中教審第115回大学院部会開く

学位授与の状況公表促進

公表すべき情報等審議

中央教育審議会大学分科会の大学院部会(部会長=湊長博・京都大学総長)は7月11日、オンラインで第115回部会を開いた。この日の議題は、(1)情報公表の促進、(2)卓越大学院プログラムの中間評価及び今後の大学院教育の拠点形成、(3)高等教育の在り方に関する特別部会の議論。

この中では、(1)の大学院における学位授与の状況に関する情報公表を促進するため、各大学院が公表すべき情報を学校教育法施行規則(文部科学省令)に追加し、今後発出する通知において、ある年度に入学した者のうち標準修業年限以内で修了した者の割合や、標準修業年限以内で修了せずに退学した者の割合など具体的な内容を示すことなどの案が事務局(文部科学省)から示されたが、「標準修業年限以内で修了」との捉え方に違和感を感じる、と発言する意見や、「社会人大学院生の中には博士課程を3年ではなく5年で修了する考えの学生もいる」、「博士論文の査読に時間がかかるようになっており、標準修業年限では難しい」「退学との表現は学部・修士課程と博士課程では意味合いが異なる」など、現実的な実情を説明する委員、また大学院のDP(ディプロマ・ポリシー)との関係を見る必要性を指摘する委員もいた。

その一方で大学院を目指す学生等にとって学位を取得するために要する平均年数を知ることは重要で、通知で公表を推奨する予定の「公表した数値の分析・解説」に各大学院が書き込むことを求める意見の委員もいた。今後、事務局では委員からさらにメールで意見を募り、まとめた上で再度、部会委員に諮る方針だ。こうした改正は令和7年4月1日施行予定としている。

(2)に関しては、平成30年度採択分(13大学15件)、令和元年度採択分(9大学11件)、令和2年度採択分(4大学4件)の計30件に関して中間評価結果が出揃ったことから、独立行政法人日本学術振興会卓越大学院プログラム委員会の加納敏行委員(大阪大学大学院教授)から、最も高いS評価が9件(早稲田大学など8大学)、次いでA評価が16件(東京大学など9大学)、B評価が4件(東京農工大学など4大学)、C評価が1件(東京海洋大学)、最も低いD評価はゼロだったことが報告された。さまざまな取り組みの中で主に評価された点は、プログラムの取り組みが当該大学の大学院教育全体の改革をけん引していたことや、プログラム参加学生から高い満足度を得ることができ、企業等からも評価が高かったことなどが報告され、一方、プログラムに参画していない研究科や専攻を含めた、大学院全体としての教育及びシステム改革に一層の努力が期待されること、学内外資源の獲得が当初計画と比べ十分とは言えないことなどが今後の課題と指摘された。また総括として各大学の成果や修了生の活躍状況に関し、積極的なPRや普及・横展開に向けた取り組みが求められるなどと説明され、産業界と連携した取り組みの例が紹介された。

さらに卓越大学院プログラムの修了生の就職状況等について、修了者数342人中、民間企業・官公庁に就職した割合が49・7%だったこと、博士課程修了者全体9405人ではその比率は21・7%に留まっていることなどが説明されたが、委員からは単純な比較は難しいのではないかといった意見や、卓越大学院プログラムの横展開について財政支援のない中では難しいのではないか、といった意見も聞かれた。

(3)の中教審大学分科会に設けられている高等教育の在り方に関する特別部会(部会長=永田恭介・筑波大学長)はこれまでに7回の審議を重ね、中間まとめ案の審議を行っている段階。当然、大学院に関わることも出てくるため、この日の大学院部会でも中間まとめ案の概要等が簡潔に説明されたが、審議に十分な時間がなかったことから、改めて時間をとって十分な議論を行い、大学院部会として政策を打ち出していく方針。まずは論点整理をしていく。

同特別部会では、夏頃に中間まとめを策定し、その後、秋冬にかけ議論を再開、令和6年度内に結論を得る予定。事務局からは大学院部会の委員に対して1週間以内に中間まとめ案に対して意見があればメールで意見を寄せてほしいといった要請もあった。