東京農業大学の取り組み

土壌の世界を体感し持続可能な社会へ 

8月31日まで企画展「美しき土壌の世界」開催

東京農業大学「食と農」の博物館(東京都世田谷区)は8月31日まで、企画展「美しき土壌の世界」(協力:埼玉県立川の博物館、一般社団法人日本土壌肥料学会)を開催している。北海道から沖縄まで、さまざまな場所でできた土壌から作ったモノリス(土壌断面標本)を一堂に展示し、アート作品のように鮮やかな土壌を見比べ、体感できる展示内容になっている。

同展を企画した同大学応用生物科学部農芸化学科土壌肥料学研究室の加藤拓教授は「言葉や認識としての土壌の重要性は非常に関心が高くなっているが、私たちは普段、地下に広がる土壌の世界を表面的にしか見ることができず、体感する機会がほとんどないため、この企画展を通じて土壌の世界を体感してほしい」としている。

同研究室は土壌の持続的な利用法に加えて、SDGsにのっとった廃棄資源の肥料化についての研究に取り組んでいる。加藤教授はそこで「持続的な農業生産環境を形成するための肥培管理」「森林生態系における複数元素の循環」をテーマに研究を行っている。

土壌は複雑な構造を形成し、さまざまな種類がある中で、同展では、埼玉県立川の博物館の元館長・平山良治博士と、森圭子博士が長年にわたり、日本全国から採取して作成してきた資料群から、加藤教授がさまざまな場所、条件からなる37本のモノリスを選出し、展示している。

モノリスは地面に穴を掘って現れた断面に、土壌中の水と反応して固まる樹脂を塗り、断面を押さえるように裏打ち布を貼って、固まった後、裏打ち布を取ることで、土壌中の空間に入り込んだ樹脂ごと構造体を採取し、額縁に収めた土壌標本。

展示構成は▽まだまだ若い土壌▽火山灰からできる土壌▽赤い土ができるまで▽年老いた土壌▽表面が白い土壌▽森の土壌▽日本にある特徴的な土壌▽川が氾濫してできる土壌▽触れるモノリス―となっている。

4月18日に「食と農」の博物館で実施された同展のオープニングセレモニーで、同博物館の木村李花子館長は「当館は今年、20周年を迎えた。この節目の年に農の原点といえる土壌をテーマに展示会を行えることをうれしく、ありがたく思う」とあいさつした。

同大学の江口文陽学長は「年齢や地域を超えて、多くの人が土壌というものをしっかりと捉え、土壌に感謝するとともに、持続可能な社会の構築につなげていくことができる展示会にしたい。本学の土壌肥料学研究室の力を世界に発信するきっかけにもしたい」と述べた。

加藤教授は「土壌を大事にした本学の横井時敬初代学長の思想を受け継いだご子息が土壌肥料学研究室を開き、われわれがそれを引き継ぎ、学生が学んでいる。本学で学んだというプライドを少しでも形にしたいと考え、今回の企画展を開催した。多くの人に土壌の世界を知ってほしい」と話した。

来賓として出席した平山良治博士は「モノリスを通して、土壌という環境や、それを取り巻く森林、さらに地球に思いをはせてほしい」と述べた。

テープカット後の内覧会では、加藤教授がモノリスについて解説した。

同博物館は入館料無料。同展の詳細は同博物館のホームページ(https://www.nodai.ac.jp/campus/facilities/syokutonou/)まで。