高等教育の在り方に関する特別部会開催

第6回 私大通信教育協会や短大理事長・学長から意見聴取 

中間まとめ素案を審議

中央教育審議会大学分科会の高等教育の在り方に関する特別部会(部会長=永田恭介・筑波大学長)は5月31日、文部科学省でオンラインも併用して第6回特別部会を開催した。この日は、これまでの審議で残された(1)大学通信教育、(2)デジタルを活用した学習者本位の教育について専門家から、(3)短期大学の機能の再構築について理事長・学長から意見を聴取。また高等教育とも関わりの深い社会人のリカレント教育などについて重点的に審議した中教審生涯学習分科会の清原慶子分科会長(前東京都三鷹市長)から審議の整理について説明を受けた。会議後半は特別部会のこれまでの審議を基に事務局(文部科学省)等が作成した審議の中間まとめ素案が提案され、審議された。 

このうち(1)大学通信教育に関しては、公益財団法人私立大学通信教育協会の高橋陽一理事長が、「大学通信教育の規模とアクセスと質」と題して発表を行い、昭和25年に6大学で始まった大学通信教育は、平成6年には24大学(大学14校、短期大学10校)に広がり、それ以降毎年、開設が続いており、平成11年には大学院が開設され、令和6年には84校(大学46校、短期大学11校、大学院27校)に広がっていること、令和になって増加傾向の学生数は令和5年には18万人強となったが、年齢層は多様ながらもそのなかで高齢者と若年層の増加が顕著なこと、アクセスに関しては、全国で29県に通信制大学がないものの、学生は全国に広がっており、居住地から離れた大学にアクセスできる大学通信教育の特性を反映していること、スクーリングに関しても例えば法政大学では全国6地区で実施、また単位修得試験を全国51都市で実施しながらも、学費は通学課程の1~2割程度の低廉を維持していることを説明。質に関しては、これまで面接授業(スクーリング)が学生の評価が最も高かったが、ICT活用が広がる中で、コロナ禍を経て令和3年度調査では遠隔授業(メディア授業)が最上位になったことを挙げ、引き続き質の維持向上と情報公表に努めていく考えを強調、公的支援と社会的理解の醸成への協力を要請した。   

続いて公益社団法人日本工学教育協会理事の井上雅裕・慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント特任教授が「高等教育の在り方とデジタル変革 学習者本位の教育の在り方」と題して発表を行い、マイクロクレデンシャル(編集部注:細分化された学習内容を大学等ごとに評価・認証すること)の制度化と国際連携の推進、全国資格枠組み、単位銀行や包括的な学習者記録の整備等の必要性を指摘、その上で高等教育機関に対しては、18歳学生のみを対象にしたこれまでの大学組織と運営を変えていくことや、入試や広報の在り方、社会人のニーズの把握を改善すること、リカレント教育、マイクロクレデンシャルを開発し実施する教員を大学として正当に評価する仕組みを設けること、高等教育機関と企業、民間研修機関、専門家団体等との協働による教育プログラムの設計と運用の推進などに期待している、などと語った。   

(3)の短期大学の機能の再構築に関しては、同特別部会の委員でもある国際学院埼玉短期大学の大野博之理事長・学長が「多様な価値観が集まるキャンパスの実現」と題して発表を行い、大学と短大との連携教育課程による教育コンテンツの多様化・充実化(連携教育課程の編成)を提案した。単独の規模では提供できない学修目標の幅広さと水準の実現を目指して、成績の評価基準を共有化、編入後の学修への適応をシームレス化できること、連携開設科目上限の緩和やメディア上限の緩和等の特例制度の活用が必要なこと、2年課程の成績で編入学の可否を判定すること、編入学定員の設定を弾力的に認可すること、連携教育課程の質保証、高等教育の修学支援新制度の機関要件の再検討(定員充足率等)等を要請した。

その後、同特別部会の中間まとめ素案が事務局から説明され、素案の柱である高等教育を取り巻く状況、今後の高等教育の目指すべき姿、今後の高等教育の政策の方向性について委員間で審議が行われた。委員からは「自治体との連携、大学間の連携をもう少し明確に書いてほしい」「財政論が抜けている」「適正な規模の確保」との表現には違和感がある。規模の適正化が良い。業界団体を守るものではない」「文科省以外の省庁との連携が必要」「留学生に関しては就業支援が重要」「外国籍の学生の支援も考えてほしい」「これだけの改革をするのだから、財政支援について突っ込んで書くべきだ」「社会のニーズに応える大学像を書いてほしい」「今後、学生数が減ると(知の総和が減っていくが)、大学としてやれることはまだたくさんある。学生の勉強時間は少ないので、勉強させる土台作りが必要だ」などの意見が出された。中間まとめ素案の最後の柱(4)は、今後検討を深めていく必要がある論点で設置者別・機関別の役割分担や連携の在り方、高等教育改革を支える支援方策の在り方が挙げられているが、(4)についての審議は行われなかった。