時間を単位数にできる、(3)一定の要件を満たす専門課程(特定専門課程)には専攻科を置くことができる、(4)特定専門課程修了者は専門士と称することができる、(5)自己点検評価を義務付け、第三者評価を努力義務とする等。同法案は3月に閣議決定された。また、就学支援新制度についても、機関要件が専門学校に比べて大学・短期大学には厳しい。今後、重要なのは短期大学がどのような位置づけで進んでいくのか考え、私立短期大学として声を上げることだなど話した。同じく大学分科会の志賀啓一委員(志學館学園理事長)は、大学分科会での議論もないまま同法案が国会に提出されたことは拙速だ、専修学校は大学・短期大学とのすみわけとして既に専門職大学が誕生していると指摘したと話した。   

高等教育の在り方に関する特別部会の報告では、大野博之委員(国際学院埼玉短期大学理事長・学長)より、第3回会議で大森昭生・共愛学園前橋国際大学・同短期大学部学長が発表した「地方における高等教育へのアクセスをいかに維持するか」を紹介。10年前の短期大学ワーキンググループのとりまとめでは短期大学が高等教育のファーストステージという考え方が示されていたなどとし、現在の構造を解放するような役目が短期大学の役割ではないか、会員校の総意で振興方策を打ち出す必要があると話した。このほか「全国学生調査」に関する有識者会議や、障害のある学生の就学支援に関する検討会、学校法人会計基準の諸課題に関する検討ワーキンググループの報告が行われた。   

支部提案事項では、近畿支部から、経営が厳しいのは大都市圏・地方中核都市でも同じだとして、協会に情報の整理と提供、また文教施策の見直しへの働きかけなどを要望した。これに対し、同学協会としては、大学分科会等に提案するため、協会内に特別委員会を設置し振興施策等を議論していきたいとした。   

最後に大学・短期大学基準協会より、令和5年度の認証評価では短期大学44校が受審し適格は43校、大学は6校が受審し6校とも適格であったこと、令和6年度の認証評価は36短期大学と5大学から申込みがあったこと、また令和7年度からの第4評価期間に向けて、認証評価要項及び評価基準を改定したことが報告された。