東京女子学院高校の特別授業

プロの技術を身に付ける 

貝印の林泰彦氏招き包丁研ぎ学ぶ

東京女子学院高等学校(東京都練馬区、大井俊博校長)は6月4日にフードカルチャーコースの2年生を対象に貝印株式会社の包丁マイスター林泰彦氏を招き、包丁研ぎの授業を実施した。   

同校の教員で家庭科主任を務める保積栄理氏は、包丁研ぎの授業を行いたいが、自身では教えるのが難しく、研ぎ方を教えてくれるところはないかネットで探したところ、貝印のサイトで子供の包丁の使い方のコーナーを見つけ、同社に相談したことから実現した。   

林氏は契約社員として入社後、包丁など刃物に関する知識や研ぎの技術が認められ、貝印のマイスター制度の責任者となり、YouTubeで包丁の研ぎ方を指南するチャンネルももつ。   

特別授業は2コマをつなげて行われ、まず林氏は、包丁を研ぐ際の道具には、砥石や簡易研ぎ器など種類があることを説明。生徒たちに自宅で包丁研ぎをした経験があるか尋ねたところ、数人が簡易研ぎ器を使ったことがあると答えた。林氏は「家庭ならそれで十分だが、将来、料理のプロを目指すなら砥石を使って研いでほしい」と伝えた。   

実習では、包丁研ぎのポイント―砥石に包丁を当てる際に刃の角度をブレさせないこと、角度は包丁と砥石の間に小指が少し入る程度がよいこと、砥石の縦方向の幅をいっぱいに使うと効率よく作業できること、砥石は使うと真ん中がへこむので、使い終わったら面直し用の砥石で平らになるまでメンテナンスすることなど―が説明された後で、各自包丁研ぎに挑戦した。   

まず家庭科室の包丁を使ってトマトを切り、スムーズに刃が入らず、切れ味がよくないことを確認してから作業にかかった。初めはどうやって砥石に包丁を当てたらいいのかとまどいがあり、苦労している生徒には林氏が直接包丁の当て方や角度などを指導した。するとだんだんと「シュッ、シュッ」という研ぎ音が教室内に響いてくるようになった。   

研ぎ終えた後は新聞紙でバリ(刃返り)を取り、各自でもう一度トマトを手で押さえずに、水平方向に切ってみたところ、切れ味は各段によくなり、すっ、と包丁が入り、5ミリくらいの薄さに切れるようになった生徒もいた。   

林氏は授業を終えて「包丁研ぎは続けてやってほしい。真心を込めて研げば、その気持ちは伝わる。自宅で家族にも伝えて包丁を長く使えるようにしてほしい」と話した。生徒たちからは「包丁の角度を保つのが難しかった。角度を意識しすぎると動作がばらばらになってしまう。もっとトマトを薄く切れるようになりたい」「包丁研ぎは初めての経験。学校の包丁がよく切れるようになってよかった」などの感想が出た。   

教員の保積氏は「いつも以上に生徒たちは楽しんで実習に取り組めてよかった。当校は来年度から校名を『英明フロンティア高等学校』と変更し、共学の高校になる。フードカルチャーコースは廃止となるが、新たな高校では探究学習に力を入れることになっているので、そこで食に関心の高い生徒たちが食文化などの研究を深めていってくれるとよいと思う」と話した。