中教審第7回高等教育の在り方特別部会

中間まとめ案を審議

機関別・設置者別の役割分担や連携では具体策未定

中央教育審議会大学分科会の高等教育の在り方に関する特別部会(部会長=永田恭介・筑波大学長)は6月28日、文部科学省内で第7回部会を開いた。この日は前回の部会(5月31日)で示された審議の中間まとめ素案について大幅に記述を加えた中間まとめ案が事務局(文部科学省)から示され、委員で意見交換を行った。素案の段階では今後の高等教育政策に関して検討の方向性が示されていたが、今回は高等教育全体の規模の適正化に向けた支援などで具体的方策が列挙されており、前回から一歩踏み込んでいるが、機関別・設置者別の役割分担、連携の在り方や高等教育改革を支える支援方策の在り方については具体的方策の記述はまだない。文科省ではまずは中間まとめを取りまとめ、秋以降に具体的審議を予定していると説明している。 

今回の中間まとめ案では、「はじめに」の項目が新たに設けられ、地方創生の現状や、障害のある学生の増加、大学における財務構造の変容についても項目を新設、地域との連携の推進に関して大幅な修正が行われている。また前回、高等教育全体の適正な「規模」の確保としていた項目の表現を、今回は高等教育全体の「規模」の適正化に改め、高等教育全体の規模の適正化に向けた支援に関しては、今回から具体的方策として、厳格な設置認可審査の実施、再編・統合の推進では、再編・統合等を通じた教育研究力の強化に向けた支援、収容定員の引き下げに対する大学等の忌避感の緩和のための仕組みの構築(一定の条件を満たす場合に一時的に減少させた定員を一部又は全部戻すことを容易にする仕組みの創設等)を、また縮小・撤退への支援に関しては学部等の開設後に定員未充足や不採算の状態が継続する場合における規模縮小や撤退に係る指導の強化の記述を加えている。

さらに地理的観点からのアクセス確保に関しても、大幅に記述を増やし、具体的方策として高等教育へのアクセス確保を図るための国における司令塔機能を果たすための組織の整備、地域の産学官がリカレント教育体制整備やコンサルタント機能の強化を新たな具体的方策として加えている。

機関別・設置者別の役割分担や連携の在り方に関しては、機関別の役割、大学、専門職大学・専門職短期大学、短期大学、高等専門学校、専門学校、設置者別の役割、国立大学、公立大学、私立大学に関する記述を新設。

高等教育改革を支える支援方策の在り方に関しても記述を充実し、機関補助と個人支援のそれぞれの特徴を踏まえた公財政支援の在り方や、基盤的経費と競争的資金による支援の在り方、高等教育の社会的・私的便益を踏まえた授業料等を含む個人・保護者負担の在り方、高等教育機関に係る情報の共通化等、高等教育機関の事務効率化等を図るための具体的方策(各高等教育機関が共同利用できる共通的なプラットフォーム等)についても引き続き、議論を重ねていくことが必要、などとしている。

またこれまでの審議の中で地域の高等教育や高等教育を核とした産業振興にとって都道府県が重要な役割を果たすことなどが指摘されていたが、そうした意見を受け、事務局が実施した都道府県・指定都市等を対象に今年4月から5月にかけて行った「地方公共団体と高等教育機関との連携の状況に関するアンケート」の結果が報告された。全国の都道府県と指定都市、高等教育機関を対象に互いにどう考えているかを調査、地方公共団体に関しては約8割、高等教育機関に関しては約4割が回答。その結果、県・指定都市の9割から「域内の高等教育機関との連携を担当する部署があるとの回答を得て、また295の地域連携プラットフォームがあることも分かった。事務局は精査中としているが、特別部会の委員からは、自治体と大学等との間には大きな認識の違いがあると指摘する意見やプラットフォ―ムの数の多さに驚く意見も聞かれた。

また中間まとめに関してはAIの項目立てを求める意見、機関別、設置者別以外に世界に伍する研究を行う大学、地域の教育を担う大学など機能別項目立ても必要かどうか議論すべきだとの意見、東京一極集中の是正を求める意見、地域の大学等のプラットフォームへの権限付与を求める意見、大都市と地方間での学生の移動、またネットワークも活用しての高等教育機関の流動性の確保や、高等教育の規模の適正化を決める際の指標(基準)をどうするのかといった意見などが聞かれた。

次回特別部会は7月19日開催の予定。