第12回高等学校教育の在り方WG開く
DXハイスクールや働き方改革等報告審議
意見の整理の審議開始
中央教育審議会初等中等教育分科会の「高等学校教育の在り方ワーキンググループ」(主査=荒瀬克己・独立行政法人教職員支援機構理事長)は5月27日、文部科学省内でWEB会議を併用して第12回WGを開催した。議題は「探究・文理横断・実践的な学びのための体制・環境整備について」。初めに文科省が令和5年度補正予算(令和5年11月29日成立)に新規計上した「高等学校DX加速化推進事業(DXハイスクール)」(予算額100億円)に関して、このほど、公立746校・私立264校の計1010校の取り組みを採択したこと(申請校は1097校)、採択校は普通科が654校と多いものの、工業科158校、商業科120校のほか、農業科、水産科、看護科、家庭科、情報科、福祉科、総合学科、理数科など職業学科等でも複数校採択、そのほか中等教育学校で16校、特別支援学校高等部で13校を採択したことを報告。その効果として、情報Ⅱや数理・データサイエンス等の履修率に関して令和10年度までに半数強とする目標値を設定、大学理系学部進学率の目標値を現状より約10ポイント増の28・9%(令和10年度)としていること、採択校の中から千代田区立九段中等教育学校の取り組み(文理横断実体験型学習プログラム・創造型情報実習スタジオの創設等)と熊本市立必由館高等学校の取り組み(世界的規模でIBMが提供するコンテンツ「IBMスキルビルド」の活用検討、地域のデジタルものづくり拠点校等)も紹介した。
また新しい普通科の設置状況やマイスター・ハイスクール(次世代地域産業人材育成刷新事業)、中教審初中分科会に設けられている質の高い教師の確保特別部会が5月13日に文科大臣に提出した審議のまとめ「『令和の日本型学校教育』を担う質の高い教師の確保のための環境整備に関する総合的な方策について」の概要が説明された。この審議のまとめは、今後、中教審の初等中等教育分科会、総会の審議やパブリックコメントを経て、文科大臣に答申の予定。
こうした文科省の説明に委員からは質問や意見が出された。委員からは、教員が毎週、一緒になって研修する機会を持てるよう各教員の持ち時間の削減や教員数の増員を求める意見、コーディネーターの実態把握・位置付けの検討を求める意見、DXハイスクール事業の継続、高校を主とした働き方改革の議論、企画的な業務を事務職で担当する必要性、DXハイスクールの目標が理系寄りになっているため文理横断とすべきだとの意見も聞かれた。働き方改革に関しては、私立中学高校関係の委員から、「私学がわが国の高校教育の3分の1を担っているが、公立学校と異なり労働法制(労働基準法)に縛られている。公立、私立が同じ教育を行っていながら、異なる法制度になっている。高校の教員も大学のように公私とも裁量労働制にしてもいいのではないか」などの意見が出された。また別の委員からは、企業や教育委員会がテーマを与える形でパッケージ化された探究的な学習を行っている学校があり、生徒から自分が何をしたいか考える時間を奪っていることを問題視する意見も聞かれた。
このほかこの日のWGでは前回(第11回)WGの意見を4ページに整理した文面が提示された。この意見の整理は、同WGが昨年8月31日に策定した中間まとめの三つの柱、(1)少子化が加速する地域における高等学校教育の在り方、(2)全日制・定時制・通信制の望ましい在り方、(3)社会に開かれた教育課程の実現、探究・文理横断・実践的な学びの推進につながることを意識して分類したもの。文科省では第12回以降のWGでの議論をこの整理に積み重ねていき、委員間でコンセンサスを得つつ、今後の方向性を見出していきたいなどと語った。
第11回における意見の整理では、私立学校に言及した意見も盛り込まれており、「授業料支援に関して私立学校の授業料の上限がない仕組みが良い」「教育費の負担軽減の所得制限撤廃については全国一律の支援制度を議論してほしい」「都市部におかれた私立学校への流入の加速といった論点や授業料以外の費用がどの程度かかるかといった論点を把握することが必要」「授業料無償化により私立高校に進学しやすくなり、私立の専願者の増加や公立の定員割れなども見受けられる。定員面も含めた公立・私立の在り方の検討も必要ではないか」といった意見が記述されている。